京のおやつは何にする? Vol.2

京都のことを知りたい! もっと楽しく巡りたい! そんな京都好きな方にお届けする、心ときめく京都の旅とおやつのお話。

 

案内人は、京都在住の和菓子ライフデザイナーの小倉 夢桜-Yume-さんです。

錦秋の京都を感じる11月

11月に入り、京都市内では落葉広葉樹が少しずつ色づきはじめ、紅葉シーズンが始まりました。

 

今回は、錦秋の京都を感じることができる和菓子をご紹介させていただきます。

紅葉の名所として世界的にも有名な嵐山。嵐山といえば渡月橋。風光明媚な景観に魅せられて多くの観光客が一年を通じて訪れる人気のエリアです。

 

その嵐山へは、京福電気鉄道(通称:嵐電)か阪急の嵐山駅、またはJRの嵯峨嵐山駅から行くことができます。

歩くのも大変なほど多くの観光客で賑わう嵐山ですが、少し足をのばすとまだ静かな京都を満喫できます。

渡月橋から徒歩20分ほどで、亀山公園展望台に到着します。山あいを流れる保津川を眼下に見る風景はまさに絶景のひと言につきます。近くには、あの有名な竹林の小径がありますので合わせて訪れてみてはいかがでしょうか。

京都の秋を映し出す、紅く色づく和菓子

「茶菓 えん寿」龍田の錦

嵐電・帷子ノ辻駅を下車。駅前にある昭和の面影を残す大映通り商店街を歩くと右手にオープンして3年目となる和菓子店「茶菓 えん寿」があります。

 

こちらのお店のお菓子はどれも独創的。

このお菓子は、小倉百人一首に編纂された
「あらし吹く み室の山の もみぢ葉は 龍田の川の 錦なりけり(能因法師)」
という和歌を題材にして作られています。

「えん寿」龍田の錦

龍田川の一面に紅葉の葉が散り、錦の織物のように美しい情景となった様を白とオレンジのマーブル模様の羊羹で表現しています。その羊羹で栗餡を包み、誰が袖(たがそで)のように仕上げたお菓子です。古(いにしえ)に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

 

お店のご主人が厳選した40種類ほどある全国の日本茶とともに、店内でいただくこともできます。

 

 

「船屋秋月」高雄

嵐電・宇多野駅から歩いて5分ほどのところに、京菓子處「船屋秋月」があります。世界文化遺産である仁和寺までは、歩いて7分ほどで行くことができます。また、お店の前の交差点にあるバス停からバスに乗って、京都屈指の紅葉の名所である高雄へ出かけることもできます。

 

京都の紅葉の幕開けは高雄・神護寺からとよく言われます。いち早く色づく高雄の紅葉(もみじ)。高雄の紅葉の多くは、秋の紅葉が美しいとされるイロハカエデ(別名:タカオカエデ)と呼ばれる品種です。

「船屋秋月」高雄

その高雄が銘となっている、こなし製のお菓子です。こなしとは、こし餡に小麦粉を混ぜて蒸した生地のこと。紅葉シーズンを迎えるこれからの時期、こなしで紅葉を模ったお菓子は多くの和菓子店で販売されます。

 

その多くは木型を使用して紅葉(もみじ)を模ったお菓子ですが、こちらのお菓子は木型を使用することなく、手と三角ベラを使用して成形していきます。

 

何とも言えない曲線から、和菓子らしい温もりを感じてみてはいかがでしょうか。

 

 

「鍵甚良房」秋の山

京都観光に出かけたら先ずは祇園、東山界隈へ出かけるという方も多いのではないでしょうか。法観寺(八坂の塔)を見て、京都に来たと実感する方もいらっしゃると思います。

 

清水寺、高台寺、八坂神社、知恩院、青蓮院、巽橋、建仁寺、花見小路など多くの有名観光地がひしめき合うエリアです。

その中の一つ、建仁寺の西側にあるのが御菓子司「鍵甚良房」です。

 

三方を東山、西山、北山に囲まれている京都市街地。京都で暮らす人々はとても身近に山を感じています。

「鍵甚良房」秋の山

色づく山を、これから旬となるつくね芋を使用して表現したきんとん製のお菓子です。つくね芋の独特な風味を存分に感じてみてはいかがでしょうか。

 

 

写真・文:小倉 夢桜-Yume-