フードライター・森脇慶子が今注目している店をレポート。今回は、2020年1月に竣工した「虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」内に、6月11日開業した複合レストラン施設「虎ノ門横丁」のテイクアウトメニューを、全6店舗、前後編に分けて食べ比べ!

前編となる今回は、中華「香港焼味酒家 赤坂璃宮」、イタリアン寿司「振り塩とイタリアン イル・フリージオ」、スパニッシュ鉄板焼「プランチャ スリオラ」の3店をご紹介。

【森脇慶子のココに注目】虎ノ門横丁のテイクアウト食べ比べ(前編)

【中華】「香港焼味酒家 赤坂璃宮

言わずと知れた広東料理の名店「赤坂璃宮」。フカヒレをはじめとする高級乾貨や日々丁寧に仕込む上湯などなど数ある人気メニューの中でも、とりわけ中華通の高い評価を得ているのが焼物。それも、東京一、否、日本一ともいわれる名焼物師・梁偉康氏の卓越した技ゆえ。

ここではその人気の焼物に特化。梁シェフ指導のもと、本店と変わらぬ味を楽しめる。しかも、料理はほぼ全てテイクアウトOK! というのだから願ってもない話だろう。

「五種焼味ご飯」1,620円(税込)/写真:森脇慶子

「おすすめは、窯焼チャーシューや香港風蒸し鶏等々、焼物を5種類をのせたご飯かな」とは、譚 彦彬シェフ。「五種焼味ご飯」がそれで、具の内容はその時々で変わるそうだが、写真は窯焼チャーシュー、蒸し鶏に加えて自家製腸詰、香港焼き豚、広東風ローストダックというラインアップ。

写真:森脇慶子

皮と身の間からジュワっと肉汁が滲み出るローストダック特有の風味、皮付き豚バラ肉のカリカリとクリスピーな食感に、ネギ生姜のタレも小気味良いしっとり柔らかな蒸し鶏と、いずれも香港テイスト満載。甘めの味付けあり、塩味ありと味のバランスも良く、最後まで飽きずにいただける。

2切れずつ入っているので、1切れ目は冷えたビールと、2切れ目はご飯で味わうも一興。麺が伸びない近場なら、プリプリの海老が美味なワンタン麺もおすすめだ。

【イタリアン寿司】「振り塩とイタリアン イル・フリージオ

山形の名店「アル・ケッチャーノ」のカリスマシェフ・奥田政行氏。その彼が手がけるイタリアン&オイル寿司店「イル・フリージオ」が、山形・鶴岡市から虎ノ門横丁に移転。塩とオイルに特化した新感覚の寿司が早くも話題を呼んでいる。

「オリーブオイルはもとより、アボカドオイルや燻製オイルなど30種以上の油と100種類以上の世界の塩を用意しています」とは、菅野大輔統括マネージャー。寿司タネによってオイルを変えているそうで、まぐろの握りならにんにくオイル、ひらめにはアーモンドオイルといった按配だ。

「蟹チラシ弁当」1,680円(税込)

テイクアウトのお弁当にも、もちろんオイルが使われている。一番人気の「蟹チラシ弁当」の仕上げに用いたのは、なんとマカダミアナッツオイル。さらりと軽くあっさりした味わいが特長のオイルだが、その、どこか甘みを含んだ香ばしい香りが丸ズワイガニのやんわりとした甘みをより引き立て、すし飯に違和感なく同調する。

このすし飯にも一工夫あり。で、地元・庄内米を使ったすし飯は、塩と柚子酢のみで味つけ。奥田シェフオリジナルの「月の雫の塩」が味の要となっている。聞けば、ミネラル豊富な深海の水と対馬海流が月と太陽の引力の影響を受け、混じり合いながら岸に近づく満月の日、その満潮期に汲み上げてゆっくりと火入れした塩なのだとか。

塩味に角がなく味わいは豊かで、米はもちろん魚介にも自然にフィットする。ほぼ毎日庄内浜や金沢から仕入れる日本海の魚とオイル、そして塩とのおしゃれなマリアージュを楽しみたい。

【スパニッシュ鉄板焼】「プランチャ スリオラ」

ミシュランの二つ星を持つモダンスパニッシユの雄「スリオラ」。そのカジュアルバージョンとして虎ノ門横丁にオープンしたのが、「プランチャ スリオラ」だ。プランチャとは、平たく言えばスペイン版鉄板焼のこと。その名の通り、カウンター前に設えた鉄板がこの店の主役。鉄板でシンプルに焼きあげた海老や大アサリ、イべリコ豚などをワインと共に味わい、締めにはパエリャを、というのがこの店流の楽しみ方だ。

「魚介のパエリャ」2人前/4,070円(税込)※注文は2人前から/写真:森脇慶子

が、うれしいことに、この「魚介のパエリャ」は、テイクアウトもできるのだ。大きな赤海老に、デリケートな火入れが冴えるムール貝やアサリと具の豪華さもさることながら、蓋を開けた瞬間、鼻先をくすぐる磯の芳香には思わず目を見張らされる。聞けば、蟹や海老、魚でとる魚介系と、鶏、豚など3種類の肉類でとる肉系のダブルスープが味の決め手だそう。

写真:森脇慶子

「肉系のだしを加えることで、肉のゼラチン質が加わり、スープの旨味に深みが生まれるんです」とは平田耕示シェフ。米粒一つ一つにじんわりと染み込んだこのダブルスープこそが、このパエリャの主役だろう。具の魚介はその時々で変わるそうで、イカや旬の魚が入ることも。

バスク風チーズケーキ/写真:森脇慶子

このほか、テイクアウトには、豚、鶏、ハムなどを挟んだスペイン風ホットサンド「ビキニ」や、近頃人気の“バスチー”こと「バスク風チーズケーキ」小2,500円/大3,900円(各税込、注文は1台から)もある。

テイクアウトもイートインもモバイルオーダーで混雑回避!

虎ノ門横丁では、「LINE」を利用したイートイン利用時の整理券発行機能、テイクアウトメニューのモバイルオーダー機能を採用することにより、館内の混雑を緩和しながら安心して楽しめる環境が整えられているのもうれしいところ。雰囲気を知ってから店内での食事にトライしたい場合など、「まずはテイクアウトから!」という人は、モバイルオーダーを利用して名店の味を気軽に楽しんでみよう。

モバイルオーダーの利用方法詳細は、虎ノ門ヒルズ公式サイトからご確認を。

※外出される際は、感染症対策の実施と人混みの多い場所は避けるなど、十分にご留意ください。
※テイクアウトは期間限定の場合も多く、予約方法含め日々内容も変化するため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

取材・文:森脇慶子

撮影:食べログマガジン編集部