手打ちそばと特製フォアグラテリーヌのコラボが意外にハマる!

代官山と恵比寿をむすぶ坂の途中に佇む「夕星」。日本家屋をイメージした外観

名店仕込みの手打ちそばとフランス料理のテリーヌ。一見、斬新すぎるかと思われるこの組み合わせが意外にも素晴らしいマリアージュとなる。そんな新感覚のそば店がこの6月15日、代官山にオープンした「夕星(ゆうづつ)」だ。料理長の高橋信秀さんは荻窪の名店「鞍馬」で修業後、月島「玄粋庵KITSUN É 」でそば好きたちを唸らせてきた。産地は茨城県にこだわり、石臼で丁寧に挽いたそば粉で毎日手打ちするそばは十割の細挽きと粗挽きの2種類。いちばん人気はその両方がいただける「もりと粗挽き二種盛り」(1,500円)だ。

「もりと粗挽き二種盛り」。左から「粗挽き甘皮そば」、「もりそば」

しっかりと冷水で締め、コシがある「もりそば」は、十割であるがツルツルして喉ごしが良い。雑味を感じず非常にクリアーで誰にも愛される味わいだ。一方「粗挽き甘皮そば」はそばの香りと甘みが最初に感じられる。太めで歯ごたえもあり、噛んでいるとそばの風味がどんどん広がってくる。ふたつを食べ比べするとその違いにそばの楽しみが一層増してくるのである。

和をイメージした松澤シェフの新作「レザンファン ギャテ特製 フォアグラの三五八テリーヌ」

「夕星」のオープンが話題になっている理由のひとつが、ミシュランガイド東京において12年連続で星を獲得している代官山「レザンファン ギャテ」の松澤シェフが、このそばに合わせるために作った「フォアグラの三五八テリーヌ」(1,400円)である。塩、米麹、米を3:5:8の割合で混ぜ合わせた麹床に漬けたフォアグラ、米の研ぎ汁で炊いた大根、ワサビの茎の醤油漬けとクルミのコンソメゼリー寄せの3種を層にしてテリーヌに仕立てた。

 

麹によってまろやかさを帯びたフォアグラに、ほのかに甘い大根、そしてクルミの香ばしさが絡む。和テイストのテリーヌは初めてだと言う松澤シェフだが、代表作にもなり得る傑作である。

日×仏を融合させたハイセンスな空間がそば屋の概念を変える!

日本とフランスが融合したオシャレで居心地の良い店内

日本家屋調の外観からは想像できないほど、扉の向こうには日本とフランスが紡ぐ空間が広がっている。そば屋らしからぬ椅子の脚や食器はフランスのブランド「アスティエ・ド・ヴィラット」のもの。京都で400年続く唐紙の老舗である「唐長」の美しい壁紙の文様が花を添え、壁に点在する浮世絵が目を引く。

 

このオシャレな空間は、「そばが一般に普及した江戸時代に、もし、そば屋がフランスにあったらきっとこんな店だったのでは?」という、オーナー・藤井由美さんのユニークな発想によるもの。この店に入る前は「日本とフランス?」と、イメージとして結びつかなかったが、葛飾北斎や歌川広重らの作品に影響を受けたクロード・モネやヴィンセント・ヴァン・ゴッホらフランスで活躍した画家たちがいたという点から鑑みると、実は非常に的を射たセンスで、落ち着くのである。

ひとりで晩酌にちょうど良い「今宵ノ酒ヲ愉シム」

メニューはそばの単品や一品料理の他に、2種盛りそばとフォアグラテリーヌを含む7品のコラボコース(7,000円)や、酒肴5種盛り&2種盛りそばがついた「今宵ノ酒ヲ愉シム(2,800円)」コース。またランチタイムにはそばを頼めばランチ限定のそば豆腐と鶏肉入りトリュフの香るサラダが700円というお得なセットも提供しており、ひとりからグループ、接待と様々なシチュエーションに利用できる。

 

店名の「夕星」は宵の明星(金星)を意味しているそうだ。日仏を融合したこの新しいスタイルはそば屋の金星としてきっと輝き続けるだろう。

 

※価格は税・サービス料(5%)別

取材・文:高橋綾子