おしゃれフードトレンドを追え! Vol.26

握りたてをカウンターで!おにぎり人気カムバック!

炊きたてのお米に美味しい海苔、日本人のソウルフードと言えばなんと言ってもおにぎり! これが最近、多忙なファッション業界人のお供として人気が再燃している。

 

昨今の糖質オフの流行で、撮影時の朝食探しに苦労していた編集者たち(食事の手配は編集部の若手の大事な仕事の一つ)。「おにぎりやサンドイッチを用意すると、モデルやスタッフたちに“糖質NG!”って言われるから困ってるの!」「野菜とフルーツのスムージーを用意しても糖質の多いバナナは抜いてほしいと言われた」などなど糖質を抜きつつ腹持ちの良い、さらにビジュアルも美しいケータリングを求めて奔走していた。それが、なぜだか今年に入ってからは「やっぱり普通の和食がいいわよね!」「サラダとフルーツばかりじゃ飽きちゃった」とのことで、海苔弁やらシャケ弁などの昔ながらのお弁当、そして朝食には絶対おにぎり!という層が出てきた。慣れ親しんだ和の味でホッとするし、朝から発酵食(流行りのね)の味噌汁で腸内環境も良好に保てるとあって、おしゃれ人たちの心も癒やしてくれるというわけだ。

 

巷でもやはり、おにぎり人気が再び盛り上がっている様子。東京の人気店では連日行列ができているし、先週オープンした日本橋高島屋S.C.内にも目立つ所におにぎり屋さんが。サンフランシスコでも、日本発の人気おにぎりチェーン「オニギリーカフェ」が好調のようだ。

 

さて、最近人気のおにぎりの具は何か?と言うと、そこは「伝統派」と「モダン派」に分かれるところだが、最近は断然「伝統派」が勝利している。梅、昆布、シャケ、たらこといった日本人らしいラインナップが安定の人気ぶりだ。近頃のおしゃれケータリングでよく見るような“海老マヨパクチー”“菜の花とチーズ”“赤カブとズッキーニの酢漬けのせ”といった海苔なしのビジュアル重視系は、おしゃれ業界人にとってはもはや「お洒落すぎる」と飽きられ始めている。あんなに「わあ! 綺麗なおにぎり!」と大騒ぎでインスタに投稿していたのに、最近は古風な海苔巻きおにぎりを渋カッコよく投稿するおしゃれ人たち。おにぎりの具一つ取っても、そのトレンドは目まぐるしく移り変わっているのだ。

 

前回のコラムで書いたように、最近イースト東京に話題のお店が集中しているが、人気のおにぎり店も下町に多い。全てのお店が注文をしてから握る“お寿司屋スタイル”の本格派おにぎりで、ふんわりとしたお米とパリパリの海苔をベストなタイミングで頬張れる幸せといったらこの上ない。お弁当のおにぎりとは一線を画す、握りたておにぎりの魅力を知ったら、遠くまで足を運ぶのも全く苦にならないはずだ。

“伝統派おにぎり”が人気のお店はここだ!

王道の具も季節限定の具も大人気!:利さく(千駄木)

 

 

梅ひじき、高菜チーズと味噌汁のセット800円(税別)

ごま味噌焼き、いくら鮭と味噌汁のセット800円(税別)

 

街歩きに最適な街、千駄木にも行列のできるおにぎり屋「利さく」がある。和風カフェ風のかわいらしい店内では、羽釜で炊いたご飯で作った自慢のおにぎりとお惣菜などが食べられる。食後のカフェも充実しているのでゆっくりできるのが魅力だ。やはり釜で炊いた米は、一粒一粒が立っていて歯ごたえがしっかりあり、しかも旨味がすごい。具は王道系もあれば季節限定で高菜チーズ、すじこ納豆といった受け入れやすい変化球もある。こちらのお店は持ち帰り客も多いので、店内の接客と持ち帰り用の客で店先がごった返している。昼時には行列もあり、おにぎり登場までやや時間がかかるのでランチ時間を少し外して行くことをオススメしたい。

創業64年!ローカルたちにも外国人観光客にも愛される老舗:おにぎり浅草宿六(浅草)

 

 いくら(690円)、おかか(280円)、なめこ汁(350円)※全て税込

 

浅草の「おにぎり浅草宿六」は雰囲気、接客、味ともに私が最も気に入ったお店。1954年創業の“東京で一番古いおにぎり専門店”として、界隈の人達にも海外観光客にも愛されるこの店は浅草寺本堂の裏手、言問通り沿いにある。趣ある白い暖簾をくぐれば、中にはカウンター席、ショーケースの中には色とりどりの具材が並ぶ。元気な女将さん一人で切り盛りしていて、店の中の静寂とお客さんとの楽しい会話が耳に心地よい。手際よくおにぎりを握ると、パリパリの海苔に巻いてざるにタクアン2枚とともに提供される。柔らかめに握られたおにぎりは口の中でほろほろと崩れ、海苔の風味の深さとパリッとした食感が絶妙なバランス。「江戸っ子は熱いお味噌汁じゃないと怒っちゃうからね(笑)」と提供された熱々のお味噌汁は少々濃いめの味。飾りっ気がなくて、でも一つ一つが高級感あり、なんだか江戸っ子の良さをぎゅーっと濃縮したようなおにぎり屋だった。「毎日3〜4組は海外からのお客様が来ますよ」と話す女将さん。「全然英語ダメなの」と言いながらも、ロンドンから来た女の子(280円のオニギリを一つ注文)と楽しそうにコミュニケーションを取っていた。

どこを食べても具に当たる、ボリューム大のおにぎり:ぼんご(大塚)

出典:Hajimaxさん

出典:シルビアンさん

 

今や有名店になった大塚のぼんごは私の大学時代の思い出の場所(東京外国語大学、旧キャンパスは西ヶ原巣鴨)。ここに行かずしておにぎり好きは語れない、絶対に外せない店だ。こちらも創業58年の老舗おにぎり専門店だが、宿六よりも庶民的で活気溢れる雰囲気の店だ。都電荒川線の線路すぐ手前、電飾つきの大きな看板が目立っている。店内はカウンターのみで中央の調理場をぐるっと囲んで座るのだが、中に並んだ具の多さに驚くはずだ。壁一面に貼られたメニューは、60種類ほどで、一部のメニューを除いてすべて250円(税込)という価格の安さも人気の理由だ。ここのおにぎりはどこを食べても具に当たる、というのがポイント。米も具もボリュームたっぷりで、寿司のようにふんわり柔らかく握られているので上から食べると必ず途中で崩壊する。通のお客は下の方から食べ進めて、崩壊を防ぎながらきれいに食べ終わる。女性なら1個でお腹いっぱい、男性でも2個で満腹になるだろう。豆腐の味噌汁(170円・税込)も具沢山でコスパが高い! 久々に大学時代を思い出し、2個食べられなくなった自分の食欲減退を感じる実食だった。

早朝もお昼も夜も食べられる使い勝手のよい一軒:オニギリーカフェ(中目黒)

出典:カピバラ大明神さん

 

今回取り上げる4軒の中では唯一のおしゃれ系おにぎり店が、中目黒のオニギリーカフェ。早朝ロケや会議などにはデリバリー&ピックアップも可能という、クリエイティブ業界人に重宝されているお店だ。店内は白を基調としたカフェ風のおしゃれインテリアだが、出されるおにぎりは正統派。お米は、長野県佐久地方のコシヒカリを使っており、モチモチとした食感で冷めても美味しい。「こんぶ」「しゃけ」「唐マヨ」「梅」「明太子高菜」などなど、10種類以上のメニューが並び、ランチの時間帯には、塩おにぎり&好きなおにぎり、唐揚げ、惣菜2種・味噌汁・ドリンクがセットになった「よくばりプレート」(1,080円・税込)が人気だ。店内で握りたてあったかおにぎりと美味しいお惣菜(ポテサラや唐揚げ)を味わうもよし、早朝仕事前にピックアップするもよしの使い勝手のいい店だ。

今の新米の季節、ますます美味しくなるおにぎり。たまには糖質を気にせずにおいしいおにぎりを思い切り頬張ってもいいではないか!