フードライターの森脇慶子さんが、オープン間もない新店から「いま訪れるべき良店」を厳選。トレンドに流されない確かな審美眼で、グルメならチェックしておくべき注目店をまとめて紹介します。

森脇慶子が注目する新店

1. 和牛焼肉 千(東京・銀座)

内観
内観   写真:お店から

このところ、気になる焼肉店のオープンが相次いでいますが、この8月29日、肉の日にオープンした「和牛焼肉 千」もその一つ。銀座の街に相応しく、焼肉店とはいえシックで落ち着いた雰囲気です。ここで供されるのは、日本3大和牛のうち、400年の歴史を持つ近江牛と世界的なブランド牛の神戸牛のみ。それも、繁殖・飼育から卸・加工・販売まで一貫して扱う「中川畜産」と兵庫・三田の巨匠・西澤圭氏が手がけた長期肥育未経産牛という希少な牛肉なので見逃せません。

「東京烤牛」
「東京烤牛」   写真:お店から

22,000円のコースでは、特選部位の焼肉はもちろん、タルタルやユッケ、フレッシュトリュフと合わせた焼きすき等々、さまざまな形で牛肉を表現。中でも、北京ダックならぬ“東京烤牛”は、ダックの代わりにシャトーブリアンを巻いた意欲作。同店のシグネチャーメニューです。このコースの他「牛タン3種の食べ比べコース」など、銀座の一等地にあって、比較的手軽な価格設定もうれしい限りです。

「牛タン3種の食べ比べコース」9,800円
「牛タン3種の食べ比べコース」9,800円   写真:お店から

2. WAGYU YAKINIKU 日山(東京・恵比寿)

ウェイク
「本日のコース」11,000円より   出典:ウェイクさん

1912年創業の老舗精肉店「日山」直営の焼肉店も、この8月、恵比寿にオープンしました。熟練の職人による確かな目利きと匠の技で捌かれた牛肉は、向田邦子ら文化人にも愛された味。

ウェイク
「本日のコース」11,000円より   出典:ウェイクさん

ここでは、その牛肉をユッケから始まるコースで提供。焼肉は、牛タンやカメノコ、カイノミなどの塩だれ4種とシンシンやロースなどのタレ4種という内容です。足りない向きには追加肉も用意。締めにはさっぱりと“すだち素麺”でフィニッシュという内容です。こぢんまりとした店内には個室もあり、ちょっとした集まりにも重宝しそうです。

3. AGE.(東京・神泉)

sakura007
前菜は2種   出典:sakura007さん

肉より魚派という方に格好の一軒が、この8月12日、神泉でスタートを切ったイタリア料理店「AGE.」。熟成魚と薪焼きがコンセプトの注目店です。母体は、質の高い鮮魚で一流レストランのシェフらにも一目置かれる魚介が主軸の食品卸業「いよはる」。一方、厨房で腕を振るうは、魚介イタリアンとして名を馳せた北参道「ボガマリ クチーナ マリナーラ」の立ち上げに参画、統括シェフとして活躍した島田亮平シェフ。魚のスペシャリスト同士がタッグを組んだとなれば期待値は最高潮!

美食920
「熟成本鮪の薪焼き」   出典:美食920さん

「これまで大衆魚も高級魚も含め、数えきれないほどの魚に触れてきました。日々魚と向きあい、それぞれの(魚の)味わいの理由や価値を考え続けてきた中で得た答えは、“魚は鮮度が全てではない”ということでした」と語る島田シェフ。確かな目利きと適切な処理、そして温度と熟成を的確に施した魚は、本来のポテンシャルを最大限に発揮するというのが島田シェフの考えです。更に、それをより高みに引きあげるのが火入れの技術であることは言うまでもありません。店内の熟成庫で鮭や鰆など厳選した魚が静かなときを過ごす中、白眉は鮪。程よく寝かした鮪の薪焼きは、薪火ならではの薫香を纏い、レア感を残した火入れも見事です。ちなみに、お通し1品と前菜3品のセミコースのあとはアラカルトで。その日のお腹の具合に合わせてカスタマイズしたい。

4. 蓮雀(東京・西麻布)

内観
内観   写真:お店から

食べログ 中国料理 TOKYO 百名店」にも名を連ねるイノベーティブ系中華レストラン「鶫」をはじめ「焼鶏 鶉」「鮨 波残」など人気店が集う西麻布の美食ビルに、また一つ気になる和食店が誕生しました。7月10日にオープンした「蓮雀」は、経験豊かな料理人・五十嵐美奈さんが1人で切り盛りする、カウンター6席のミニマムな空間。目の前で料理ができあがっていく様子を目の当たりにできる臨場感もご馳走です。

「蓮雀コース」15,000円の一例 ※現在期間限定で15,000円コースを12,000円にて提供中
「蓮雀コース」15,000円の一例 ※現在期間限定で15,000円コースを12,000円にて提供中   写真:お店から

「煮穴子を使った冷製茶碗蒸し」からスタートする「蓮雀コース」は、“鰆のたたき”や“海老真薯の菊花椀”、肝味噌を忍ばせた“秋刀魚の炭火焼き”など季節感も満載! フレンチのキャリアもある五十嵐さんらしく、中には野菜のテリーヌなどさりげなく洋の要素も加味された一品も登場し、舌を楽しませてくれます。しかも、この内容でコース15,000円は良心的。一つの土鍋で3度美味しい締めの土鍋ご飯も五十嵐さんの自信作です。

5. 無二 焼鳥YAMATO(東京・麻布十番)

内観
内観   写真:お店から

“大阪北新地に「YAMATO」あり”と焼鳥ラバーにはつとに知られた名店が9月1日、東京に進出。麻布十番にカウンター8席のこぢんまりとした焼鳥店を開きました。焼き場に立つのはご主人の川口伸さん。加えて、息子の悠さんが仕込み等々をサポート。親子二人三脚のアットホーム感が、緊張感漂う店内に温かな雰囲気を醸し出しています。

こはるんグルメ
創意あふれる串たち   出典:こはるんグルメさん

とはいえ、料理は新地の店にも増して変態ぶりが炸裂。トマトのかき氷を振りかけたカプレーゼに、ささみを乳酸発酵液に漬け、ネーブルを挟んで焼きすだちのキャラメリゼをのせる等々、常に進化し続けるその串の数々は、既に焼鳥店の枠を超え、新しい焼鳥の可能性を示唆していると言っても過言ではないでしょう。前菜に始まり、お造り(もちろん鶏肉)やチキンバーガー、焼き物10種も含めたコースは全20品ほどで19,800円(サービス料別)。合わせるドリンクもクラフトサケや古酒など希少価値のある酒類が揃っています。

教えてくれた人

森脇 慶子

「dancyu」や女性誌、グルメサイトなどで広く活躍するフードライター。感動の一皿との出合いを求めて、取材はもちろんプライベートでも食べ歩きを欠かさない。特に食指が動く料理はスープ。著書に「東京最高のレストラン(共著)」(ぴあ)、「行列レストランのまかないレシピ」(ぴあ)ほか。

※価格はすべて税込です。
※「食べログ」に掲載されている情報をもとに、料理名・金額等を掲載しております。 営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、最新の情報はお店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。 

文:森脇慶子、食べログマガジン編集部