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食べログユーザーのリアルな評価をもとに決まる「The Tabelog Award」。受賞店の魅力とともに、店主の行きつけをご紹介。第2回は、日本料理の名店「銀座 しのはら」の店主が通う定食、そば、中華料理、イタリアンのお店が登場。
〈一流の行きつけ〉Vol.2
日本料理「銀座 しのはら」東京
一般消費者によるリアルな店の評価を基に受賞が決まる「The Tabelog Award」。食べログのユーザーが年に一度、“ここぞ”という店に投票するレストランアワードだ。中でもGoldに輝くお店は「生涯通い続けたいお店」と評される名店ばかり。
店の魅力とこだわり、ご主人が行きつけにしているお店を知ることで、一流店のエッセンスを感じてほしいという思いから始まった当連載。
第2回は、季節の味覚を贅沢にちりばめた日本料理で東京・銀座に進出した「銀座 しのはら」。ご主人の篠原武将氏にお話を伺った。
地元・滋賀の素朴な風景を独自性あふれる華やかな日本料理に
ご主人の篠原武将氏は京都の老舗「熊魚菴たん熊北店」「山玄茶」などで修業を重ね、2006年、27歳の若さで独立。故郷の滋賀県湖南市で日本料理の店「しのはら」を構えると、全国から予約が殺到する有名店となった。10年後、さらなる飛躍のために、それまでの実績を手放して東京・銀座へ移転。「銀座 しのはら」として新たな暖簾を掲げた。日本屈指の美食の街に集まる食通の舌を虜にし、一流店と称されるまでそう時間はかからなかった。
日本料理を月ごとに替わるおしながきで堪能できる「銀座 しのはら」。「The Tabelog Award」では2017年、2018年、2019年、2020年、2021年にGoldを受賞。食べログユーザーからも厚く支持されている。
地下にあることを感じさせない明るい店内には、研ぎ澄まされた空気が心地よく流れる。L字のカウンター11席が板場と向き合うスタイルだ。空間は料理とお客さんがそろって、はじめて完成するという主人の考えをもとに作られた。
季節に合わせて替わる和の器が料理を彩る。日本料理の店ながらオールドバカラの酒器を使うのは、繊細な美しさに主人がほれ込んだから。型にはまらない美学が見え隠れする。
おしながきはおまかせのコース料理33,000円のみ。鮎や猪、伊勢海老やスッポンといった四季折々の食材がふんだんに盛り込まれた日本料理には、主人が生まれ育った里山の景色が表現されている。篠原氏は料理一品ずつの流れと調和を重視し、一連の料理を食べ終えたとき「ああ、いいものを食べたなと思っていただければ」と言う。
日本で古くから続く四季の行事や伝統を料理に昇華するのが店の哲学だ。ひな祭りの時期は蛤を使った料理を、お盆が近づくと蓮を器に、と趣向を凝らす。絵画のようと評される八寸は、五感にも豊かな刺激を与えてくれるだろう。日本の旬の食材と同時にトリュフやキャビア、フォアグラといった鮮麗な食材も柔軟に取り込み、独創的な日本料理に仕立てるのが篠原氏の真骨頂だ。
主人のおもてなしは極上のエンターテインメント
「お客さんを楽しませることを最も大切にしています。それは滋賀の頃から銀座に来た今も変わっていません」とまっすぐに語る篠原氏。“おいしい”以外の部分にも力を尽くす。
その様子は調理の工程を見せる板場からわかるだろう。例えば、琵琶湖の特産品である本モロコは生きたままで板場に運ばれてくる。篠原氏は勢いよく飛び跳ねる本モロコを手で掴みとり串に打ち、焼き上げていく。客人はこのダイナミックなシーンをカウンターの目の前で見ることができる。舞台を鑑賞するかのようなライブ感の演出も篠原流のおもてなしだ。
篠原氏の料理は内側に重ねてきた経験や思いから創られている。そのため「本質は滋賀の田舎料理」と語る。数々の美食家たちをうならせる“田舎料理”。どんなに予約を待つとしても一度は味わいたい。