お酒にこそ合わせたいスイーツ

お酒とデザートを楽しむ「Patissiere MAYO」
「2軒目のお店」としてデザートとお酒が楽しめる。お酒好き、スイーツ好き、どちらにもうれしい。

カウンター席に座り、目の前でパティシエがデザートを仕上げて出来立てを提供してくれるスイーツ店が人気だ。2月にオープンしたばかりの「Patissiere MAYO」もそんな店のひとつだが、この店が提供するのは「お酒にも合うデザート」だ。

パティシエールの宮田さんは、製菓店などの経験を経てレストランのパティシエールとなるが、当時在籍していたレストランの新店オープン時に、先行してカウンターのみで営業をすることになった 。宮田さんもカウンターに出る機会があり、その時にコース料理を食べ終わり、デザートの段階になってもお酒を楽しむ人が意外に多いことに気づいたそうだ。そして、お酒とデザートの店を出したいと思うようになったという。独立後、半年間のシェアキッチンを経験。1人で接客可能な人数などを慎重に見極め、カウンター8席のみ。完全予約制、21時以降は紹介制の同店をオープンさせた。

「Patissiere MAYO」内観
黒とグレーを基調にした店内にフルーツのカラーが映える。金色のカトラリーも調和している。

デザートメニューは3月現在で6種類。すべてアラカルトでオーダーでき、うち1つは季節の皿盛りデザート、2種類あるパフェのうち1つは季節のパフェとなっている。レギュラーメニューのショートケーキも、使用するフルーツが季節で変わっていく。それに、焼きたてのフィナンシェやプリンとなっている。
来店する客層は30~50代の男女。甘党の男性も案外多いが、甘さを抑えてお酒に合わせたデザートなので、スイーツ好きの連れに付き合って来店する場合でも十分に楽しめるだろう。逆に、お酒が得意ではない人向けにはコーヒーや紅茶も用意されているので、食後に店を変えて落ち着きたい時にこそ寄りたい店だ。

好きな時に好きなものを。アラカルトで楽しむデザート

「Patissiere MAYO」の「いちごと桜」ご
イチゴは愛媛県あかまつ農園のレッドパール。フルーツは産直で時には直接農家を訪ねることも。

客の多くが2点以上はオーダーするそうで、デザートが出てくる順番は基本的に宮田さんお任せとなる。今回、「できたてしょーとけーき」「ティラミスパフェ」「いちごと桜」をオーダーしたところ、最初に季節の皿盛りデザートである「いちごと桜」(1,300円)が提供された。

季節の一皿なので今だけのデザートだが、今回は少しだけ食べたい人が楽しめるアシェットデセールとして考案したという。クレームダンジュの上にカットしたイチゴと桜あん、さらにイチゴのアイスとスライスした冷凍イチゴがふんだんにかかった一品だ。店内でその日に作っているアイスを含めて、それぞれ食感や温度が異なるイチゴがたっぷりと詰まったイチゴ尽くしのデザートで、イチゴ好きにはたまらない。ひと匙ですべての要素をすくって食べれば、酸味と甘さのバランスが良いイチゴと、品の良い和の甘さの桜あん、そしてフロマージュ・ブランを使用したクレームダンジュの軽やかな食感が見事に調和している。

様々な要素がギュッと詰まって全部がおいしいパフェ

「Patissiere MAYO」の「ティラスパエ」
コーヒーゼリーはインスタントコーヒーを利用。必ずしもドリップしたコーヒーがおいしいわけではないのは興味深い。

2種類あるパフェのうち、シェアキッチンの頃から人気だったパフェが「ティラミスパフェ」(2,000円)だ。こちらは、コーヒーゼリーにマスカルポーネのアイスなどでティラミスの風味を再現しているのだが、アルコールを飛ばさずに作ったコニャックのゼリーやビールのグラニテなどを添えた、まさに大人のパフェ。コニャックの芳醇な香りとアイスとの相性の良さ、ビールのほのかな苦みとコーヒーの苦み、チョコレートのビターな風味が幾重にも層を織りなしている。

パフェにはこのほか、ほうじ茶のアイスや、ビターなチョコをかけて手作りしているチョコフレークなども入っていて、食べるたびに異なる味が楽しめる。そのどれもが、ひとつずつ単体で食べてもおいしく、一緒に食べることでさらに味わい深くなる魅惑のパフェだ。

「Patissiere MAYO」
宮田さんとの会話も楽しく、パフェができていく様は見ているだけでわくわくする。

お酒に合わせるために考案したパフェだけに、コニャックのカミュ(2,000円)を合わせて食べるのがおすすめ。ミルキーなアイスやマスカルポーネの味わいがブランデーを引き立ててくれる。

なお、アルコールが含まれているのでお酒が飲めない人は相談をすれば、ゼリーやグラニテを変更してくれる。しかし、お酒が弱いといっても、ビールの1~2杯は飲める程度であれば、問題ないだろう。

当日焼きスポンジだからこその軽さをもつショートケーキ

「Patissiere MAYO」の「できたてしょーとけーき」
シンプルで美しい「できたてしょーとけーき」。目の前で作ってくれる。

同店で一度は食べておきたいのが「できたてしょーとけーき」(1,000円)だ。皿の上にスポンジを置くところから始まり、クリーム、イチゴを重ねてケーキが仕上がっていく工程が目の前で楽しめる。パレットナイフをくるりと回し、美しくクリームを纏う様子は芸術的だ。そして、完成した次の瞬間に食べることができるのは、カウンターだからこその醍醐味といえる。

「Patissiere MAYO」の「できたてしょーとけーき」
コクのある生クリームと爽やかなイチゴには、シャンパンがよく合う。

宮田さんがケーキ作りでこだわったのは、スポンジだ。生クリームには水分と油分があり、時間が経てば経つほどスポンジへとしみ込んでいく。当然、パティシエはそれを計算して最適なスポンジに焼き上げるが、やはりスポンジが本来持つやわらかさは「しっとり」へと変化する。そこで、店で提供するケーキは、その日に焼いたスポンジのみを使い、オーダーが入ってから作るケーキにした。

それだけに同店のケーキは驚くほど軽やかだ。2種類の砂糖でコクとスッキリとした甘さを引き出した、やわらかなスポンジ。そこにふんわりとした生クリームが一体感をもって口内に広がり、するりと飲み込めてしまう。客からは「飲めるショートケーキ」と言われているほどだ。しかし、生クリームにしっかりとしたコクがあるので、さっぱりとした軽さではない。ひと口食べるごとに深い味わいが楽しめるケーキとなっている。

完全予約制、21時以降は紹介客のみの新たな挑戦

「Patissiere MAYO」
スポンジをはじめとする焼き物が得意で、「フィナンシェやプリンも試してほしい」と宮田さん。

この店の魅力は、出来立てのデザートとお酒が楽しめることだが、もうひとつ、パティシエールの宮田さんとの会話も挙げられる。気さくな宮田さんに尋ねれば、一つひとつのデザートについて丁寧に教えてくれ、デザートがさらにおいしくなっていく。
メニューには紹介したもののほかに、「焼きたてフィナンシェ」や「なめらかプリン」があり、焼き物が得意な宮田さんのおすすめデザートとなっている。お腹が許すなら、こちらも食べておきたい一品だ。

すべてにこだわりをもって提供されるだけに、2月23日のオープン以来、連日満席なのも頷ける。21時までは完全予約制で1時間半の時間制をとっており、ゆくゆくは21時以降の来店は紹介の人のみというスタイルをとる予定だ。

「Patissiere MAYO」イメージ
店は商業ビルの裏手にあり、大通りからは1本奥に入る。外からは店が見えず、看板も出ていない。

近年は「締めパフェ」が人気となり、食後の夜にパフェを楽しむ人も増えたが、同店のスイーツは「締め」ではない。あくまでもスイーツをお酒のお供として楽しめる店だ。お酒好きもスイーツ好きも、誰もが満足できる大人の社交場といえる。

「Patissiere MAYO」イメージ
細部までこだわりつくされたデザートが味わえる。

※価格はすべて税込

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※本記事は取材日(2021年3月18日)時点の情報をもとに作成しています。

取材・文:岡崎たかこ(grooo)
撮影:松村宇洋