お菓子の歴史を語らせたら右に出るものはいない! といっても過言ではない、お菓子の歴史研究家・猫井登先生が、現在のトレンドを追いつつ、そのスイーツについて歴史を教えてくれちゃうという、一度で二度おいしい連載の第16回は、東急東横線沿線のスイーツスポットを紹介。前編に続く後編では、学芸大学駅周辺のお店を中心にご案内します。
【猫井登のスイーツ探訪16・後編】〜東急東横線・学芸大学駅周辺でスイーツ巡り〜

食べログマガジン編集部
後編は東急東横線・学芸大学駅からスタートということですが、このエリアのスイーツにはどんな特徴があるんですか?

猫井先生
この辺りは、古くから地盤が固く安全な土地として知られ、外国の大使館も多いため、昔から人気の洋菓子店が多く見られますね。さぁ、早速1軒めに到着です!
【1軒め】「マッターホーン」

猫井先生
「マッターホーン」は、1952年創業の老舗洋菓子店です。一店舗主義を貫かれ、ほかには支店を出さず、地域密着の営業をされています。工場とお店が直結しているので、出来立てのケーキがショーケースに並びますね。

食べログマガジン編集部
ショーケースに並ぶケーキの数が多いですね! 迫力を感じます。

猫井先生
奥に喫茶がありますので、順番待ちの紙に名前を書いて、その間にケーキを選びましょう。

食べログマガジン編集部
ワクワクするシステムですね! しかも生菓子だけでなく、クッキー、チョコレート、アイスクリームまで……。こちらの看板スイーツはどんな商品なんですか?

猫井先生
贈答用だと、バウムクーヘンやクッキーの詰め合わせは予約必至の人気商品ですよ。生菓子だと、ショートケーキ、サバラン、ダミエなど、昔懐かしい感じのケーキが有名ですね。


食べログマガジン編集部
ダミエって、どういう意味なんですか?

猫井先生
日本で言うところの“市松模様”ですね。こちらのケーキは、2色のスポンジをバタークリームで挟み、チョコレートでコーティングしたものですね。こちらのダミエはバタークリームを使用していますが、そんなに重くなく、甘すぎず、食べやすいですね。


食べログマガジン編集部
たしかに、バタークリーム特有のこってり感が少ない気がします。サバランにはどんな特徴があるんですか?

猫井先生
こちらは、ラム酒入りのシロップをたっぷりとブリオッシュ生地に染み込ませたものですね。アルコールの印象はそんなに強くなく、やや甘めの仕上げなので、サバランを食べたことがない人でも食べやすいと思いますよ。

食べログマガジン編集部
次に向かうのは、どんなお店ですか?

猫井先生
住宅街にある人気店で、長島正樹シェフが2001年にオープンされたお店です。シェフは、成城学園前にあった「マルメゾン」(現、「マルメゾン 本店」)などで修行された後に渡仏され、パリのほか、ノルマンディーやミディピレネーといった地方でも修行された方です。
【2軒め】「リュードパッシー」


食べログマガジン編集部
こちらもイートインスペースのあるお店なんですね。

猫井先生
パフェなどもありますが、ここはやはりケーキを食べていただきたいですね!

食べログマガジン編集部
可愛らしいケーキが並んでいますね。こちらのケーキにはどんな特徴があるんですか?

猫井先生
一言で表すなら、“伝統にモダンを融合させたケーキ”ということになるでしょうね。例えば、通常、オペラと言えばチョコレートとコーヒーの組み合わせですが、こちらにはピスタチオを使ったものがあったり。パリブレストといえば、ナッツクリームですが、こちらではカシスを合わせたりと、伝統的なフランス菓子にひとひねり加えたものが多いですね。

食べログマガジン編集部
伝統を重んじつつ、新しい発見も楽しめるわけですね。ショーケースの中でも目を引く「ポムダムール」が特に気になります。


猫井先生
ポムダムールは、アールグレイのミルクチョコレートのムースに、キャラメリゼされたりんごが入っています。濃厚な味わいですが、真ん中のサブレと生クリームが食感にアクセントを与え、甘さを調節してくれます。個人的には、チョコレートが主役のケーキもおすすめなので、「ペルー」も味わっていただきたいです!

食べログマガジン編集部
冬はやっぱりチョコレートのケーキが食べたくなりますよね。こちらはどんな味わいなんですか?

猫井先生
ペルー産のカカオを使用したチョコレートのムースが濃厚で、酸味と苦みのバランスが素晴らしいですね! お店で出されているコーヒーは酸味が利いたものなので、コーヒーとの相性もバッチリですね。

猫井先生
最後に、可愛いお土産用のお菓子を買うことができるお店を紹介しましょう。
【3軒め】「メゾン ロミ・ユニ」

食べログマガジン編集部
外観からして可愛らしい雰囲気が溢れていますね!

猫井先生
お菓子研究家・いがらしろみさんのジャムと焼き菓子のお店です。いがらしさんは、パリの「ル・コルドン・ブルー」でお菓子作りを勉強されたのち、フランスのほか、イタリア、イギリスにも行かれ、フランスのアルザスではジャムに、ロンドンではスコーンに興味を持たれます。2002年より、「romi-unie」という屋号でお菓子研究家として活動を開始されました。


食べログマガジン編集部
小瓶に入ったジャムはテーブルに置いておくとお洒落な気分に浸れそう。これはお土産に最適ですね!


猫井先生
ほかにも、スコーンやパウンドケーキ、クッキーなどの焼き菓子もおすすめですよ。ピース売りもされているのでお手軽ですし、パッケージも素敵です!
写真・文:猫井登