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〈自然派ワインに恋して〉
シェフの料理とマリアージュするのは、自然派ワイン。そんなレストランが増えている。あの店ではどんなおいしい幸せ体験が待っているのだろう。ワインエキスパートの岡本のぞみさんが、自然派ワインに恋して生まれたお店のストーリーをひもといていく。
ナビゲーター

岡本のぞみ
ライター(verb所属)。日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート、日本地ビール協会認定ビアテイスター/『東京カレンダー』などのフードメディアで執筆するほか、『東京ワインショップガイド』の運営や『男の隠れ家デジタル』の連載「東京の地ビールで乾杯」を担当。身近な街角にある、食とお酒の楽しさを文章で届けている。
開放的でエキゾチックなワインバー

神田や淡路町はオフィス街をベースにそばや天ぷらなどの老舗店やカレーの名店が点在するちょっと渋めのエリア。この街にあって、異色な雰囲気で注目されているのが、2025年1月にオープンしたワインバー「aux FACETTES(オーファセット)」。間口が広い開放的な外観とエキゾチックな店内が周囲とは違う空気感醸し出し、カウンターの後ろにずらりと自然派ワインが並んでいるのも目を引く。

店主の長島和弘さんは紅茶専門店に勤務した後、ワインの世界へ。インポーターや「Wineshop & Diner FUJIMARU」を経て、ワインバーを開店。好立地に引かれて淡路町に店を構えてみると、近隣に増えてきた若い世代のマンション住民の需要があることがわかり、昼飲みにも対応できるよう15時オープンで営業を始めた。店にはテラス席やテーブル席、カウンター席があり、使い勝手よく利用できる。

カウンターの奥にはワインセラーがあり、中へ入ってボトルを選ぶことも可能。一人で自由に見ることも、長島さんに見立ててもらうこともできる。ワインバーとしてはかなり広めのワインセラーなのが、ワイン好きにはうれしいポイントだ。
無農薬サラダ✕爽やか白ワイン

スターターにおすすめなのは、野菜だけのシンプルなサラダ。山梨の「うえのはらハーブガーデン」の野菜やハーブを主役に、オイルとビネガーと塩だけで作ったドレッシングで和えた一品。「こちらの野菜は、辛みのあるものはしっかり辛くて、甘いものはしっかり甘くて味が濃いんです。だからその味をシンプルに味わってほしくて、そのままのかたちで出しています」と長島さん。

それに合わせてもらったのは、山梨の紫藝醸造で造られた白ワイン。「その土地の野菜とその土地のワインって、やっぱり合うんです。すっきりとしていながら、甘いデラウェアの香りもあって、シンプルなサラダに寄り添ってくれます」と長島さん。名前の“翠翠”のイメージ通り、サラダにある苦みや辛みをほどよく涼やかに爽やかにしてくれるような味わいだった。
カプレーゼ✕トマト風味ロゼワイン

次に運ばれてきたのは、色とりどりのトマトが宝石のように輝くカプレーゼ。「トマトは色が違うと、味わいも変わるんですよ」と長島さん。お決まりのモッツァレラチーズではなくストラッチャテッラチーズを使って、よりミルキーにトマトを味わえる一品となっている。これもシンプルにオリーブオイルと塩だけで味付けされている。

カプレーゼにペアリングしてもらったのは、南アフリカのロゼワイン。「これ飲んでもらうとわかるんですけど、トマトの味がするロゼワインなんです。果実の中に青っぽさもあれば酸味もあって」とほほえむ長島さん。実際に飲んでみると、たしかにと頷く味。トマト味のロゼだからこそ、青いトマトや黄色いトマトの個性がより感じられるような組み合わせがユニークだった。
手羽唐揚げ✕アンバーワイン

ちょっと食べ応えのあるものをつまみたいときにちょうどいいのが「チューリップ唐揚げ」。一見、普通のチューリップ唐揚げだが、実は隠し味にカレー風味が仕込まれている。衣が薄めでカラッと揚がった唐揚げに、ほんのりスパイシーさが感じられ、誰もが笑顔になるおいしさだ。

チューリップ唐揚げには「これ!」というのが、ジョージアのアンバーワイン。「ジョージアのアンバーワインはクヴェヴリという甕で土の中に埋めて熟成させているので、土っぽいニュアンスがあります。通常のオレンジワインよりも強い個性があるので、カレー風味の揚げ物にぴったりです」と長島さん。アンバーワインは元々、白ワインなので揚げ物の油を切ってくれる役目もあって相性が良いとも教えてくれた。
長島さんの「私が恋した自然派ワイン」

長島さんの恋したワインは、インポーター時代に出会った一本。
「フランスの南西地方のシュナン・ブランです。フランス各地域のワインを扱う中で、伝統あるロワールではなく南西地方でシュナン・ブランからワインを造っていることに驚きました。実際に飲んでみると、シュナン・ブランらしい洋梨のニュアンスのほかに熟成感も感じられ、火打ち石のようなミネラル感やさわやかさ、香ばしさのある複雑さがありました。南西地方でこんなに素晴らしいシュナン・ブランがあるのかと思い、試飲会でもよくすすめていました。ぜひ一度、飲んでみてください」
世界のワインをバランスよくラインアップ

オーファセットではフランスやイタリアを中心に世界各国の自然派ワインをラインアップ。オーストリアや日本などもバランスよく用意されている。なかでもインポーター時代に扱っていたフランスは各地域の特徴が表現されたワインやそれを超えた秀逸な個性を持つものがセレクトされている。グラス20種類以上(1,000〜1,500円)、ボトル200種類以上(8,000〜30,000円)。
名店のおつまみもオンメニュー

オーファセットでは幡ケ谷「kasiki」のスパイスナッツ「LAMMAS」のチーズ盛り合わせなどメニューに名店のおつまみをオンメニュー。メニューは素材を活かしたシンプルなものが多いが、名店のメニューも柔軟に取り入れることで満足感が得られるようになっている。

15時のランチ終わりのタイミングから飲み始められるものうれしい。神田付近で早めに飲み始めたいというときに重宝する一軒として覚えておきたい。
※価格は税込



