この味はマスト!美食体験はあと2日!

ザ・ペニンシュラ東京開業10周年の記念日である2017年9月1日(金)から、中国料理「ヘイフンテラス」と仏食器ブランド「レグル フランス」がコラボレーションした「ルーイーガストロノミー」を体験できる。前回の「フルコースのハイライト」に続き、今回はこの「ルーイーガストロノミー」の創始者兼クリエイティブ・ディレクターのデスモンド・チャン氏のインタビューをお届け!

ルーイーガストロノミーとは?

美味なる中国料理と最高のサービスを提供するレストランと最高級の食材、そして食器が三位一体となって初めて実現する美食体験「ルーイーガストロノミー」。

 

「ルーイーガストロノミー」のクリエイティブ・ディレクターのデスモンド・チャン氏は、その古代の食に対する考えを再現し、美しく盛り付けて完成ではなく、テーブルにご提供するところまでも美しくありたいと考え、「思うがままに」を意味する「ルーイー(日本語では如意)」と名付けた美しい中国食器をデザインした。

その食器を使用してほしいと思えるほどの最高のサービスを提供するレストランを探し、そのシェフにメニュー作成を依頼。そこからペアリングさせるお茶や使用するお皿をチャン氏が考え、絢爛豪華な世界観を創り上げる……、これが「ルーイーガストロノミー」だ。

ルーイーガストロノミー創始者デスモンド・チャン氏インタビュー

使命〜Mission〜

―メインワークが食器のチャン氏が、レストランを探し、メニュー作成を依頼し、食器を提案するということですが、シェフとの関わり方を教えていただけますか? その際、メニュー考案はどのような流れで行なっていくのでしょうか?

 

それぞれのシェフは、料理に対する自身の哲学を持っています。私の使命は、それをいかに「プレゼンテーションするか」だと思っています。

 

まず最初にシェフに「シグネチャーの料理を一品出して欲しい」と伝えます。その料理を様々な角度から観て「どうすれば魅力的に見えるか」をシェフとディスカッションしながら、コースの構成やお皿を選んでいきます。

 

例えば「光り物の魚」を使うときは、真逆の色合いの「赤」の食器を持ってくると、色同士がぶつかり合ってより料理が美しく映える、など普段シェフがあまり組み合わせないような斬新な色合いを提案したりします。

 

多くのシェフは、独自の素晴らしいアイデンティティや哲学を持っているので、特に困ることなくコンセプトを作ることができます。

物語〜Story〜

―食材、料理、食器、どのようなフローで一皿ができあがるのでしょうか? 

 

シェフの仕事は、どんな食材を使いそれをいかに美味しく調理するかを考えますが、私の役割は、その食材を使った料理を「どのようにして魅せるか」というところです。

 

多くは、食材のところまでは私が介入したりしません。それはシェフの仕事で邪魔をしたくありません。料理と食器の相乗効果を生むために、シェフと共に入念に話し合いながら、美しい一皿、その物語を創り上げていきます。

歴史〜History〜

―ご両親から教わった食の教育、その影響はどのようなものだったのでしょうか?

 

私の両親はグルメでしたので外食が多く、たまに家で食事をするときもフルコースのような料理を父親が作ってくれました。私の今の料理に対する“情熱”はここからきています。

 

13歳の時にカナダに移住し、15歳になってからは、アルバイトをし稼いだお金で、トロントの多くのお店を食べ歩き、18歳の時にはほとんどのファインダイニングには行ったことがあるほどになりました。その経験から単に食べ物だけでなく「美食体験とは何か?」を考えたり、空間やデザインなども勉強することができました。

 

―そんな美食サラブレッドのデスモンド氏ですが、「ルーイー」の食器が生まれることになった経緯を教えてください。

 

1970年代、多くのお客様は「レストラン」目当てで行く人が多く、「シェフ」はあまり目立たない存在でした。1980年代からフランスなどでは、シェフが脚光を浴び始めましたが、カナダにその流れがくるのは少し時間がかかりました。私は「もっとシェフが注目される、“シェフファースト”な風潮を作れないものか」と考えていました。

 

1980年代後半の大学時代は、美術の勉強をしていましたが、“シェフファースト”への思いもあって、現在のテーブルウェアのデザインに興味を持ち、その道を進むことになりました。

 

両親は、陶芸の磁器に携わる仕事をしていましたが、その市場はすでに成熟していたこともあり私自身は、「ホテルやレストランのシェフに特化し、シェフのために作る“シェフファースト”な食器をデザインしたい」という思いがより一層強くなりました。

閃き〜inspiration〜

―チャン氏の豊かな創造性や独創性、そのインスピレーションはどこからくるのでしょうか?

 

食べ物はただ食べるだけでは、記憶や思い出に残りません。その土地や地域それぞれの「文化」を感じながら食べることで、よりその料理や空間を深く味わうことができると思っています。

 

私は、食べ物は「時と時を繋ぐもの=ライフタイムマシーン」の役割があると思っています。目の前にある料理だけを捉えるのではなく、そのバックグラウンドまでも感じながらお料理をいただくことが、私の日々のインスピレーションに繋がっています。そして私自身もまた食や食器を通して、文化を繋いでいく“懸け橋”のような存在になれたらと思っています。

 

―日本でインスピレーションを受けた、心に残るレストランはありますか?

 

お寿司では「すきやばし次郎」、フレンチでは「レフェルヴェソンス」、日本料理では「銀座しのはら」でしょうか。以前、福岡の「茶懐石 中伴」に行った時の、光り物の魚の輝きには感銘を受けました。もちろん、焼き鳥やかき氷など庶民的な日本の伝統料理も大好きですよ。

想い〜Message〜

―創作活動をする中で大切にしていること、好きな言葉はありますか?

 

“Every day is a gift”=「毎日が贈り物」。安らかな眠りについて、翌朝気持ちよく目覚める。笑ったり、美味しいものを食べたりする。その一つ一つの出来事や毎日が、特別で素晴らしいギフトだと思うのです。

 

私はこれをいつも念頭に置いて、繊細に丁寧に生活するように心がけています。そうするとどんな小さなことにも全て意味や価値があり、その中にメッセージがあるんですね。この価値観から得られたインスピレーションが、私の創作活動にも影響しているように思います。

 

そして、“The Ultimate Luxury in Life is the art of wasting Time on Quality thing”=「人生における究極の贅沢とは、本当に価値あるものに吝嗇なく時間をかけられるという術である」ということ。

 

これは説明するまでもなく、本当にそうだと思いませんか? 目先のことに摩耗してしまうことが多いけれど、価値あるものに時間を注ぎ込められるというのが人生で一番の贅沢だと思っています。

 

 

―最後に日本のみなさんにメッセージをお願いします。

 

今回、日本でも有数の伝統的な広東料理を提供している「ヘイフンテラス」とのコラボレーションが実現したことを光栄に思います。

 

デザインや哲学、歴史の中に織り込まれた文化的要素から作り上げられた「ルーイーガストロノミー」は古代中国の美学や絢爛豪華、豊かさ、そして調和を表現しており、まさに芸術的晩餐と言っても過言ではありません。

 

この素晴らしい美食体験をぜひ日本のみなさまにも味わっていただきたいと思っています。

9月30日まで!中国の文化を今に伝える特別な食体験

日本の四季折々の食材でアレンジしたヘイフンテラスならではの広東料理に、光り輝く独創的なチャン氏の食器によるプレゼンテーション。中国いにしえの文化を今に伝える特別な食体験を、ぜひ心ゆくまで堪能してみてほしい。