【噂の新店】「KONEXIOA」

日本人にとって最もメジャーなヨーロッパ料理といえば、フレンチもしくはイタリアンを挙げる人が多いだろう。ともに伝統的な郷土の味を志す店もあれば、革新性や独創性を追求する店もある。それは日本の食文化への定着や各ジャンルの成熟の証とも言えるが、ここ数十年で急速に日本での人気と認知度が高まったのが、2010年に“地中海の食事”としてユネスコ無形文化遺産にも登録されたスペイン料理だ。
日本では1995年前後のバルブームをきっかけに、好奇心旺盛な食いしん坊や陽気なムードを愛する酒場好きの間でスペイン料理の人気が加速。ダイニングシーンだけではなく、バスクチーズケーキのヒットによりスイーツ界でも注目を集めたのは記憶に新しい。日本でのスペイン料理の裾野を広げた料理人のなかでも、新橋で「Txiki Plaka(ティキプラカ)」というバスク料理の店を営んだ八谷玲美シェフは、某グルメガイドに選定されたこともある実力の持ち主。客席が9坪にも満たない小さな店は食通のあいだで話題を集めたが、自身が情熱を注ぐスペイン料理の魅力をもっと多くの人に知ってもらいたいという思いから、目黒の一軒家レストランで新しいスタートを切ることに決めた。

バスク語で“つながり”を意味する「KONEXIOA(コネクショア)」と名づけられた店は、開放感とドラマティックな雰囲気に包まれており、海外のレストランのようなスケールに自然と心が浮き立つ。ナチュラルなグリーンとレモンイエローに彩られた空間には大型のリングライトが配され、カウンター側のバックバーをアーチ形に切り抜くなど“曲線”を効果的に用いて、上質感と柔和さを生み出している。

「人と人とのつながりはもちろんですが、この店ではスペインの食文化や生産者の方とのつながりをより大切にしたいと思っています」と八谷シェフが話すように、アラカルトとコースで供する料理は本場の味に軸足を置きながら、日本の食材を丁寧に生かす仕事と心意気が見える。誰もが親しみやすさを感じられるよう、プレゼンテーションはシンプルに奇を衒わず。スペイン料理の本質を捉えた味で勝負する潔さも清々しい。

得意とするピンチョスは若摘みの青唐辛子とカンタブリア産のアンチョビを合わせたヒルダをはじめ、ジンジャーパウダーをアクセントに添えたソブラサーダというマヨルカ島名産の熟成サラミやジャガイモのピューレを合わせたタコのガリシア風など、日によってさまざまなバリエーションを一皿で。これだけでもカヴァやチャコリを何杯も飲んでしまいそうだ。

名物の一つであるパエリアは、日本ではめずらしい“アロセリア”という米料理の専門レストランで働いた料理人が担当。スペインの多彩なコメ文化と向き合ってきた経験を生かしたパエリアは、具材の水分量を見ながら“つながる”のコンセプトのもと、あえて国産米を使って調理。米の一粒一粒が食材の旨みをたっぷりと含んでおり、アラカルトであればサイズを選ぶことができるのもうれしい。

さらに、肉は滋賀県の精肉店「サカエヤ」の新保吉伸さんが手当てをした骨付きの牛肉をメインに扱っており、しっかりと個体を見極めた火入れに満足感が高まる。

スペインの本場の味を明朗快活に。お昼には魚か肉メインのいずれか、もしくは両方を盛りこんだランチコースを3,850円から用意しており、スペイン料理をより身近に感じる食体験にときめかずにはいられない。



