〈ニュースなランチ〉

毎日食べる「ランチ」にどれだけ情熱を注げるか。それが人生の幸福度を左右すると信じて疑わない、編集部員や食いしん坊ライターによるランチ連載。話題の新店から老舗まで、おすすめのデイリーランチをご紹介!

究極のまぐろ丼専門店が渋谷に誕生

銀座を代表する寿司の名店『はっこく』が監修。まずはこの言葉にアンテナがぴくりと動く。そして、訪れるとその期待が間違いないことを知るだろう。2021年10月、渋谷にオープンしたまぐろ丼専門店「まぐろとシャリ」は天然本鮪をリーズナブルに心ゆくまで楽しめる店。早くも行列が絶えない人気店となっている。

大小の飲食店がひしめく渋谷駅前から少し離れた、宮益坂上の交差点からほど近い路地沿いに店がある。白木に赤い丼と「まぐろとシャリ」の店名が書かれた看板が目印。小さなビルの1階に次々と人が吸い寄せられるように入っていく。

店内入ってすぐの券売機で食券を買う仕組み。行列時はスタッフが先にオーダーを聞くこともある

ガラス張りになった店内はカウンターのみ、ハイチェアの座席は7席とこぢんまりとしている。席の後ろを人が通るのがやっとのスペースだが、丼に集中しだすと気にならなくなるのが不思議だ。

常に業界が注目する若き名寿司職人

「はっこく」前に大将を務めた「鮨とかみ」では、同店をミシュランの星獲得へと導いた

「まぐろとシャリ」を監修したのは寿司の聖地、銀座でも屈指の人気店「はっこく」オーナー佐藤博之さん。「はっこく」は握りのみ30貫以上のコースで勝負するという潔さが寿司通の心をわしづかみにし、たちまち予約困難店となった(現在は25貫コースとなっており、ご希望により追加も可能)。その後、広尾にカジュアル寿司の新業態を始めるなど若き名職人の動きは常に注目の的だ。

その佐藤さんが、より多くの人に本当に美味しいものをもっと気軽に食べてもらいたいと監修したのが「まぐろとシャリ」だ。気軽に入れるお店とは言え、佐藤さんのまぐろとシャリへの本気度は変わらない。

とことん品質にこだわったまぐろと米

遠洋まぐろ漁でトップクラスの実績を誇る住吉漁業グループが目利きを担当

使うまぐろはずばり天然本鮪。冷たい外洋で育ったまぐろは身質が締まり、しっかり脂がのっている。厳選されたまぐろの質の良さは佐藤さんのお墨付きだ。

シャリは佐藤さんの代名詞、赤酢のシャリ。シャリの決め手となる米と赤酢も「まぐろとシャリ」のために一から選び直した。

「全国からおいしいと言われる米を取り寄せ、試食を繰り返しました。米がおいしくても赤酢を合わせるとまた違ってきます。赤酢との相性をみながら、今使用している米にたどり着きました。」と語る店長の坂本弓季(ゆき)さん。

選んだ米は新潟県産「こしいぶき」。コシヒカリの孫にあたる品種で、コシヒカリの香りやつやを受け継ぎながら、あっさりした味わいで、個性的な赤酢との相性もぴったり合う。

赤酢も「まぐろとシャリ」のために佐藤氏が試行錯誤を繰り返し、たどり着いたオリジナルブレンド。少し硬めに炊いた米に、酸味がまろやかでコクのある赤酢を合わせると、まぐろの旨みにしっかり寄り添う“赤酢シャリ”が出来上がる。

とろける旨み! 天然本鮪のおいしさを堪能

基準となる「中」(まぐろ130g)1,500円(税込)のほぼ倍となる「極」(まぐろ 250g)3,500円(税込)

これらの唯一無二の組み合わせが「まぐろとシャリ」の他では味わえない極上の丼を作り上げる。メニューはシンプルに「まぐシャリ丼」のみで、「小」から「極」までシャリとまぐろの量で5段階に分かれている。山盛りの天然本鮪を思いっきり食らうというまぐろ好きの夢も同店なら叶えてくれる。

どの丼にも赤身や中トロ、大トロなど各部位が数種類盛り合わせられている。食べ比べもぜひ楽しみたいところだ。

とことんまぐろとシャリの旨さを味わい尽くす

まぐシャリ丼 小 1,200円(税込)

取材時、オーダーしたのはトッピングなしの「まぐシャリ丼 小」。「お待たせしました!」の言葉と共に目の前に現れた丼を覆い尽くすまぐろにしばし見とれる。つやつやとした紅色の赤身や、きめ細かくサシが入った中トロや大トロ。見るからに上質なまぐろがシャリが見えないほど盛られている。

添えられたキュウリで赤酢シャリの酸味をリセットすると、最後までおいしく食べられる

まぐろは特注の煮切り醤油にサッとくぐらせて盛り付けられている。この醤油の塩梅もちょうどよく、素材そのものの味わいを邪魔しない。しっとりときめ細かく旨みが詰まった赤身、脂がのった中トロや大トロ。本鮪の甘い旨みが口の中で広がっていき、そのおいしさに思わず顔がほころぶ。

大ぶりの切り身を箸で持ち上げると、下からほんのり温かい褐色の赤酢シャリが現れる。マイルドな酸味もさることながら、米一粒一粒に染みこんだ赤酢の旨みが奥深く、力強い本鮪の味によく合っている。