【噂の新店】フランス料理「練」

歴史的建築の意匠を受け継ぐ

今年3月、京都・祇園甲部歌舞練場の敷地内に帝国ホテル 京都が開業。国の登録有形文化財である「弥栄会館」の意匠を受け継ぎつつ再建し、全55室のスモールラグジュアリーホテルとして一躍人気を博している。本棟2階にあるのが、フランス料理「練」だ。帝国ホテルのフランス料理店としては初めてのカウンタースタイルを取り入れ、店名の「練」は歌舞練場の“練”に由来しており、「繰り返し手をかけ、より質の良いものにする」という意味が込められているそう。

帝国ホテル 京都は、祇園・花見小路にあり、京阪電車「祇園四条駅」からも徒歩圏内
ホテル本棟2階にあるエントランス。重厚な扉が食事への期待感を高める
コの字形のカウンターは10席のみ。ディナータイムのみの営業
2~8名用の個室が1部屋併設されている

カウンターを取り仕切るのは今城浩二さん。小学生の頃から土日にはランチを作るなど料理好きで、中学1年生のときには8時間かけてチキンブイヨンをひいた経験があるという生粋の料理人だ。帝国ホテル 大阪で30年間経験を積み、ここ京都では料理長に就任した。「二十四節気の移ろいを感じられる料理を提供します。元々劇場であった弥栄会館を継承しているということもあり、お客様と向き合えるカウンターは“舞台”をイメージ。音、香りや温度などで生まれる臨場感を大切に、五感に訴えたいです」と話す。

料理長の今城浩二さん
 

門上さん

お世話になっているアドバイザーの方に教えていただき、訪れました。ホテルですが、カウンターの展開で、割烹を思わせる雰囲気です。カウンターならではのライブ感が楽しめました。

いただけるお料理はこちら!

今回は、二十四節気で「芒種」「夏至」の、9皿からなるコース(税サ込38,000円~)の中から3皿を紹介する。

まずは、温前菜。琵琶湖の稚鮎をコンフィにした後、パート・ブリックで巻いて揚げた。稚鮎のコンフィとクールブイヨンを使ったほろ苦いソースで。あおさのりとアサリのエキスを使った泡がアクセントになっている。キヌアとケールのピュレを和えたもの、ヘーゼルナッツ、ケールのフリットを添えて。程よい苦みのかけ合わせが印象的な一皿だ。

稚鮎
目の前で揚げている音や香りもごちそう

次は、必ずオンメニューしている椎茸。「徳島産の神山椎茸で、中でも8.5cm以上のものは“極”と呼ばれています。うまみ、食感、ジューシーさが秀逸で、気に入って使用しています」と今城さん。中には椎茸の軸やマッシュルームを使ったデュクセルが仕込まれていて、ブーケ・ガルニと蒸し焼きに。椎茸の上の牛肉の生ハムは椎茸の温度でじんわり溶け出していく。象徴的なホテルのテラコッタを模したチュイル、伏見産有機野菜のサラダを添えて。さらに、和牛の脂でコクを加えた、カプチーノ仕立てのマッシュルームと椎茸の軸のスープを共にいただく。

まずはカウンターでココットを開いてのプレゼンテーション
神山椎茸
マッシュルームのスープに、神山椎茸の軸のパウダーなどで深みを演出
 

門上さん

椎茸の新たな世界を感じます!

メインは七谷鴨のロースト。今城さんは自ら、京都・亀岡の七谷川畔にある鴨舎を訪ね、七谷鴨が自然の中で自由に平飼いされている様子に心が動いたそう。タイム、ローリエ、ニンニクなどとローストした肉質はジューシーでうまみもたっぷり。赤ワインのソースで。北海道ホワイトアスパラ、京丹波産のラディッシュ「京こまり」、静岡産黄色インゲン、徳島産ヤングコーンなどの添え野菜も甘く、野菜の持つパワーを実感できる。

七谷鴨と野菜はシンプルにロースト
七谷鴨
 

門上さん

ソースがあることで、鴨のうまさが引き出されていることを実感できます。

おいしい食材を、おいしい時期に

各席に置かれたメニューには食材名のみが書かれており、今城さんの「おいしい食材を、おいしい時期に」という率直な思いが伝わってくる。「お客様にはただ、楽しんでいただきたいです。それ以上に私も楽しみますが」と今城さんは笑う。「これからも、スモールラグジュアリーホテルの“スモール”の部分を存分に活かして、料理の味加減や量、ペースなど、形にとらわれることなく、お客様に合わせた一皿を提供していきたいです」

帝国ホテルに受け継がれた技と今城さんの感性を味わいに、まずは予約を
 

門上さん

和の素材も使いながら、フランス料理のソースのあり方を追求しています。できるだけ京都の素材を使いこなし、京都のホテルであることを意識されていますよ。

教えてくれた人

門上武司
1952年大阪生まれ。関西中のフランス料理店を片っ端から食べ歩くももの足らず、毎年のようにフランスを旅する。39歳で独立し「株式会社ジオード」設立後はフードコラムニストというポジションにとどまらず、編集者、プロデューサー、コーディネーターとマルチに活躍。関西の食雑誌「あまから手帖」編集顧問であり、全日本・食学会副理事長、関西食文化研究会コアメンバー。著書には「食べる仕事 門上武司」「門上武司の僕を呼ぶ料理店」(クリエテ関西)、「京料理、おあがりやす」(廣済堂出版)、「スローフードな宿1・2」(木楽舎)、など。年間外食は1,000食に及ぶ。

※価格は税・サービス料込。

文:木佐貫久代
撮影:福森公博