大規模な再開発にともない、しばらくこの地を離れていた大人たちから再びの注目を集める街・渋谷。だけど、いざ来てみたら食事処に迷ってしまうというケースもしばしば。そんな、“シブヤお久しぶり組”の迷える大人たちのため、「食べログ グルメ著名人」で渋谷区初のCEO(Chief Eat Officer)を務める小宮山雄飛さんに渋谷の新&定番グルメスポットを両方教えてもらっちゃおう! というこの連載。

[新]編10回目となる今回は、渋谷駅すぐ近く「のんべい横丁」にオープンした「Kotli」をご案内します。

【大人の渋谷メシ・新編】第10回「Kotli」

今回僕がご紹介する渋谷の新グルメは、パキスタンカレーの新店「Kotli」です。ここ数年、おいしいカレー専門店が増えてきている渋谷ですが、パキスタンカレー専門店との出合いは初! これは気になる、ということでさっそく行ってきました。

場所は駅近の「のんべい横丁」。小さな呑み屋さんが連なる昭和の時代からの横丁ですが、最近は居抜きでお洒落なバーやビストロもちらほら。そんな横丁に、昨年9月にオープンしたばかりのお店が「Kotli」。

このお店の名物がパキスタンカレーとパキスタン料理。

横丁の、昔ながらの2階建ての建物、メニューは2階への階段の横に書かれています。1階はカウンターのみ、2階は隠れ家的な靴を脱いで上がるテーブルが1卓。

お店を切り盛りする英美さんはパキスタン人の父親と日本人の母親を持つハーフ。カレー屋さんでの修行経験などはなく、料理はすべてお父さんから教わった、いわば英美さんの家庭の味だそう。

「ケバブ」600円

こちらでまずいただいたのは「ケバブ」。 ひき肉にクミンやコリアンダーなどのスパイスを混ぜた、スパイシーなハンバーグといった感じですが、家庭の味だからか、そこまでスパイススパイスしておらず、とても優しい味で食べやすいです。

「チャツネ」

そんなケバブにつけるのは、スペアミント・パクチー・青唐辛子・ヨーグルトなどを混ぜた、緑色が鮮烈なチャツネ。

チャツネをつけると味が一気に爽やかかつ複雑になり、エスニック感が増します!

「パコーラ」600円

続いてはパコーラ。ひよこ豆の粉をベースに、ジャガイモ・たまねぎ・小松菜などを混ぜて油で揚げた、パキスタンの天ぷら。

豆とじゃがいもでほっこりとした食感が魅力ですが、こちらも先ほどのチャツネをつけて食べると、爽やかな風味が加わり、お酒のおつまみとしても良さそう。(ちなみにこちらはワインのラインアップが充実しています!)

ふと窓の外を見ると、すぐそこがJRの線路。この景色が楽しめるのも「のんべい横丁」のお店の魅力。

そしていよいよメインディッシュ!

「ハラールチキンカレー」1,000円

「ハラールチキンカレー」。カレーはもともと7種類あるのですが、コロナ禍でのフードロスをできるだけ少なくしたいということで、現在は日替わりで2種類を提供。(その日に何があるかは、お店に確認を)

いかにもおいしそうなチキンカレーのソースは無水調理。水分はすべて、トマト・たまねぎ・ピーマンなどの野菜から出たもの。元が家庭料理なだけに、健康面を考えて本場のカレーより油分を極力減らしているとのことですが、むしろ野菜の自然な甘みを味わえて、ヘルシーとおいしいのいいとこどり。

しっとり柔らかい鶏肉に、カスリメティ(フェネグリークの葉のスパイス)の豊潤な香りやパクチーの風味などが相まって、優しいながらもスパイス感を充分に感じる一皿です。

ライスと一緒に付くチャパティは、全粒粉を使った素朴な味わいが魅力。どの料理も、食べ進むうちに家庭の味というのがよく分かってくる、しみじみとしたおいしさ。

最近流行のスパイスカレーのような派手さはありませんが、渋谷の横丁で食べるパキスタンの家庭の味、自然で滋味深く、毎日食べても飽きなそう!

「じゃがいものカレー」

すべての料理はテイクアウトも可。野菜のカレーは、チキン同様家庭的なマイルドな味わいながら、油に染み出たスパイスが結構ピリ辛。これもお酒のおつまみに最適です。

さまざまなカレー店が集まる渋谷に新たなパキスタンの風が! ますます渋谷の食を盛り上げてくれるうれしい新店です。

店主の英美さん

最後に、お店の前で店主の英美さんをパシャリ。これからもお父さんの故郷パキスタンの味を、ここ渋谷で広めていってください。

※店内、テイクアウトともに価格はすべて税込

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※新型コロナウイルス感染拡大を受けて、一部地域で飲食店に営業自粛・時間短縮要請がでています。各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いします。

※本記事は取材日(2021年1月21日)時点の情報をもとに作成しています。

取材・文:小宮山雄飛

撮影:GENIUS AT WORK