〈ニュースなランチ〉

毎日食べる「ランチ」にどれだけ情熱を注げるか。それが人生の幸福度を左右すると信じて疑わない、編集部員や食いしん坊ライターによるランチ連載。話題の新店から老舗まで、おすすめのデイリーランチをご紹介!

本場香港のようなゴージャスな空間

世界の名だたる高級ブランドが軒を連ねる街、銀座。この街に出掛けたなら、ちょっと非日常的な空間でリッチなランチを味わってみたい。そんな気分にお薦めしたいのが2021年9月にオープンした「香港料理 盛記(せいき)銀座店」だ。まるで香港に訪れたかのようなラグジュアリーな空間で本場の味を満喫できる。

場所は、新しく建て替えられた、銀座の老舗とんかつ屋「梅林」が入るビルの6階と7階。真新しいビルは、エントランスからキラキラしている。エレベーターで6階に到着するとそこから“香港”が始まる。

6階テーブル席。中国で縁起の良い色とされる赤が効果的に使われ、どこか雰囲気がエキゾチック

6階は仕切りのないオープンなエリアにテーブル席が並び、窓際の席からは銀座が一望。壁面の鏡が空間を広く見せてくれる。

7階スクリーンで仕切られたテーブル席

7階は大きな円卓が置かれた個室や、半透明のスクリーンで仕切られたテーブル席などが並び、プライベート感あふれる空間になっている。

7階個室。インテリアは家具や照明から壁面の飾りまで全てを中国から取り寄せるというこだわり

気軽なランチは6階でにぎやかに、大切な人と過ごしたい会食やゆっくりコース料理を楽しむには7階というように、シチュエーションに応じて使い分けができそうだ。

香港から招いたベテランシェフが作る本場の味

もちろん、香港へのこだわりは店舗のビジュアルだけではない。キッチンを担うシェフたちも全て香港から呼び寄せている。

この道40年という焼味のベテランシェフ

料理人それぞれが海鮮やロースト、点心といった専門を持ち、その道を知り尽くしたベテランばかり。日本の新鮮な食材を使いつつ、中国ならではの調味料や香辛料を駆使して、掛け値なしの本場の味を披露してくれる。

香港料理は中国4大料理の一つ、広東料理をベースにしている。肉や魚介類など素材そのものの味を大切にした、シンプルであっさりした味付けが特徴だ。

アラカルトメニュー、五種焼味盛合わせ 4,800円(税込)

中でも、「盛記」が日本にぜひ紹介したいと考えたのが、香港のソウルフードと呼ばれる焼味(シュウメイ)。焼味とは鶏肉や豚肉などの塊をこんがり焼いた料理で、香港の街を歩けば、店先に焼かれた鶏や豚が吊るされた専門店をあちこちで見かけるほど、現地の日常に欠かせない料理だ。

左から蒸し鶏、窯焼きチャーシュー、ローストダック、皮付き豚バラ肉

甘いタレが染み、香ばしく焼かれた肉はボリューミーで肉の旨みがあふれる。旅行に訪れた香港でやみつきになった人も多いことだろう。その本場の焼味を「盛記」では、楽しむことができる。

心躍る、焼味オールスターのランチセット

五種焼味盛合わせご飯 3,000円 (税込)

ランチメニューは自慢の焼味各種を単品で楽しむセットと、数種類を少しずつ盛り合わせたセットがある。それぞれにスープとご飯、デザートが付く。

一番人気は焼味の魅力を堪能できる「五種盛り」。「蒸し鶏」「ローストダック」「皮付き豚バラ肉」「窯焼きチャーシュー」「ローストスペアリブ」の5種類が盛り合わせられ、まさに焼味のオールスターだ。

蒸し鶏は焼き料理ではないが、現地ではセットにされる一品。塩や香辛料、漢方などの調味液に漬け込んだ丸鶏を柔らかく蒸し上げ、ネギやショウガの入った自家製のタレでいただく。

味付けは広東料理らしく淡泊で、素材が勝負の料理だ。「盛記」ではブランド鶏の「香鶏」のモモ肉を使用。皮が薄く、脂も控えめで、身がしっとりと柔らか。噛みしめると旨みがジュワッと湧いてくる。

ツヤツヤした照りが食欲をそそるローストダック(焼き鴨)。日本では皮だけを食べる北京ダックが有名だが、香港のダック(鴨)は脂ののった肉も一緒にいただく。

鶏よりも脂がのった鴨肉は旨みが濃厚。少し塩味のあるタレがしっかり染みて、肉の甘さを引き出す。このローストした鴨に梅味のタレを合わせるのが香港での定番。甘酸っぱいオリジナルの梅ダレが、濃厚な味わいの鴨とぴったりと合う。

しっかり焼かれた皮目は包丁を入れたとたんにサクサクと音が響く。このサクサク感が職人の腕の見せどころだ

豚肉の焼き物は3種類用意されている。どれもそれぞれに個性があり、甲乙付けがたい。

シンプルに塩のみで味付けした「皮付き豚バラ肉」。別名クリスピーローストポークと呼ばれるほどサクサクした皮と、トロッと柔らかい脂がのった身のコントラストがたまらない。

この肉に付けるのが、なんと砂糖。日本人には驚きの組み合わせだが、現地ではお馴染みなのだとか。おそるおそる砂糖を付けてみると、豚肉の塩味とマッチして甘塩っぱい味わいになり、こんなおいしさがあったのかと驚く。

艶やかな飴色が食欲をそそる「窯焼きチャーシュー」。日本でよく見かける煮込んだチャーシューとはひと味違った味わいだ。秘伝のタレに2、3時間漬け込み、特製の窯で1時間じっくり焼き上げ、仕上げに蜜などが入った甘いタレで照りを付ける。

「盛記」では豚の肩肉を使用。脂身が少なく、肉肉しさのある部位だ。口に入れると、ホロリとほどけるほど柔らかく、ジューシーな旨みがあふれだす。甘めのタレがしっかり染みて、ご飯との相性抜群。ぜひ、“オンザライス”で楽しんでいただきたい。

真ん中の肉の塊がローストスペアリブ

ローストスペアリブは、スペアリブの部位をチャーシューと同じタレに漬け込み、焼いている。しっとり柔らかいチャーシューと違い、こちらはプリッと歯応えがあり、脂もしっかりのっている。マナーを気にせず、手で持って骨付き肉にガブリとかぶりつこう。甘いタレの染みた肉を噛みしめると旨みが湧き、肉好きにはたまらない。