バー並みに揃う豊富なアルコールで食の楽しみを底上げ

「お酒はバーに引けを取らないラインアップで、バーより安い。ウイスキーも充実しています」(米川さん)
サーバーから注ぐ生ビールも数種類あり、ベルギービールのグラスは120種類を用意
「ヒューガルデン ホワイト」1,000円

「僕はいつも食前酒としてヒューガルデンをオーダーするんですが、回転寿司で生の白ビールが飲める店なんて、なかなかない」と米川さん。店内に入って、おや? と思うのは、メニューボードだけではない。壁面の棚にぎっしりと並ぶ酒類の豊富さも、回転寿司店らしからぬポイントだ。約600銘柄が揃うワインのほか、国内外のクラフトビール、日本酒にウイスキーなど、本格的なバーに劣らぬラインアップとなっている。

 

米川

回転寿司業界でクラフトビールを置いたのも、きっとこの店が一番。中でもベルギービールは、ビールによって専用のグラスがあるんですが、禅では100種類以上のグラスを置いています。ビールに詳しくない人でも、気になるグラスを選んでオーダーしたり、色々な楽しみ方ができるんです。

こんな時代だからこそ大切にしたいコミュニケーション

「フォアグラなどのボリューム感ある料理には、爽やかな微発泡のお酒を」と西尾さんのおすすめで登場したのは秋田産の純米吟醸「春 Kawasemi」グラス850円
「お寿司は15cmの(お皿の上で表現する)芸術です!! 」と笑顔を見せるオーナーシェフの西尾さん

食材のうんちくを語ってくれたり、料理に合うお酒をすすめてくれたりと、オーナーシェフ西尾さんの「食を楽しんでほしい」という情熱を随所に感じるのも、禅の大きな魅力。「禅を楽しむ最大のポイントは、西尾さんとのコミュニケーション。お店を訪れた際には、ぜひ気軽に声をかけて、西尾さんとの会話から新たなおいしさを発見してほしいですね」と、米川さんも背中を押す。

 

米川

味だけでなく、サービスの質も含めて、多くの人が来てよかった! と満足してお金を払うからこそ、1位に選ばれるのだと思います。僕は“回転寿司はアミューズメントパークだ ”とよく言っているのですが、そこで重要になるのが、居心地のよさと遊び心。まさにアミューズメントパークのような楽しさが、禅にはあるんです。

次のターゲットは世界!? 進化を続ける寿司ビストロ

あじわい回転寿司 禅のオープンは2009年。元は神奈川県西部に展開していた回転寿司チェーンの1支店で、店長だった西尾さんの意向により、当時からワインや生ハムを提供するなど、すでに今とほぼ変わらないスタイルを確立していた。その後、西尾さんが店舗を買い取って独立し、あじわい回転寿司 禅となる。

 

米川

僕が初めてこの店に来たのは、20年近く前。禅になる前のチェーン店の時代でした。まだネットで情報を拾えない時代だったので、ちょっと変わった店があるという噂だけを頼りに来てみたら、とんでもない店で度肝を抜かれました。でも、その2、3年後には食べログ1位になっていましたから、西尾さんの情熱あふれるトークなど、“禅でしかできない体験”に心を掴まれた人が、それだけたくさんいたということ。

レシピは主に西尾さんが考案し、メニューごとにフレンチのシェフ、寿司職人、和食の職人がそれぞれ腕をふるう

それにしても気になるのは、そもそもなぜ、回転寿司店でフレンチを出すようになったか。オーナーシェフの西尾さんによると、チェーン店時代、近所に大手のチェーン店がオープンすることになり、対抗策として、すでにメニューにあったワインに合う料理として、フレンチを提供したのが始まりなのだとか。実は西尾さんが最初に修業したのがカナダにある寿司店で、その厨房でフレンチの技法を学んだ経験があったことから作り始めたそう。その後、より日本人の口にあうように研究を重ね、イタリアンやスペイン風も取り入れるように。

常に時代の先を行くスタイルを貫いてきた「禅」の新展開として早くも話題になっているのが、2020年に鎌倉にオープンした「寿司ビストロ禅」。ベルト付きの席を無くしたスタイリッシュな空間で、フランス料理と寿司が交互に出る「寿司ビストロコース」を提供する。
「今や回転寿司は、冷凍技術の進歩などにより、どの店でもたいていおいしい寿司が食べられます。しかしだからこそ、店ごとの味の違いがわかりにくい。そんな中でも禅は、味もサービスも明らかに他とは違う。誰が見ても明らかだから、語られる要素になる。鎌倉でも、また新たな禅らしさを発揮してくれるはず」と期待する米川さんに対して、「常に進化していけるよう、昨日より今日、今日より明日を続けていきます」と力強く答える西尾さん。コンセプトとして掲げる「普段着で、パスポートなしで世界旅行ができる店」は、今後ますます求められる存在になりそうだ。

※価格はすべて税込

※本記事は取材日(2021年3月19日)時点の情報をもとに作成しています。

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文:當間優子 撮影:ジェイムス・オザワ