お菓子の歴史を語らせたら右に出るものはいない! といっても過言ではない、お菓子の歴史研究家・猫井登先生が、現在のトレンドを追いつつ、そのスイーツについて歴史を教えてくれちゃうという、一度で二度美味しいこの連載。第11回は、老舗店が多く残る、東京「四谷」のスイーツを紹介します。

 

そして、今回お送りする前編では、老舗店のパフェ&たい焼きが登場します!

【猫井登のスイーツ探訪11】〜四谷・クラシカルなパフェとたい焼き編〜

猫井(以下、猫):今日は、地下鉄・丸ノ内線四谷三丁目駅から、JR・四ツ谷駅方面に向かって歩いて行きましょう。

 

編集(以下、編):四谷って、昔は本当に4つの谷があったんですかね?

 

猫:2つの説があるようですよ。ひとつは今言われた谷が4つあったという説。もうひとつは、4軒の家もしくは茶屋があったという説。後者の方が有力なようで、四家・四屋→四谷と変化したようです。表記で言えば、地下鉄の四谷三丁目駅は「四谷」ですが、JR四ツ谷駅は「四ツ谷」。なんで「ツ」が入るんだろう? って思いませんか?

 

編:昔から思ってました!

 

猫:地名を研究している人たちによれば、江戸時代は「四ツ谷」だったのが、明治に「四谷区」が出来て「四谷」が使われるようになったとかいわれていますね。JRの場合は「四谷」という表記だと、知らない人は「よつや」とは、なかなか読めないから敢えて「ツ」を入れて「四ツ谷」にしているみたいですよ。

 

編:へぇ〜! スイーツ的にはどんな街なんですか?

 

猫:一言でまとめるとすれば、「老舗店が多く残る街」ですかね。早速、ひとつめのお店に到着しましたよ!

【1軒め】新鮮フルーツを使用したパフェ&フルーツサンドが人気! 「フルーツパーラーフクナガ」

 

猫:こちらは昭和48年(1973年)にオープンしたフルーツパーラーで、創業46年の老舗です。

 

編:昭和48年! 私、まだ生まれてません(笑)。そうそう、前から気になっていたんですが、フルーツパーラーの「パーラー」って、どういう意味なんですか?

 

出典:代々木乃助ククルさん

猫:パーラー(parlor)とは、英語で「客間、特別室、店」という意味ですが「フルーツパーラー(fruit+parlor)」というのは、和製英語といわれています。一般的には「果物屋さんがやっている喫茶店」とか「フルーツを主な材料とした食べ物や飲み物を提供するお店」という意味で使われますね。

 

編:なるほど。そして、こちらのオススメは何ですか?

 

 

猫:やはり、「パフェ」でしょう! あと、「フルーツサンドイッチ」900円もオススメです!

 

出典:俊太朗さん

編:うーん。「季節のおすすめパフェ」と「フルーツパフェ」のどちらにするか迷いますね……。

 

猫:では、ひとつずつ、注文しましょうか!

 

編:やったぁ!

 

「フルーツ」パフェ
「季節のおすすめパフェ」の「苺パフェ」

編:今日の「季節のおすすめパフェ」は、「苺パフェ」1,000円! 「やよいひめ」と「とちおとめ」、2種類の苺が食べ比べられるのも楽しいですね。「フルーツパフェ」850円も色々な旬のフルーツが入っていてお得感が最高です。

 

別の日の「苺パフェ」/出典:俊太朗さん

猫:実は、このお店のパフェの特徴は、“シャーベット”なんです。お店の自家製で、盛られているフルーツと同じ品質のもので作られているんですよ!

 

編:甘すぎず、フルーツそのものの味わいがします。

猫:さぁ、次のお店に行きますよ! 1軒めは、冷たいモノだったので、次は温かいモノを食べましょう!

【2軒め】尻尾まで餡たっぷり! 連日行列の名店「たいやき わかば」

 

編:わぁ〜! すごい行列ですね!

 

猫:ここはいつもそうですね。でも回転が速いから比較的すぐ「たい焼き」180円が買えますよ。こちらのお店は昭和28年(1953年)開業ですから、創業66年ですね。

 

編:昭和28年!

 

猫:さすがに、私も生まれていません(笑)。

 

編:そもそも、「たい焼き」って、いつ頃からあるものなんですか?

 

猫:日本のお菓子だけあって、いろいろと異論も多いのですが、明治42年(1909年)創業の浪花家総本店の初代が創作したのが始まりだといわれていますから、110年前からあったということになりますね。

 

編:ひゃ〜、そんな前からあるのですね!

 

出典:八坂牛太さん

猫:「たいやき わかば」さんといえば、“たい焼き論争”の舞台になったことでも有名ですよ。

 

編:どういうことですか?

 

猫:昭和28年頃の話ですが、簡単に説明すると、ある作家が「わかば」のたい焼きは、尻尾まで餡が入っていて誠実さを感じるという趣旨の文章を新聞に掲載したところ、ある映画監督が尻尾は口直し部分で、餡が入っているのはしつこいと反論したことから、大論争になったというものですね。結局は仲裁人が入り、引き分けに終わったようですが。

 

尻尾まで餡たっぷり!

 

編:大人がたい焼きを巡って真剣にケンカ……ある意味、たい焼きは、それだけ愛されているということですね。

※価格は全て税込

次回後編に続く

後編では、明治創業のカステラ専門店を紹介します。次回もお楽しみに!

 

写真・文:猫井登