魚介の魅力を引き出すアイディア溢れる品々
泉大津は泉州沖をはじめ瀬戸内海の海産物が豊富に手に入る。森田シェフはその新鮮な海の幸を厳選した上で、さらにものによっては熟成させる場合もある。「今回のクロダイは、津本式と呼ばれる特殊な血抜きを施し、さらに1週間かけて乾燥熟成させ、旨みを閉じ込めました」。
さらに注目は上にのった半熟イクラ。魚醤に漬け込み味付けし、低温でじっくり加熱したものだ。クロダイと半熟イクラの間には芽ネギ、黒ダイコン、ブロッコリーのスプラウトもたっぷり入っている。
田中さん
季節によって魚が変わるカルパッチョです。今回のクロダイは優しい甘さと熟成魚ならではの旨みが特徴。トッピングされた半熟イクラは、温泉卵のようなネットリした食感に驚きます。半熟イクラの塩気がクロダイの淡泊な味わいと実に好相性です!
「映える」演出で高級魚のポテンシャルを引き出す
12〜4月にかけて登場するのが高級魚クエと地元貝の包み焼きだ。クエをはじめとする具材は透明な素材に包まれたまま客席に運ばれ、目の前で包みをほどく演出だ。
皮目をカリッと焼いたクエの切り身とアスパラガス、カリフラワー、トマトなどの具材に、白ワインと共に貝を加熱し、そのスープに塩などを加えたシンプルな味付け。また客席に出す直前まで温められ、熱々のままで味わえるのもうれしい。
田中さん
期間限定、しかもクエが入荷したときにしか味わえないレアな一品! 白ワインと貝のスープの存在感ある旨みが野菜類に染みこんでいます。ホクホクぷりぷりのクエそのままの味わいが楽しめます。
潮の香りと旨みの大波が押し寄せる絶品パスタ
誰もが〆として口にしたいのが麺類。こちらでももちろんパスタが楽しめるが、森田シェフが提供する「タラの白子と自家製カラスミの海のカルボナーラ」は、〆と言うより、ますますワインが進んでしまう困った一皿だ。
細麺の自家製イカスミパスタは、ニンニクとアンチョビなどで味付けされ、さらにクリームソースの代わりとも言えるほど白子が加えられている。シチリアのマルサラ酒を使って、絶妙に塩抜きされたカラスミも潮の香りと彩りで食欲を刺激する。
田中さん
イカスミ、カラスミ、白子、アンチョビなど魚介類の旨みが非常に濃厚!アンチョビやカラスミのしょっぱさも加わり、どんどんワインが飲めてしまいます!
「この一品には、イタリア・サルデーニャ島の熟成白ワイン『オリスターノ』が相性抜群です!」と森田シェフがおすすめのワインを取り出した。紹興酒を思わせる香りと力強い味わいでカラスミに合わせるワインとして知られているらしい。
今回紹介したいずれのメニューも、目からウロコが落ちるような新しい味だった。しかも隙がないほど丁寧に作られているのがよく分かる。田中さんがわざわざ足を運ぶというのも、その料理とシェフの姿勢を目の当たりにすれば自然と頷けるはずだ。
なお、予約なしでも来店可能だが、森田シェフ一人で厨房を担当しているため、事前に希望するメニューなどを伝えておくのが、スムーズに楽しめるコツだ。詳しくは是非問い合わせてみて欲しい。
※価格はすべて税込です。