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〈一流の行きつけ〉Vol.1
日本料理「飯田」|京都
食べログが独自に開催している年間レストランアワード「The Tabelog Award」。一般消費者のリアルな評価をもとにした、食の国民投票ともいうべきイベントだ。中でもGoldに輝くお店は、「この国のどこにあったとしても、生涯通い続けたいお店」と評される名店ばかり。
そんな受賞店の魅力とともに、一流料理店のフィロソフィやバックグラウンドを感じてほしいという思いで始まった、当連載「一流の行きつけ」。
記念すべき初回は、半年から一年先まで予約でいっぱいの、若きご主人のおもてなしに定評のある茶懐石「飯田」。店の魅力とこだわり、ご主人である飯田真一氏の行きつけにしているお店について紹介する。
数寄屋造りの本物が醸す空気感を大切にした店づくり
京都市役所前駅からほど近く、御池通を一本脇に入った姉小路通を烏丸御池方面に進んだ道沿いに、さりげなく佇む懐石料理「飯田」。
金沢から料理人としての道を踏み出し、京都の銘店で研鑽を重ねたご主人の飯田真一氏が、茶懐石を礎とした独創的な料理を饗する店として2010年に暖簾を掲げたという。「The Tabelog Award」では2018年、2019年、2020年と3年連続でGoldを受賞し、食べログユーザーからも根強く愛されて続けている名店だ。
古くからこの地にある茶道具屋を改装した建物は数寄屋造り。銘木や本聚楽壁(ほんじゅらくかべ)といった、本物のみが醸し出す空気感を大切にしている。魯山人や永楽ほか、使用する器や道具は月替わりを心がけているそうだ。中でも先付、椀物、向付の3品には思い入れが強く、料理を盛る器には特にこだわりがある。
「先付はその月の料理のテーマに沿ったもの、お椀は自然の情景を感じ取れる時代蒔絵のもの、向付は最も格のある道具を用意しています。全体としては時代が重ならないよう強弱をつけ、暦や催事に合わせて器の素材や図柄、厚みや深さなどを変えることで、より一層の季節感をお客様に感じていただけるように、ご用意をしています」と飯田氏は語る。
五感に響く、極上の素材と想いを込めたおもてなし料理
料理を作る上で最も大切にしているのは「想い」だという。「想いがなく作業的な料理では、お客様の心に響く料理はできないと思っています」と飯田氏。野菜は産直、魚は明石の担ぎからと、食材は値に糸目をつけず、自身がよいと思える最高のものだけを吟味する。
春は木の芽、夏は青柚子と、季節を感じる味わいや香り、五感に響く美しさを意識しながら、食べやすい大きさを考えた寸法で仕上げるところに、茶懐石の美学と飯田氏の想いが込められているのだ。
自身の体調管理にも細心の注意を払い、常に最高のものが提供できるよう精進を続ける姿勢と心が、店に足を踏み入れた瞬間から感じられる極上の茶懐石。さらに上を目指し、心技体を貫く飯田氏による至福のひとときをじっくりと堪能したい。