〈食べログ3.5以下のうまい店〉

巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー！

食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。

食べログでは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。

点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

そこで、グルメなあの人にお願いして、本当は教えたくない、とっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。第一線で活躍を続けるフードライター森脇 慶子さんが名前を挙げたのは、フレンチの本場・パリの味を堪能できると食通の間で注目を集めている、東京・浅草「Étape」。

教えてくれる人

森脇 慶子

「dancyu」や女性誌、グルメサイトなどで広く活躍するフードライター。感動の一皿との出合いを求めて、取材はもちろんプライベートでも食べ歩きを欠かさない。特に食指が動く料理はスープ。著書に「東京最高のレストラン（共著）」（ぴあ）、「行列レストランのまかないレシピ」（ぴあ）ほか。

東京下町で堪能できる花の都パリの味わい「Étape（エタップ）」【点数3.13】

いま、エッフェル塔が立つセーヌ川沿いを散歩するのは容易でないが、東京スカイツリーと隅田川なら手が届くはず。おすすめは、浅草駅から駒形橋を渡った先にある下町情緒ただようエリア。ここには本場パリの味を楽しめる名店だって隠れている。

「以前から肉焼きの名手として注目していたシェフの新店です。今回は肉だけでなく、野菜やシーフードの料理にも力を入れています」と、トップフードライターの森脇さんも太鼓判。「Étape」は、8年ほどフランスの名店を渡り歩きながら、さまざまな技とレシピを吸収した河村神賜シェフが、2021年3月にオープンしたレストランだ。

※点数は2021年10月時点のものです。

20代前半、何のコネクションもないまま故郷大阪から渡仏し、縁あってフレンチの名門「タイユヴァン」をはじめ「レストラン アガペ」や「ケン・カワサキ」など、パリにある数々の星付きレストランで経験を積むことになった河村シェフ。11区にある「キ・プルーム・ラ・リューヌ」のスーシェフに抜擢された際には、就任翌年にミシュランガイドで星を獲得するなど、華々しい活躍を続けてきた。

肉焼きの名手としても注目。森脇さんイチ押しは、この3品

森脇さんが、お店を訪れたらまず食べてほしいとおすすめするのは「特製ブイヤベース」「牛肉のステーキ」「アッシェパルマンティエ」の3品。見目麗しい3つのメニューを、まずは写真で堪能してほしい。

パリから受け継いだスペシャリテ「特製ブイヤベース」

河村シェフのスペシャリテである魚のスープは「将来、自分のお店を開くなら、このレシピ使っていいよ」とエッフェル塔南側、パリ15区の名店「ル・クール・ブイヨン」のシェフから受け継いだ味。

その日仕入れた上質な白身魚を、内臓以外すべて使い切っている。ホネもウロコも叩いて潰し、しっかり炒めて香りを立たせ、香味野菜と一緒に煮込み、ミキサーでブレンド。今回は沖縄3大高級魚のひとつ“スジアラ”のエキスを凝縮した。

イチョウ形をした具材は、カリカリに焼いて脂を落とした自家製チョリソー。羽のようなヒダの口当たりが面白い四角豆、軽く粘りのあるツルムラサキの花など、野菜も個性豊かだ。こちらは米ぬか中心の自家製肥料で、世界各地の珍しい野菜を育てている農場「よつばfarm」からの直送品。

名門「サカエヤ」の肉をフレンチの手法で仕上げる「牛肉のステーキ」

32歳で日本に帰国してからは、ストイックに食材と向き合う日々が続いたという。大きな転機となったのが、多くの料理人から支持される精肉店「サカエヤ」の肉匠、新保吉伸さんとの出会い。

「もっとカリッと焼いてほしい」と繰り返しアドバイスを受け、肉の表面だけを高火力で焼くために、フレンチの手法であるアロゼを取り入れた。以後、肉焼きの名手として注目を集めることとなる。

目にもおいしいふかふかポテト「アッシェパルマンティエ」

隠れ家のようなお店を象徴するのが、ふかふかのマッシュポテトに包まれたグラタン風の料理。その下には、黒毛和牛を贅沢に使用した赤ワイン煮込みが隠れている。見事なバランスで調和する、アットホームな雰囲気と洗練された味わい。まさに下町のビストロのようでいて、星付きフレンチの技も楽しめる、この店らしい人気メニューだ。