お菓子の歴史を語らせたら右に出るものはいない!といっても過言ではない、お菓子の歴史研究家・猫井登先生が、現在のトレンドを追いつつ、そのスイーツについて歴史を教えてくれちゃうという、一度で二度美味しいこの連載。第四回テーマは、「お酒にも合う大人の贅沢スイーツ」を紹介します。

【猫井登のスイーツ探訪4】〜お酒にも合う大人の贅沢スイーツ編〜

編集(以下、編):今度、家に友達を呼んで女子会をやろうと思っているんですけど、スイーツをどうしようかと悩んでいて。

 

猫井(以下、猫):編集さんのお友達ということは、舌の肥えている方が多いでしょうから、ひとひねりも、ふたひねりもしないと満足してくれないでしょうね。大変ですね〜。

 

編:そんな、他人事みたいに言わないで一緒に考えてくださいよ!

 

猫:当日は、お酒も出す予定なんですか?

 

編:せっかくなので、ワインとかも出したいなぁと思っています。

 

猫:なるほど。そろそろホームパーティーも増えてくる時期ですし、今回は、「パーティーにも最適なお酒にも合う大人の贅沢スイーツ」というテーマでいきますか。

 

編:テーマの時点で美味しそう! 早速、先生のおすすめを教えてください!

 

猫:う〜ん、仕方ないですねぇ……。では、今日のテーマにぴったりな、とっておきのお店とケーキを紹介しましょう。

腕利きのパティシエ夫婦による唯一無二の名店「パティスリー パクタージュ」

パティスリー パクタージュの外観

 

齋藤由季シェフは、日本のパティスリーで修行後、渡仏。フランス南部モンペリエの2つ星レストランや美食の町といわれるリヨンの老舗パティスリー・ショコラトリーで研鑽を積み、帰国後は東京・銀座「パティスリー・ミツワ」、自由が丘「パリ・セヴェイユ」などを経て、南品川「レ・サンク・エピス」のシェフパティシエールに。2013年に独立し、「パティスリー パクタージュ」をオープン。齋藤シェフのご主人、久保雅彦氏もパティシエで、2人で運営している。

 

編:夫婦でパティシエをされているなんて……子供として生まれたかったです(笑)。そんなお店のとっておきってどんなケーキなんですか?

 

猫:ずばり、超濃厚のチーズケーキです。

赤&白ワインとベストマッチ。秋冬だけの超濃厚チーズケーキ「ガトー・フロマージュ・ブルー」

ガトー・フロマージュ・ブルー

 

猫:「ガトー・フロマージュ・ブルー」7,300円(4号サイズ/12cm)は、一言でいうと、“ゴルゴンゾーラのチーズケーキ”ですが、小麦粉は一切使わず、湯煎しながら焼いているため、パサつき感は一切なく、超濃厚でしっとりとした食感です。ベースのチーズケーキには、白いちじくと柑橘のコンフィが合わせられ、ゲランドの塩を用いることにより、まろやかな塩味に仕上げつつも、ピンクペッパーでアクセントが加えられています。表面にはこのほかマロングラッセやクルミなどがたっぷりのせられています。

 

何より、このチーズケーキが凄いのは、日を追うごとに味が変化していくことなんです! 初日は塩味とゴルゴンゾーラの力強い香りが印象的ですが、まるでチーズが熟成していくよ うな感じでだんだん、丸みを帯びたまろやかな甘みのある味わいに変化していくんです。

 

切り口もしっとり

 

1日で食べきってしまわないで、是非3〜4日かけて味わいの変化を楽しみながら食べていただきたいですね。個人的には3日目ぐらいが、チーズやドライフルーツなどに一体感が出て、非常に完成度の高いチーズケーキになると思います。

 

さらにさらに! このチーズケーキにはフランス産の「栗のハチミツ」が付いてくるんですが、甘さ控えめで、栗独特の渋みや香ばしさをもつコクのあるビターな味わいで、ブルーチーズとの相性が抜群!!

 

写真:食べログマガジン編集部

 

これを垂らすと、濃厚さがさらにバージョンアップして、それはそれは、贅沢な大人の味わいになります!

 

写真:食べログマガジン編集部

 

一般にピリッとしたゴルゴンゾーラには、しっかりとした赤ワインが合うといわれていますが、こちらのチーズケーキには「ソーテルヌ」などの濃厚で甘口な味わいの白ワインもいいと思いますよ!

 

編:聞いているだけでヨダレが……。お値段もリッチですが、何人かでシェアするならご褒美ケーキにぴったりですね! ちなみに、チーズ系以外だったらどんなケーキがお酒に合いますか?

 

猫:それならば「タンタシオン」というチョコレートケーキはいかがでしょうか?

ブランデーやウイスキーと一緒に少しずつ味わいたい濃密チョコレートケーキ「タンタシオン」

タンタシオン

 

猫:タンタシオンとはフランス語で「誘惑」という意味ですね。

 

編:なんだか危険な香りがしますね。

 

猫:危険な香りというか……キルッシュ(さくらんぼの蒸留酒)の香りがぷんぷんします(笑)。チョコレートの生地にキルッシュをたっぷりと染み込ませ、チョコレートクリームとフランボワーズの種入りジャムを合わせたプチガトーです。

 

こちらのシェフは、とにかく材料を厳選していて、キルッシュは、ドイツ製の度数が高いながらもまろやかなものを、クリームにはヴァローナのカライブというローストしたナッツを思わせるような高級チョコレートを使用されています。しかも生地にも同じチョコレートを使うことでクリームと生地に味の一体感が出るように計算されています。

 

チョコレートとフランボワーズの甘酸っぱさのバランスとほんの少し舌の上に残るフランボワーズの種のプチプチ感がたまりません! こちらのケーキは、ブランデーやウイスキーのグラスを傾けながら楽しんでほしいですね。

 

編:グラスを傾けながらケーキを楽しむなんて、まさに大人のスイーツって感じですね!

ワインにビールも無限ループ必至の塩加減「サブレ・サレ・ボワット」

写真:お店から

 

猫:最後に、ワインとともに気軽につまむことが出来るサブレ缶「サブレ・サレ・ボワット」2,800円も紹介しましょう。こちらは、甘じょっぱいサブレ3種とカレー味のナッツを楽しめる詰め合わせとなっています。

 

「サブレ・サレ・フロマージュ」600円(単品)は、チーズをアクセントにしたサブレ。赤ワインとの相性がベストでしょう。

 

「サブレ・サレ・エルブ・ド・プロヴァンス」600円(単品)は、11種類のプロヴァンス・ハーブを使った爽やかな味わい。白ワインを合わせたいですね。

 

「サブレ・サレ・トマト・エ・オリーブ」600円(単品)は、トマトの酸味とオリーブの香りを活かしています。これはビールが進みます。

 

サブレ・サレ・エルブドプロヴァンス

 

どれも、お酒が進むサブレですが、個人的には、「サブレ・サレ・エルブ・ド・プロヴァンス」の、ハーブの豊かな香りがすぅーと鼻腔を抜けていく感じが一番好きですね。リースリングなどの白ワインとの相性が抜群です!!

 

 

編:ケーキを食べながら甘じょっぱいサブレをつまむなんて、サイコーですね。

 

猫:もうひとつ耳寄りな情報をお教えしましょう。こちらのお店に行かれたら、是非パンも忘れないでほしいです。「クロワッサン」「ブリオッシュ」などのバターをたっぷり使ったパンのほかに、チーズやドライフルーツと合わせたハード系のパンも種類が豊富で、こちらもワインとよく合います。

 

写真:お店から

 

編:うわぁ〜。女子会にパンがあったら盛り上がること間違いなしですよ! 先生のオススメはどんなパンですか?

 

猫:秋季限定では、甘酸っぱアンズと洋栗を合わせた「アプリコマロン」、歯応えのよいエリンギとベーコンを合わせ、ハニーマスタードの甘酸っぱい香りをまとわせた「エリンギとハニーマスタード」、うま味の深い秋ナスにクローブの香るカレーを合わせた「秋茄子のカレーパン」などでしょうか。あと個人的には「クイニ―アマン」は毎回買って帰りますが(笑)。

 

秋茄子のカレーパン/写真:お店から

 

編:ケーキもパンも女性に喜ばれそうなものばかりで感動しました! なんだかすごく豪華な女子会になりそうです。

 

猫:それは楽しみですね。ちなみに「ガトー・フロマージュ・ブルー」は予約販売のみなので、お店のホームページなどで予約方法をチェックしてみてください。

 

※価格は全て税込

 

取材・文:猫井登

 

撮影:外山温子