定食王が今日も行く!Vol.55
実家のような温かな店内で、手の込んだ小鉢と食べる煮込みハンバーグ定食
出典:okamoooさん
池尻大橋の橋のたもとに
みんなが帰れる実家食堂
「実家帰っていますか?」。私は地方出身者だが、親がもともと転勤族だったこともあり、地元という感覚はあまりなく、なかなか実家に帰れていない。自分と同じように、帰省できていない人にぴったりの食堂がある。その名も「御飯家」だ。「屋」ではなく「家」なのが、その温かく迎えてくれる雰囲気を表している。その食堂は、池尻大橋の大橋ジャンクションの高架下近くにひっそりと佇んでいる。
知らなければ通り過ぎてしまいそうなほど、友達の家のような外観は、毎日のメニューを知らせる立て看板が目印だ。店内はすっきりとした和風モダンで、オープンキッチン。ご家族で切り盛りされていて、本当に誰かの自宅に招かれたようだ。
お店のオペレーションだけでなく、お米もお店のお母さんの実兄が長野でEM栽培(善玉菌であるEM菌のある田んぼで作られた無農薬栽培)したものを使用。毎日使用する分だけ、自家精米しているので、新鮮で劣化の少ない御飯を味わうことができる。
シンプルな煮込みハンバーグは
実家のように優しく温かい
このお店の名物は限定20食という「煮込みハンバーグ定食」 1,000円(税込)だ。定食として食べるべきハンバーグと、肉屋のハンバーグ+ライスは存在意義が異なる。それゆえ、ハンバーグ定食はいかに質の良い御飯を提供しつつ、白飯に合うかという好バランスによる相乗効果が重要だ。煮込みハンバーグであることも定食屋らしさの極みだ。
フロアを仕切る息子さんが仕込んだという玉ねぎいっぱいのソースは、まさに「ご飯に合う」をコンセプトに開発されたそう。
ぎっしり詰まった玉ねぎの旨味と和牛100%の肉の旨みとが、口の中を埋め尽くす。添えられたエリンギと人参が味の優しさを倍増させて、泣けてくる! ご飯が進んで仕方がない!
火の入れ加減がものをいうステーキ屋のハンバーグや、自宅で作るハンバーグとは違う、凝ったソースの煮込みハンバーグだからこそ、安心できる味を安定して提供しつづけられるのだろう。
もう一つの人気メニューが「特製黒豚しょうが焼」950円(税込)だ。ぷりっぷりの黒豚は噛みしめるほどに味わいが増す。ほどよく絡んだソースは濃厚すぎず、食べ飽きることなくご飯が進む。大衆食堂の生姜焼きがコンビニにちょっと買い物に行く娘さんなら、このしょうが焼は、ワンピースを着こなしたお嬢さんのように上品な見た目と味わいだ。
実家のような優しさを感じる
日替わりの絶品小鉢4種
定食の完成度を左右する小鉢。メインの料理の完成度は言うまでもなく、日替わりで提供される小鉢のバリエーションの豊かさとレベルの高さは圧巻だ。この日の小鉢は、ベーコンアスパラ炒めを筆頭に4品がお盆を彩る。
煮崩れしていない、美しい金時豆の甘煮。
おそらく自家製のお新香も、芸術品のような美しさだ。
そして食事を締めくくるのは、懐かしすぎる豆かん。こちらも自家製だそうで素朴なのに丁寧な仕事ぶりを感じることができる。
扉を開けると迎えてくれるのは、「懐かしい」のオンパレード。 東京にいながら実家に帰省したような温かさで迎えてくれる食堂では、「ごちそうさま」と一緒に「行ってきます」と思わず言いたくなる。次の「ただいま」の時は、どんなごちそうが出てくるだろう? そんな楽しさを噛み締めながら、実家を後にする。忙しくてなかなか実家には帰れないけれど、“母の味”が恋しくなったら訪れたい隠れた名店だ。