ハンバーガーをこよなく愛し、そのおいしさを探求し続ける、ハンバーガー探求家の松原好秀さん。そんな、ハンバーガー界唯一の存在である松原さんに、一食の主食として満足できる、じっくり食べられるハンバーガーを紹介してもらうこの連載。第2回は、「ワックドランド!」のハンバーガーの魅力をたっぷり教えてもらいます!

【じっくり食べたいハンバーガー】第2回「ワックドランド!」

この店を一度知ったら「もうヤバイ!」というハンバーガー店のご紹介――2軒めは、都内のローカル線として知られる東急世田谷線・世田谷駅と松陰神社前駅の中間にある、「Wack Dland!(ワックドランド)」です。

 

通称「ワクド」。いま密かな人気を呼んでいるエリア・松陰神社前にワクドが誕生したのは、昨年2018年9月のこと。まだオープンから一年経たない新店ですが、その元となる「tokyo omo style(トウキョーオモスタイル)」というバーが小田急線の豪徳寺駅(または世田谷線の山下駅)付近にあります。

 

同店で出しているハンバーガーだけをスピンオフさせたのが「ワックドランド!」です。つまり両店は姉妹店。両店のオーナー清水さんのバーガー職人歴はもう7年になります。

「トウキョーオモスタイル」は地下1階の店なので、世田谷区役所通りに面したワクドは清水さんにとって待望の路面店です。店内はカウンター7席のみ。利用の半数がテイクアウトまたはデリバリーという小さなお店ですが、店内もなかなか魅力的。

店へ行ったら、天井を見上げてみて下さい。色のない無機質なカウンターとカラフルな天井のコントラスト。狭いながらもユニークなお店です。

そんな「ワックドランド!」には大きな特徴がひとつあります。それは、バーガーメニューが“一品しかない”こと。「ハンバーガー」という名のメニューがひとつだけあって、あとは「チーズ」200円、「ハラペーニョ」200円、「パティ追加」450円の常時3種類あるトッピングをお好みで追加するという、大変シンプルなシステムです。

肉らしさを最大限引き出すシンプル・イズ・ベストなプレーンハンバーガー

そして、これが唯一のバーガーメニューである「ハンバーガー(フライドポテト付き)」1,000円。パティは粗挽き・細挽き2種類のUSビーフをミックスした125g。バンズは「食べログ パン百名店 2019」にも選ばれた代々木上原の「カタネベーカリー」作。

 

その裏に粒マスタードとマヨネーズ。オニオンはグリルド。あとはトマト、レタスという、ごくオーソドックスなバーガーですが、このシンプルな状態のバーガーを食べた時に「最もおいしい」ことを目指して、このワクドのハンバーガーは設計されています。

「ハラペーニョ」200円をトッピングしたハンバーガー

ハンバーガーにとって最も大事なもの、それは「肉」です。このバーガーはその「肉らしい味」をマックスに引き出し、引き立てるような味付けがパティにしっかり施されています。ベースとなるパティとバンズがおいしければ、上に何がのっても「おいしいはず」という発想です。

 

ケチャップもマスタードも何も加えない、そのままの味で最後まで食べ切らせてしまうだけの技量を持った「プレーン」なバーガーは、都内でもそうはありません。

これが「カタネベーカリー」のバンズです。その色つや形から、手に持った時の感触、生地の弾力、咀嚼のしやすさまで、すべてがパーフェクト! 目立ち過ぎず、でも底でしっかり機能して、中身に対して「最高の受け身」がとれる最高のバンズが、ワクドのハンバーガーをサポートしています。

厚みと食感に夢中になる! 究極の味変を楽しめる羽根つきチーズバーガー

そんな、プレーンでも十分おいしいワクドのハンバーガーなのですが、プラス200円で「チーズ」をトッピングすると、さらにモノスゴイことに!

チーズをトッピングしたハンバーガー

チーズはチェダーとモッツァレラの2種のミックス。これを融かしてソース状にしたものを調理中のパティの上にのせると、鉄板の上に流れ出して「羽根」のような形に。つまり、“羽根つきチーズバーガー”になるわけです。

調理中の羽根つきチーズバーガー

こうしたバーガーは他店にもあるのですが、ワクドが際立っているのはチーズの羽根の「厚み」です。ぼてっと分厚い焼きチーズはパリパリを通り越して「ガリガリ」食感。コゲたチーズの芳ばしさが全開に利きまくるその合間に、パティにのせたガーリックチップとオニオンパウダーの味も利いて、これらすべてが旨味として力を発揮。まるで旨味のカタマリのようなバーガーです。

チーズとベーコンをトッピングしたハンバーガー

さらに気まぐれトッピングの「ベーコン」250円をトッピングすると、これはもう“極み”! 店主清水さんは「焦がし」の名人。ベーコンもカリッカリに焼き込んできます。

 

ガッチガチにクリスプなベーコンに対して「じゅわっ」と噛ませるパティの食感。味の決め手はベーコンの上に振られた「クミン」です。これがめちゃくちゃ美味! チーズにも肉にも無類の相性を誇ります。焦げたベーコンに焦げたチーズという、これまで一度も食べたことがないような「焦がしまくり」のベーコンチーズバーガーです。とにかくコゲがおいしい!

「テリヤキ」200円をトッピングしたハンバーガー

 

気まぐれトッピングは「ベーコン」「サルサ」「テリヤキ」「チリ」「ワカモレ」などがローテーションで登場します。たった一品のハンバーガーから、こんなにもさまざまな可能性が広がる小さなバーガー店です。ぜひじっくり味わって下さい。

 

※価格はすべて税込

 

 

取材・文・写真:松原好秀