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〈食べログ3.5以下のうまい店〉
巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー! 食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。
食べログは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。
点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。
そこで、グルメなあの人にお願いして、本当は教えたくない、とっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。 今回は、DJ/プロデューサーとして国内外で活躍し、グルメ通としても知られる田中知之さんが「大ファン」と公言する大阪府南部・泉大津市にあるイタリアンを紹介。
教えてくれる人
田中知之
DJ/プロデューサーとして国内外で活躍。FPM名義で8枚のオリジナルアルバムをリリースする他、多数のアーティストの楽曲プロデュース、100曲以上のRemixも手掛け、東京2020オリンピック開閉会式、パラリンピック開会式では音楽監督を務めた。食通としても知られ、DJツアーで培った全国各地を網羅する情報量の多さから、各界著名人からの信頼も厚い。
「ちょっと遠いは気のせい」と思えるほどハマる味わいのイタリアン
泉大津と言えば、大阪府南部の泉州地域にあり、他府県の人からすればなかなか足を運ぶ機会がない「ちょっと遠い」エリアだ。とはいえ、難波から南海電鉄の急行に乗ればわずか20分で辿り着く。
そんな場所にあるイタリアン「ボスコリサイア」へ東京からでもわざわざ足を運ぶのが、DJ/プロデューサーの田中知之さん。「横浜で予告なしに出現するポップアップレストランでここが出店していて、その料理を食べて大ファンになり、泉大津のお店も訪ねました」と振り返る。
お店があるのは南海電鉄泉大津駅の高架下で、改札から出てすぐというアクセス抜群のロケーション。カジュアルな雰囲気で誰もが入りやすいのも好印象だ。
食べログの点数は3.32。泉大津という大阪市中心部から少し離れた場所なのが、ネックになっているのであろうか。それでも田中さんが東京からでも足を運ぶというのだから、人を魅了する何かこだわりがあるに違いない。
※得点は2022年3月時点のものです。
地元の海と山の幸を手の込んだ下ごしらえで昇華させた品々
「とにかくド直球から超変化球まで緩急織り交ぜ、泉州の食材を使ったイタリアンをがっつり食べることができます。しかもマリアージュされるワインのチョイスも最高」と田中さんが太鼓判を押すこちらのメニューの数々。
料理を手がけるのはシェフの森田真一郎さん。10年ほど前に別の場所で創業し、5年前にこの地に移転してきた。「地元・泉州の新鮮な食材を手に入れるには、やはりこの場所が一番いいです」とその狙いを語る。
田中さんがいつもオーダーするのは森田シェフにおまかせのコースだ。コースはコーヒー、デザートを含む全12品で6,600円から。10,000円のコースになると、さらにヴァージョンアップさせたメニューが揃う。
今回は6,600円と10,000円のコースやアラカルトの中から、おすすめのメニューを紹介することにしよう。
泉州産食材とシェフの技が凝縮された前菜盛り合わせ
コースでもアラカルトでも楽しめ、その豊かな色彩とボリューム感に驚かされるのが「地野菜中心おまかせ前菜9種盛り合わせ」。
中央にあるのは、泉州玉ネギのパンナコッタ。炒めた玉ネギを漉し、塩漬けした鹿の前脚でとったコンソメスープと合わせ、ゼラチンで固めた一品。前菜であっても、手間と時間を惜しみなくつぎ込むその熱意には、もはや脱帽だ。
森田さんの母親が育てたブロッコリーや近隣で採れた芽キャベツを使った前菜が並ぶ中、田中さんがおすすめするのが北イタリアの伝統ハム「モチェッタ」を使った一品。こちらのモチェッタは、野生鹿のモモ肉を、ハーブと塩コショウ、赤ワインに3週間漬け込み、さらに一ヶ月半乾燥させた自家製ハムだ。
薄く切り分けたモチェッタを、もっちりした食感と上品な甘さの干し柿・市田柿、クリーミーなマスカルポーネチーズと共にいただこう。
田中さん
モチェッタは噛むほどに心地よい塩気と旨みが溢れ出てきます。その味わいに市田柿の甘さ、マスカルポーネのクリーミーなコクが加わり、複雑ながら見事に調和した食感と風味に驚かされます。
いずれの一品も素材本来の味を生かしつつも、さらに手を加えることで、奥の深い味わいへと昇華させる森田シェフの創意工夫は見事としか言いようがない。