食通が見いだした、今月の新店

新しいお店がどんどん出店し、ますますの盛り上がりを見せる飲食業界。「気になる店が多すぎてどこの店に行ったらいいかわからない!」という人も多いのではないでしょうか。

そこで、グルメ情報に精通している方々に、最近訪れた新店に関するアンケートを実施。特に注目している「今月の新店」について教えていただきました。

今回は、フードパブリシストの高橋綾子さんにお答えいただきます。

今月のベストワン

Q. 直近で行った新店の中で、特におすすめしたいお店を教えてください

A. 「Restaurant SAI 燊」です

大きなテーブルのメインダイニングの他に8席の個室を用意

注目されているデスティネーションレストランの一つ、「Restaurant SAI 燊」は、山梨県西湖のほとりにあります。料理長の豊島雅也さんは軽井沢の「ブレストンコート ユカワタン」でスーシェフとして腕を振るい、2017年に河口湖に「TOYOSHIMA」をオープン。

「Restaurant SAI 燊」は「ゴ・エ・ミヨ」で3トックを獲得しています。「コンセプトは“奥山梨”、西湖の素材感を大切にしたい」と、自ら山に入り狩猟し、山菜やきのこなどの食材を採り、発酵や熟成もやってしまう、さらには養蜂エリアまで造ってしまったそう。

「富士の恵」 

だから使用する調味料はほぼ豊島さんが手作りしたもの。醤油だけでも鹿、鴨、猪、ヒメマスがあります。特に発酵食材は9年前から年代別にあり、その日の食材によって何を使うか決めています。例えばある日に提供したトマトソースのパスタには採れたてトマト、加熱したトマト、9年発酵させたトマトを使い、フレッシュ感と熟成感あふれるソースに仕上がったそう。話を聞いているとすべて食べてみたくなります。

「西湖」

そんなおまかせコース(10〜11品 20,000円)はフランス料理をベースに山梨の食材と自家製の調味料、そして豊島さんのアイデアによる調理法によって、常に楽しい驚きに満ちた料理が流れるように展開されるのです。

席についた時からじっくり焼き続けた甲州牛の炭火焼き
「甲州」

この地に存在する自然の恵みとともに古来の食文化を伝え、継承していきたいと話す豊島さん。フランス料理一筋でしたが食材をおいしくできるならジャンルを問わず何でも挑戦しています。あらかじめ仕込んでおくことはせずに、ゲストの様子と食材の状態を見ながら豊富な自家製調味料を組み合わせる真のライブクッキングは2度と同じ味には出会えないというまさに一期一会の料理。こんな稀有な食体験を見逃すことはできません。

Q. おすすめメニューは?

A. 「文化」です

毎日手打ちしています

どの料理もおすすめしたいのですが、一番驚いたのがこの料理でした。「このエリアは水はけが良く、古くからある小麦文化をオマージュした料理です。これは5日前に打ち、足で踏み込み真空をかけ熟成させてから毎日状態を見てどのくらいの細さで切るかを考えます。本日は細めに切りました」という話を聞けば、期待度はMAX! ふわりと余韻を残す小麦の甘み、噛みごたえと麺のうまみを感じさせるベストな細さに切った麺。合わせたのは、昆布と湧き水に浸透圧をかけてうまみを抽出した汁に、同じく浸透圧をかけた「がごめ昆布」を加え、自家製の鹿醤を数滴落とした出汁です。豊島さんは食材を可能な限り無駄にしないように、出汁や調味料を作っています。この鹿醤も1年かけて溜めたスジに塩をあてミンチにし、塩麹に2年程漬けて発酵させたもの。かけた手間と時間は嘘をつきません。限りなくピュアで透明感のある味わいに絶句しました。

教えてくれた人

高橋 綾子
フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人生そのものに。その間に培った食のデータと人脈を武器に“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ日々。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。

食べログマガジンで紹介したお店を動画で配信中!
https://www.instagram.com/tabelog/

※価格は税込、サービス料別

文・撮影:高橋綾子、食べログマガジン編集部