【噂の新店】心与

北鎌倉駅から徒歩約10分の鎌倉街道沿い。数奇屋風の門と一枚板の看板が目印。屋号は「菊乃井」の大将、村田さんが書いた文字をユーゴシェフが削って漆を塗り、仕立てたもの

豊かな自然の中に建長寺、円覚寺などの名刹が佇み、静寂な空気が漂う北鎌倉。
そんな街並みに馴染む歴史ある日本家屋で、1日3組限定の完全予約制、日常の喧騒を忘れてゆったりと懐石料理を堪能できる店「心与(みよ)」が今年6月にオープン。
これだけでも魅力的なシチュエーションだが、特筆すべきは、同店で腕を振るうのが、有名ガイドブックで星を獲得しているフランス人シェフということだ。
繊細な和の心でもてなし、フランス人ならではの感性や素材を取り入れた新しいスタイルの懐石料理とは?

オーナーシェフのユーゴ・ペレ=ガリックスさんと、女将の古本さん

南仏出身のオーナーシェフ、ユーゴ・ペレ=ガリックスさんは、京都の三つ星老舗料亭「菊乃井 本店」で2年、銀座の二つ星レストラン「エスキス」で7年間、日本料理とフランス料理の研鑽を積み、独立してシェフを務めた東京・西麻布の創作料理店「氣分」で一つ星を獲得。その後北鎌倉の豊かな自然と、歴史ある別荘建築の日本家屋「去来庵」に魅了され、2026年6月1日に同店をオープン。
「とても静かでリラックスできる、特別な場所だなと。一目見て、ここでやりたいと思いました」(ユーゴさん)

屋号はユーゴさんがこの家を見たときに浮かんだ「心に与える」という言葉に、響きのいい読み方を調べて名付けたという。

歴史と自然、もてなしの心が織りなす特別な空間

現在は鎌倉市景観重要建築物等に指定されている「去来庵」

石段を上った先に現れるのは、昭和初期に別荘として建てられた日本家屋と、苔むす日本庭園。
中には和室が3室あり、どの部屋もガラス戸もない大きな窓から庭の草花、吹き抜ける風や鳥のさえずりなど、その時々の自然の営みを間近で感じながらゆったりと食事を楽しめる。

古都・鎌倉らしさを感じられる空間だが、梁の太さや障子のサイズが京都風など、関東の建築物として珍しい特徴も随所にあるという

取材時は7月の七夕に合わせ、床の間に和紙で仕立てた笹が。こうした季節ごとの室礼にももてなしの心が感じられる。看板や障子なども含め、内装の多くを、地元・北鎌倉で室礼品や和花を扱っている注目の花屋「花屋務」に手掛けてもらっているという。

奥の部屋はテーブル席。床の間の大書は建物とともに引き継いだもの。写真の「敬愛」のほか、「喫茶去(きっさこ・禅語でお茶を召し上がれの意味)」と書かれたものもあり、季節ごとに掛け替えるとのこと
通路に灯るランプも趣があっていい雰囲気。冬場はガラス戸を入れて床暖房で暖をとるそう