茶懐石の流れを汲み、そばの技も窺えるコース構成
おまかせコースは25,000円のみ。1品目、寒暖の差がある今の時期なら、汲み出しがわりに季節の野菜のすり流しが供される。土田さんが目の前で点てるお茶、季節の菓子に至るまで全12品の構成。その中から、季節のおすすめを紹介していく。

この日の椀物は「蒸し鮑の沢煮仕立て」。利尻昆布と枕崎の本枯節からなる一番だしは、曰く「目指すのは、すっと体に馴染むようなだしの味わいです」。
味の要は、地下30mから汲み上げる地下水だという。「昆布の旨みの出方が違います」と言うだけあり、御所南の地の恵みもまた、この店の味を支えている。

椀物に続いて供されたのは「そば寿司」。
土田さん曰く「中村さん(隆兵そば店主)が、“よかったらお店で出したら?”と言ってくださった『隆兵そば』の名物です。技術を包み隠すことなく教えていただいたので、忠実に再現しています」。
そばの実は京都産で、更科粉を用いた十割そばを打つところから。辛汁と米酢で和えたそばは艶やかで、香り高い。焼いた薄揚げや揚げたセリの根がいいアクセントに。歯切れのよい海苔の芳しさも印象的だ。

八寸は、献立の中盤以降に登場する。茶懐石における「八寸」とは食事の終盤に酒肴として提供される料理のこと。アコヤガイ、飯蛸、のれそれ、うすいえんどう豆など、春の息吹を感じさせる逸品が8種。木瓜の花が添えられ、春の気配を鮮やかに映し出していた。
京都と故郷・飛騨高山の食文化を織り交ぜて
12品からなる献立の中には、飛騨牛を炭火で焼き上げた一品をはじめ、土田さんの地元・飛騨高山の恵みも。「京都の文化、そして生まれ育った飛騨高山の食文化も織り交ぜ、いかに“自分らしさ”を料理に落とし込むか。このことを日々、考えながら料理を作り続けています」

屋号「かはづ」は「井の中の蛙、大海を知らず、されど空の青さを知る」に由来。
「自分の見ている世界は、まだ小さい。それでも、自分にしか見えない景色があると信じて」。そんな土田さんの人柄もまた、料理の味わいに静かな深みをもたらしている。



