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【カレーおじさん \(^o^)/の今月のカレー】5月を振り返る
時代は平成から令和に変わりました。カレーは昭和から平成に変わって劇的な進化を遂げましたが、平成から令和に変わった今、どのように進化していくのか楽しみです。
今月のカレーは令和を引っ張っていく存在と言えるであろう、既に人気のお店ばかりとなりました。人気店で修行したシェフの隠れた名店。人気店となった今でも間借りスタイルを貫く渋谷の名店。日本におけるネパール料理の鍵となる人物の名店。カレー激戦区神保町エリアでファンを増やし続ける名店。カレー激戦区下北沢の名店の週一朝カレー。
どこも個性があって最高です。カレーのお店も多様化しています。令和の時代もますます美味しく、楽しいカレーが食べられますように!
【第1週のカレー】北千住のオアシス。前菜からデザートまで堪能したい癒やしのカレー店
東京都足立区は北千住駅周辺。昭和から続く安くて美味しい居酒屋の多いエリアです。今世紀に入ってから再開発が進み、駅前は昔のイメージとはかなり違う雰囲気となってきました。
そんな最近の北千住の中でも、良い意味で実に北千住らしくない素敵なお店があります。今回ご紹介する「タンブリン カレー&バー 北千住」はまさに北千住における異空間、オアシスのような存在です。
メニューはスリランカ料理が中心となっているのですが、シェフは日本人。しかも「スパイスカフェ」や「ボンベイ」といった、古くからのカレー好きなら誰もが知る名店で修業された方なので、そんなお店のニュアンスも同時に感じさせるハイブリッドでハイクオリティな料理がいただけます。
昼は絶品カレー、夜はカレー以外にもお酒とおつまみが楽しめるお店。今回は夜に訪問しました。まずはスリランカ的なおつまみをと思って、「かきのテルダーラ」680円から。
かきのテルダーラ
テルダーラとは、簡単に言えばスリランカ式炒めもの。こちらのテルダーラは炒めものというよりはドライカレーのようなスタイル。スパイスで炒められた玉葱、つまりドライカレーをまとった牡蠣。いきなり最高のおつまみです。
タンドリーチキンステーキ
続いて「タンドリーチキンステーキ」1,200円。こちらの名物料理でもあるのですが、インドのタンドリーチキンとは違い、鉄板の上にのったチキンにカレーソースがかかっているスタイル。この形はこちらのシェフが修業されていた名店「ボンベイ」のタンドリーチキンと同じです。
こういう所で修業先を垣間見ることができるのが楽しいですね。色はかなり赤いのですが辛さはそれほどでもなく、フルーティーでスパイシーなカレーソースとジューシーなチキンの相性は抜群です。
タンブリンカレーにフィッシュアンブルティヤルをトッピング
メインのカレーは店名を冠した「タンブリンカレー」1,250円にしました。こちらはスリランカスタイルの副菜たっぷりなワンプレートカレー。これにお店おすすめの「フィッシュアンブルティヤル(魚のスパイス煮)」400円もトッピングして豪華に。
ライスの周りを彩る野菜料理はスリランカスタイルでありながらも、日本人ならではの繊細さと優しさを感じる美味しさ。これに、ビシっとスパイスが効いたアンブルティヤルが合わさると陰も陽も剛も柔も全て補完されるような完璧な美味しさとなります。素晴らしい!
さらにこちらのお店は、お酒、おつまみ、カレーだけではなく、食後のデザートまで美味しいのですからたまりません。「大人のカスタードプリン」420円で締めくくりました。ほろ苦さの立ったカラメルソースと甘さ控えめのプリン。甘いものが苦手な方でもいけそうな美味しさです。
大人のカスタードプリン
前菜からデザートまで完璧なコースを自分で組み立てる楽しさ。しかもお値段もお手頃価格。お店の雰囲気も実にお洒落で落ち着いた空間。北千住の喧騒の中で、こんなに癒やされる場所がある意外性。名店で修業した確かな技術と独自のセンス。
北千住には魅力的なお店が多いですが、その多くのお店と逆ベクトルの魅力を持った個性派の名店といえるのではないでしょうか。僕の大好きなお店のひとつです。
※価格はすべて税込
【第2週のカレー】一皿で二度美味しい! 肉たっぷりなのにぺろっといけちゃう “カレー×魯肉飯”の元祖店
カレーは食事であり、同時に文化ともいえるくらいに食事プラスアルファの魅力を持った食べ物だと感じることが増えてきました。音楽やファッションとコラボしたイベントがこれだけ多い食べ物もなかなか無いでしょう。そして、お店のスタイルも様々。
「間借り」という店舗形式はカレーに限らずありますが、カレーに関しては「間借りカレー」という言葉が定着しているほど多いです。間借りのお店は人気店となると実店舗化することも少なくないのですが、人気店になってもあえて間借りの形を継続しているお店もあります。今回ご紹介する渋谷の「ケニック カレー」はまさにそんなお店。
ケニックカレーは茶色のビルの5階に入っています
水を使わず野菜の水分で調理するキーマカレーと、台湾の屋台飯である魯肉飯が看板メニュー。カレーと魯肉飯の組み合せは今でこそ全国そこかしこで見られ、珍しくはないのですが、こちらケニックカレーがこのスタイルの元祖的存在といえるでしょう。
ケニックカレー店内(通常店内撮影は禁止)
元々こちらのマスターは、プロダクトデザイナーが本業。副業としてスタートしたこのお店がブレイクした今でもお店のオリジナルTシャツなどのデザインを手掛けており、カレーをきっかけに様々なものを生み出し、食事であると同時にひとつの文化ともいえるような様相を呈してきている昨今のカレー事情を体現するような方であり、お店なのです。
お店で働いている店員さんがモデルだったりアイドルだったりするあたりも個性的であり、カレーがひとつの表現方法だったりアートに近づいているとも感じさせます。
パクチースペシャル+魯肉飯
とはいえ当然カレーは食事ですから、大事なのは味です。そのあたりに関しても日々進化している美味しさなのだから素晴らしい。僕の大好きなメニューは「パクチースペシャル+魯肉飯」1,600円。
パクチーがたっぷりのっているのですが、パクチー嫌いで有名なマツコ・デラックスさんも、僕がマツコさんの番組でこちらのカレーをご紹介した際に「今まで色んな料理でパクチー食べたけど全部ダメだったのが、このカレーだと普通にいけちゃう!」と驚くほどの美味しさ。ご飯を豆腐に替えることもできるのが嬉しいです。
アボカド入りの恐竜の卵スペシャル+魯肉飯
他にも、「アボカド入りの恐竜の卵スペシャル+魯肉飯」1,600円も女性人気高いです。やっぱりね、せっかくですから魯肉飯がある日は確実に付けたいです。日替わりメニューもあり、魯肉飯が無いことも。
今週僕がいただいたのは「ケニックカレーとほうれん草とカマンベールチーズのカレーのあいがけ」1,400円です。これも美味しい!
ケニックカレーとほうれん草とカマンベールチーズのカレーのあいがけ
こちらのお店のカレーは肉肉しさが特徴なのですが、しっかり肉なのに重くなりすぎず、ペロっといけちゃいます。お客さんにおしゃれ女子が多いことでも知られていますが、そんな女子達が通うお店だということもヘビーではないことの証明ではないでしょうか。
今やカレーは飲食業界以外からも注目を集めており、デパートやホームセンターでもカレーのイベントが開催されるほど。5月半ばまで開催中の2つのイベントにもケニックカレーはしっかり参加しています。そういう意味でも、文化としてのカレーの第一線を走るお店だといえるでしょう。カレーの美味しさのみならず、そこから生まれる楽しさも味わえるお店ですよ。
※価格はすべて税込
【第3週のカレー】巣鴨でネパール料理といえばここ! 日本人の胃袋をがっしり掴むオンリーワンの味
ネパール料理の激戦区といえば東京・新大久保であり、聖地ともいえる程に美味しくて安くて良いお店が集まっていますね。その新大久保エリアの中でも、老舗といえる人気店「MOMO」でメニュー開発に関わったプルジャさんという方がいます。プルジャさんはその後、北池袋で自ら腕を振るった「味家」というお店を出し、アクセスの良くない場所にもかかわらず、瞬く間に人気店となりました。
「プルジャ ダイニング」外観
そちらが閉店しファンは悲しんだのですが、巣鴨に「プルジャ ダイニング」として復活! こちらも人気店となり数年が経ち、やっと腰を据えたと思いきや、そちらの建物が取り壊しになり閉店。しかし、またそのすぐ近くで移転オープンしたという、流浪のネパール料理人なのです。
「プルジャ ダイニング」内観
新店舗は今までのお店のどこよりも広く、落ち着いた雰囲気。移転前の店舗から徒歩数分の立地ということもあり、以前からの常連さんも多く、地元にも溶け込んでいて温かい雰囲気。
ネパールセット
今回食べたのは「ネパールセット」1,250円。こちらはご飯、ダル(豆スープ)、タルカリ(カレー味のおかず)、アチャール(スパイス漬け物)、サグ(青菜炒め)、そして選べるカレーがついてくるという、ネパール料理の代表格であるダルバート(定食)形式のワンプレートです。
カレーはマトンをセレクト。このマトン、皮付きで骨付きなんです。皮と骨がついた肉はそれを取ったものよりもしっかりと肉の味が出ます。しかし臭味が出ているわけではなく、旨味が凝縮したようなスパイス使いと味付けのバランスはやはり天才的。ここでしか味わえない絶品です。
モモ
せっかくここに来たら「モモ」550円も食べずにはいられません。モモとは、ネパール風小籠包ともいえる料理なのですが、この皮のもちもち具合と、中に入った挽肉あんの風味と、ゴルベラコアチャール(モモにつけるソース)の奥深さ、どれをとってもプルジャさん流であり、他のお店とは一味違う美味しさです。
新大久保の発展によりネパール料理の名店も増えました。ネパール現地の名店と比べても遜色のないレベルのお店もあります。新大久保の名店の味はネパール現地の味そのもので、それはそれで素晴らしいのですが、プルジャさんの料理はネパールでも食べたことの無いオンリーワンの美味しさだということが素晴らしいです。
多くの日本人にとってはプルジャさんの味の方が馴染みやすいように思います。だからといって、それは日本人向けにアレンジしたというわけでもなく、プルジャさんの味がたまたま日本人の舌と相性が良かったということでしょう。
夜におまかせコースを頼むと、他のお店でも食べられないオリジナル料理がどんどん出てきて最高なのですが、ネパール料理に慣れていない方は、まずは今回ご紹介したメニューから食べてみるのが良いかと思います。ネパール料理の名店が増えた今となっても、僕の中では「味家」時代から変わらずトップクラスに好きなネパール料理店です。
※価格はすべて税込
【第4週のカレー】カレー激戦区・神保町で新世代を牽引する名店といえばここ!
東京・神田、神保町から水道橋へ続く「錦華通り」。この通りはカレー激戦区であり、名店がひしめき合う密集地帯としてマニアにも知られ、僕は“神保町カレーストリート”と呼んでいます。この通りのラスボス的に存在するのが、今回ご紹介する「カレー&オリエンタルバル 桃の実 水道橋店」です。
カレー&オリエンタルバル 桃の実 水道橋店の外観
最寄り駅は水道橋駅(JR・地下鉄ともに)ですが、住所は神田三崎町であり、大きくくくれば神田・神保町エリアに存在するお店です。元々は、本郷三丁目にある本店「桃の実」の姉妹店として誕生したこちらのお店。本店よりも、よりカレーライスに注力したお店となっています。
メニューは、ランチタイムはカレーライス、夜はスパイス系おつまみとカレーライスのバルというスタイル。特にランチタイムは、カレーセットがおすすめです。
「チキンカレーセット」
「チキンカレーセット」1,000円は、お店の看板メニュー。チキンカレーはマスタードシードが印象的で、ココナッツを隠し味に使った南インドスタイルをベースとしながらも、日本のお米に合うように様々な工夫のなされた絶品オリジナルカレー!
玉葱の火入れだけで5時間、全工程だと3日間もかけて作っているという手間暇かかりまくったカレーなのですが、その時間のかけ方にまったく無駄が無く、だからこそ個性ある美味しさになっている究極のチキンカレーなのです。単品でも頼めますが、セットにするとこれにダル(豆のカレー)とサブジ(野菜のスパイス炒め)、ピクルスがつき、これで1,000円は奇跡的ですよ!
チキンカレーだけ食べるとスパイシーなのですが、ダルはマイルドに仕上がっているので、辛さを抑えるのにも役立ちますし、混ぜればそこに第三のカレーが生まれ、奥深い味わいとなって最後まで楽しめます。
「マグレ鴨のスモーク」
夜にはおつまみで乾杯。そして〆にカレーがおすすめ。「マグレ鴨のスモーク」700円はマーマレードのドレッシングを使ったサラダ仕立てとなっており、爽やかな甘味のドレッシングが鴨の旨味を引き立て、前菜としても最高です。
「マトンカレー」
そして「マトンカレー」1,050円。僕がこちらのお店で最も好きなメニューなのですが、チキンカレーとは違ってシンプルに作られたカレーでありながら、肉の火入れに関してはやはり長時間かけられていて、骨付き肉をしっかり煮込んだ上で、食べやすいように骨を外してあるという手の込みよう。愛を感じますね。
店主さんがカレーライスを愛しているからこそ、ここまで手が込んでいるのでしょう。これを毎日作っているとは本当に頭が下がりますし、この美味しさでこの値段というのは足を向けて寝られないレベルです。
神保町エリアはカレーの名店が多いことで知られていますが、その中でも僕がトップクラスに好きなお店が桃の実。老舗の多い神保町エリアの中では若いお店ですが、令和の神保町カレーを牽引する存在といえる名店ですよ。
※価格はすべて税込
【第5週のカレー】火曜限定! あの人気店で食べられるワンコイン“朝カレー”がスゴい
「朝カレー」は身体に良いという話、よく聞きますよね。今年引退して話題となった元メジャーリーガーのイチロー選手も、一時期毎朝カレーを食べていたことで有名でした。スパイスの薬効により、脳の血流量が増加し、スムーズな目覚めに繋がるという説もあるとか。事実、僕も寝ざめはとても良い方なのですが、これも毎朝食べているカレーのおかげかもしれません。
朝から美味しいカレーが食べられるお店も少しずつですが増えてきました。カレーマニアなら、あのお店とかあのお店あたり……と、すぐに思い浮かぶんじゃないかなとも思いますが、マニアなら誰もが知る“あの人気店”が、火曜の朝限定でモーニング営業をしているということは、意外と知られていないのではないでしょうか。
その人気店とは、カレーの街、東京・下北沢の中でも特に人気店である「般゜若(ぱんにゃ)PANNYA CAFE CURRY」です。カレー好きで知られるタレントの松尾貴史さんがオーナーのお店であり、今どき感とレトロ感のミックスした素敵な内装で、マニアでも、そうじゃない人でも、どちらが食べても美味しいと思える絶妙なバランス感のカレーが味わえる名店です。
僕が行った日の「朝ぱんにゃ」は、鶏ごぼうのカレー、オムレツ、スパイスもろきゅう、サンバル(南インドの野菜カレー)、ヨーグルト、さらにコーヒーもついて500円という破格すぎるお値段! 凄い!
安いだけではなく、すべてが優しい美味しさで、スッキリと目覚めることができました。このクオリティの朝カレー、他にはそうそうありません。
朝ぱんにゃ
朝ぱんにゃに付いてくるコーヒー
何故火曜日限定の朝営業なのかうかがってみると、近所に住む方から、朝ご飯を食べられるお店が少ないのでやって欲しいという声があったそうです。通常は仕込みの都合もあって難しいのですが、定休日前日の火曜日の朝であれば仕込みの量が減るので営業可能だということに気づき、週一の朝営業を始めたのだとか。
つまり「般゜若 PANNYA CAFE CURRY」はマニアに人気なだけではなく、地域に根付いた地元に愛されるカレー屋さんなのです。素敵だなぁ。
もちろん朝じゃなくても、昼夜いただけるレギュラーメニューも最高に美味しいですよ。看板メニューの「チキンカレー」970円は最近レトルトカレーも発売され、そのクオリティの高さが話題となっているので是非お店の味とレトルトの味を食べ比べてみてほしいです。
チキンカレー
「セイロンミックス」1,350円は、野菜カレーとマトンキーマのあいがけ。こちらも美味しさのバランスも栄養のバランスも完璧なカレーです。
セイロンミックス
今年10周年を迎えた「般゜若 PANNYA CAFE CURRY」。オーナーの松尾さんを筆頭に、店員さんも皆さんカレー愛の深い素敵な方ばかり。今後に益々期待が膨らみます。
最後にもう一度書きますが、朝カレーは火曜日のみ。営業しない日もあるので、SNSでチェックしてから行ってみてくださいね。
※価格はすべて税込
取材・文・写真:カレーおじさん\(^o^)/