これまで21回にわたり、全国のおいしいパン屋さんを特集してきた連載企画「おいしいパンのある町へ」。1店舗につき4〜5種類、合計100種類以上のパンを食べてきた担当ライターが、なかでも印象に残っている商品をピックアップ。もう一度食べたい「マイ・ベスト・町パン」3選を、記事では語られなかったマル秘エピソードとともにご紹介!

高級明太子がたっぷり! 酒の肴にもぴったりな「TOTSZEN BAKER’S KITCHEN」の「明太フランス」

渋谷から東急東横線の元町・中華街行きに揺られること、約25分。代官山、自由が丘などの人気スポットが連なる東急東横線沿線で、新名所となりつつある大倉山駅に到着。駅から徒歩1分ほどの場所にあるのが、「トツゼン ベーカーズ キッチン」。

一流ホテル「横浜ベイシェラトン ホテル&タワーズ」のレストランで長年パン作りを担当してきたブーランジェ、内山芳雄さんが手がけるのは、“ちょっと身近な、ホテルのベーカリー”。17種類もの小麦粉を使い分けて作られる惣菜パンや菓子パンの数々は、本格的な味わいながら、お手頃価格。40〜50種類の定番商品に加え、シーズンごとに季節のパン10種類がお目見え。いつ訪れても飽きない工夫がうれしい。

目移り必至のラインナップのなかでも一押しが、人気No.1の「明太フランス」(335円)。パンに明太子は、今や定番のコンビネーション。撮影中に4、5本をまとめ買いする人々をやや不思議に思ったものの、実際に一口食べて深く納得。「かねふく」のものを厳選しているという明太子ソースのおいしさと言ったら!

 

切り込みひとつひとつに練りこまれているため、どこを食べてもしっかりとソースが味わえるのも好ポイント。「お酒とも相性がいいんですよ」という内山さんのアドバイスに従って白ワインを合わせてみたところ、これがドンピシャ。スペインのオープンサンド風おつまみ“ピンチョス”を彷彿する味わいの虜になり、機会を見つけては大倉山へ通うように。お酒とパンが好き、という人にぜひとも試していただきたい一品だ。

 

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訪れる度にサプライズがある、大倉山の行列パン屋

長期保存もOK! みずみずしさと程よい酸味が後を引く「Boulangerie Parire」の「ロデヴ・ノア」

現在のパンのトレンドといえば、加水量の多い種で作る、みずみずしい生地。さまざまな店舗でこぞって取り入れている手法だが、取材班がもっとも感動したのが、「ブーランジェリー パリール」の「ロデヴ・ノア」だ。

 

人気パンが密集する八王子エリアでも、特段高い人気を誇る同店。パンひとつひとつに並々ならぬ熱量を注ぐため、大量生産はせず、売り切れとともに閉店。撮影で伺った日も、14時の時点で残っていたパンは3個のみ! ハード系の商品が主要で、クリームパンやあんパンなどの定番商品は外さない代わりに、生地をブリオッシュに替えてアレンジするなど、オーナーの桜庭一仁さんのアイデアが光るラインナップに。

ガラス張りのカウンターで特段存在感を放っていたのが、横幅25cmもの「ロデヴ・ノア」(ホール735円、ハーフ368円)。フランス南部にある小さな街の名称を冠したこの商品は、加水量が多い生地を古くから用いる同地域を代表するパンなのだとか。見た目も香りも正直なところ、かなり地味。はて、と厚みのある硬い皮を切って驚き。つやつやと輝きを放つ生地が登場!

口に含むなり、しっとり&もっちりとした食感にうっとり。蒸し器から取り出したばかりの蒸しパンにも勝るみずみずしさながら、ベタッとしない、絶妙な水分バランス。もっちりジューシーな生地に、バリッと硬い皮、カリカリ食感のくるみ、ほどよい酸味と、食感&風味のアクセントも事欠かない。

 

焼きたてのおいしさもさることながら、特筆すべきが、持ちの良さ。ほどよいサイズにスライスして冷凍保存しておいたものを解凍して食べたところ、パサパサするどころか、しっかりジューシー&もっちり! ひとつのパンのために遠出するのは……などと言わずに、ぜひともお店へ。「ロデヴ・ノア」をホールで購入し冷凍しておけば、いつでも絶品パンが楽しめる。

 

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目標は“いい街に欠かせない、いいパン屋”。八王子にある対面式のパン屋さんへ

人生でNo.1! 「Baguette Magicienne」の「たっぷり自家製クリームパン」

神奈川県は東戸塚駅からバスと徒歩で15分ほど。他県からファンが押し寄せるという名店の情報をもとに向かうも、周辺は店の気配がまったくない住宅街。不安になりながらも、ひっそりと佇む「バゲット マジシェンヌ」に到着。

オーナーシェフの加藤浩城さんは、もともと宝石の研磨職人。「研究心や探究心を感じない日は一日たりともない」という職人魂を生かし、オープン15年目を迎えた現在も、日々改良を重ねているそう。そんな加藤さんが満を持して「看板商品」と掲げるのが、店名にも掲げたバゲット。完成までに3年を要したという自慢の味わいは瞬く間に口コミで広がり、多くの人が他県から買い求めに訪れるほか、多数のレストランも顧客に持つ。

 

バゲットのおいしさはお墨付きだが、ここで絶対に外せないもう一品が、「たっぷり自家製クリームパン」(220円)。わざわざ予約する人もいるほどの裏人気メニューで、一時は注文が殺到しすぎたため、ひとりの購入数を制限したこともあるのだとか。そんな口コミが広がり、戸塚区の人気グルメに与えられる「おいしいもの とつかブランド」にも認定されている。

“ザ・クリームパン”という表現がふさわしい、オーソドックスな見た目ながら、手に持てばその違いは歴然。通常の2倍はあるように感じられる重さの理由は、クリームの量。ミルクと地養卵、天然バニラビーンズを炊いた自家製カスタードクリームを存分に味わってほしい、という思いから皮を限界まで薄くし、その分フィリングの量を増加。しっとりとした皮をやさしく噛むと、とたんにクリームが溢れ出す。

 

まるでプリンのようになめらかで濃厚ながら、甘さひかえめで上品な味わいのクリームは、パティスリー顔負け。卵とミルクのやさしい甘みに癒やされながら、あっという間に完食してしまい、「あともう1個!」という言葉をグッと堪えなければいけなかったほど。取材の帰り道は、カメラマンとクリームパンの話題でもちきりに。ともに「これまでの人生で一番おいしいクリームパン!」と同調した味わいを超える商品は、まだ現れておらず。これだけのためにも、東戸塚まで足を延ばす価値大アリ!

 

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商品化まで3年越し!職人魂あふれるバゲットを求めて東戸塚へ

 

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