【肉、最前線!】
数多のメディアで、肉を主戦場に執筆している“肉食フードライター”小寺慶子さん。「人生最後の日に食べたいのはもちろん肉」と豪語する彼女が、食べ方や調理法、酒との相性など、肉の新たな可能性を肉愛たっぷりに探っていく。奥深きNEW MEAT WORLDへ、いざ行かん!
連載2回目となる今回は、スパイスで食べる焼肉店として肉マニアたちの間で話題の新星。定番のタレで食べる焼肉とまったく違い、スパイスでマリネした焼肉はまるで口中にアフリカの風が吹き抜けるよう!? 最先端とアフリカの伝統が入り交じる新感覚焼肉の気になる実態に迫った。
vol.2 刺激的な真夏の魔味!肉とスパイス編
ビール、焼肉、スパイスから連想する季節を聞かれたら、日本人(20歳以上)の8割超は夏と答えるだろう。花火も海も祭りもいいが「食で夏を謳歌したい!」という大人の食いしん坊におすすめなのが、世田谷は三宿・池尻交差点の近くにこの春オープンした「焼肉 ケニヤ」だ。
焼肉店らしからぬネーミングが気になってしまったらすでにこの店が仕掛ける“罠”にかかったも同然。白い暖簾をくぐると、そこには、未体験の焼肉ワールドが広がる。
1階はスタンディングメインのカウンター、古民家の情緒ある佇まいを生かした2階は、ゆっくり食事を楽しめるテーブル席になっており、人数やシーンで使い分けができるのが嬉しい。
メニューを見れば、ロースやカルビ、牛タンなどの“スタメン”のほかにホロホロ鳥のぶつ切りや子羊モモ肉のチュニジアスパイスなど、通常、焼肉店ではあまり目にしない個性的な肉メニューが並ぶ。
サルサヴェルデに中東スパイス、チミチュリなど、一風変わったトッピングを多種揃え、締めは南インドのおふくろの味カレーや麻婆麺。明らかにタダモノではないラインアップ。
さらに、アルコールも大衆酒場の定番、キンミヤからシャンパーニュの最高峰、クリュッグまであつかう幅広さだ。
これまでにないタイプの斬新な焼肉店だが、この店を手がけたのが“異色の酒場”として遊び慣れた大人の人気を集める白金「酒肆ガランス」のオーナー、星野哲也さんと聞けば、合点がいく。
「どうしてケニヤなの?とよく聞かれるんですが、ケニアにはニャマチョマという伝統的な“焼肉”料理があるんです。みんなで火を囲んで肉を焼くというお祭り的な要素をこの店でも感じてもらえたら嬉しいですね」
焼肉店という型にはまらない、自由度の高さはもちろん、肉そのものの鮮度の高さや下処理の丁寧さにも心を掴まれる。
「特製スパイスで軽くマリネしたホルモンはぜひ食べてほしいひと皿。トッピングで味の変化を楽しんだり、アンディーブにロックフォールと牛タンをのせて食べる、通称“タンディーブ”もおすすめです」と星野さん。
新感覚の焼肉店が、刺激的な“真夏の夜の夢”へと誘ってくれること間違いなしだ。
撮影:外山温子
取材・文:小寺慶子