お菓子の歴史を語らせたら右に出るものはいない! といっても過言ではない、お菓子の歴史研究家・猫井登先生が、現在のトレンドを追いつつ、そのスイーツについて歴史を教えてくれちゃうという、一度で二度おいしいこの連載。第26回は、トレンド発信の街でありパン屋激戦区でもある、東京・三軒茶屋のスイーツスポットを紹介します。

【猫井登のスイーツ探訪26・前編】~トレンド発信の街・三軒茶屋のスイーツショップを巡る~

 

食べログマガジン編集部

今日は三軒茶屋のスイーツショップを教えてもらえるということですが、三軒茶屋って名前からしてカフェが多そうなイメージがあります。実際にはどんな街なんですか?

 

猫井先生

渋谷からすぐのため都会的な街という印象を持たれる方も多いと思いますが、意外に下町的というか、庶民的な雰囲気が色濃い街ですね。食の観点からは、カフェももちろん多いのですが、食べログ評価3.5超のパン屋さんが10軒もある“パン屋さん激戦区”です。というわけで、今回はスイーツ系のパンがおいしいパン屋さんも織り交ぜながら、廻っていきたいと思います。ちょっと表通りから入ったところにあるお店が多いので、どの道を入って行くかを覚えるのが三茶攻略のポイントになりますよ!

【1軒め】「ぱんやのパングワン

 

食べログマガジン編集部

そして、1軒めは早速パン屋さんですね! 明るくて綺麗な外観ですが、最近オープンしたお店でしょうか?

 

猫井先生

実は三軒茶屋では最古のパン屋さんといわれていて、100年以上の歴史があります。2013年12月に現在の4代目が「ぱんやのパングワン」としてリニューアル。2018年11月に一度、人員不足でお店を閉じられますが、2019年11月(本オープンは12月3日)に復活されました!

 

食べログマガジン編集部

歴史あるお店なんですね! こちらでは、どんなパンが人気なんですか?

 

猫井先生

まぁ、まぁ。お店の中に入ったらすぐにわかりますから!

「ペンギンパン」各250円(税抜)
 

食べログマガジン編集部

うわぁ! なんですか、この愛くるしいビジュアルのパンたちは!

 

猫井先生

パングワンって、フランス語で「ペンギン」という意味なんですよ。店主の方が、ペンギンが大好きなんだそうです。

 

食べログマガジン編集部

4種類あるようですが、それぞれどんな味なんですか?

 

猫井先生

「黒」が定番で、ココアのクッキー生地に中はカスタードクリーム。「ピンク」はイチゴ風味のクッキー生地で、中はチョコレートクリームです。「茶色」は、ほうじ茶の生地に栗あん。「黄色」は、今日はかぼちゃあんですね。季節によってカレーの場合もありますね。それぞれ、目も違うのがわかりますか?

 

食べログマガジン編集部

黒以外は、目がキラキラですね! 芸が細かい!

 

猫井先生

ほかにも色んなバージョンがあって、4月には、抹茶バージョンと桜バージョンがありました。今年の冬は、シュトーレンバージョンも登場しているんですよ!(販売期間は11/18〜12/26の予定)

「ペンギンシュトーレン」大2,160円/小1,500円(各税込)
 

食べログマガジン編集部

動物の形のシュトーレンって初めて見ました! ペンギンパン以外にも、おすすめはありますか?

 

猫井先生

昔から根強い人気を誇るのは「シベリア」でしょうね。あとは「メロンパン」! 表面がしっかりと焼き込まれていて、ザックリとした食感がたまりません。

「メロンパン」130円、「シベリア」160円(各税抜)
 

食べログマガジン編集部

どれも小ぶりで、色々な種類を試したい女子にはうれしい大きさです!

 

猫井先生

次は、駅からは少し遠いですが、歩く価値のあるとっておきのお店に向かいましょう!

【2軒め】「やきがしや SUSUCRE

 

食べログマガジン編集部

確かに結構歩きましたね。お店も一見、おしゃれな雑貨屋さんのような外観ですが、中に入ると焼き菓子の数がすごいですねー! そして気になる、『ぐりとぐら』の絵本!

 

猫井先生

絵本のイラストを担当された山脇百合子さんとシェフがお知り合いのようで、お店のイメージイラストも山脇さんが描かれているようですよ。

ぐれっぷぼうや
出典:ぐれっぷぼうやさん
 

食べログマガジン編集部

それは絵本ファンにもたまらないお店ですね! シェフはどんな方なんですか?

 

猫井先生

オーナーシェフの下永恵美さんは、エコール・キュリネール国立辻製菓専門カレッジをご卒業後、「フレンチパウンドハウス」に入られたのち、ほかのお店でも修業され、「フレンチパウンドハウス」のシェフにまでなられた方ですね。その後、チョコレートで有名な「テオブロマ」でも修業され、2008年にこちらのお店をオープンされました。お子様をお持ちのママさんパティシエールとして、保存料不使用の安心なお菓子作りをされていますね。

 

食べログマガジン編集部

お子さんをお持ちの方には心強いお店ですね。たくさんの種類の焼き菓子が並んでいますが、イチ押しはありますか?

写真左奥から時計回りに、「バナナケーキ」235円、「ピティビエ」425円、「ピスタフランボ」295円、「タルトアブリコ」345円、「クラフティーリムーザン」345円(各税抜)
 

猫井先生

こちらの焼き菓子はどれも評価が高いので、お好みのものを選んでいただければと思いますが、実は奥のショーケースにはマフィンやタルト類もあって、私は毎回そちらを狙って早めの時間に来ます。

 

食べログマガジン編集部

それは耳より情報ですね!

 

猫井先生

ただ、あまり早く来ると焼き上がっていないこともあるので、お昼前後がいいですかね。「ピティビエ」「クラフティーリムーザン」など、フランスの伝統的なお菓子が基本に忠実にきっちりと作り込まれています。

 

猫井先生

次は一旦駅の方に戻って、和菓子屋さんに向かいましょう。

【3軒め】「竹翁堂

 

食べログマガジン編集部

こちらはTHE老舗といった雰囲気漂うお店ですね。

 

猫井先生

「竹翁堂」は、1927年創業の老舗の和菓子屋さんです。素材はすべて国産の上質なものを使われていますが、上生菓子でも手頃な価格で購入できると地元で人気のお店です。

写真奥から時計回りに、「栗蒸し羊羹」280円、「ねりきり菊」240円、「ねりきり柿」240円
 

食べログマガジン編集部

羊羹やねりきりなど、お茶請けにぴったりな和菓子が並んでいますね。お土産にするならどれがいいかな……。

 

猫井先生

こちらのお店に来られたら、是非「茶沢のあゆ」に注目してほしいですね。

「茶沢のあゆ」190円
 

食べログマガジン編集部

「あゆ」って、和菓子屋さんでは比較的ポピュラーなお菓子ですよね? 何か特徴があるんでしょうか?

 

猫井先生

こちらの「あゆ」は、三軒茶屋の茶沢通りを、世田谷を流れる多摩川に見立て、川を上る鮎をイメージしたものなんですが、中身がひと味違うんです。

 

食べログマガジン編集部

むむ、何がひと味違うんですか!?

 

猫井先生

なんと、中の求肥に胡麻が加えられているんです。求肥と言えば、もち米で作った白玉粉で作りますが、そこに胡麻を加えるものはなかなか珍しいですよ。「世田谷みやげ」のひとつにもなっているので、三茶に来られたらお土産にされるのもいいと思いますよ!

※価格はすべて税込

 

食べログマガジン編集部

前編は、ペンギンモチーフが可愛いパン屋さん、種類豊富な焼き菓子屋さん、老舗和菓子屋さんという個性豊かな3店でしたが、後編はどんなお店を教えてもらえるんでしょうか?

 

猫井先生

後編では、新しくオープンした人気のパン屋さん、人気のパティスリー、隠れ家的なドイツ菓子のマイスターのお店を紹介します!

※時節柄、メニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※外出される際は、感染症対策の実施と人混みの多い場所は避けるなど、十分にご留意ください。

※本記事は取材日(2020年11月2日)時点の情報をもとに作成しています。

撮影・文:猫井登