【噂の新店】「Night Market」
店名を聞いただけで心が浮き立つレストランというのは、あるようで意外とないもの。この7月、大人好みの美食店が点在する“渋谷2丁目エリア(通称:シブニ)”にオープンした「Night Market」は、東南アジア各地に根づく“夜市文化”をコンセプトにした、ユニークなレストランだ。

一般的に自炊よりも外食の比重が高い台湾やタイ、シンガポールなどには地元の人々の食卓的な役割を持ちつつ、ツーリストの好奇心をもかきたてるナイトマーケットが数多くある。アジアを旅したことがある人であれば、その混沌や活気、熱を帯びた空気に混じるさまざまな食べ物のにおいを、すぐに思い出すことができるはず。週末ともなれば人気の店には長い行列ができ、中には“星付き屋台”もある。
アジアのたくましさや生命力を象徴するナイトマーケットの魅力を、東京で体験することができるとあれば、自然と気分が高揚するというものだ。
名だたる店で腕を磨いたシェフが掲げる“Mixed Asian”の新しい世界とは

緑と赤のビビッドな配色の暖簾が目を引く外観。ヤシの木の繊維を編んだラグが敷かれたエントランスの先には、バリ島のヴィラをイメージしたというエキゾチックな食空間が広がる。カウンターやソファ席のほかに特注の円卓も備え、バランスよく配されたアジアのアンティーク家具やグリーンが温かな雰囲気を生み出している。

オープンキッチンで調理にいそしむのは、西麻布「レフェルヴェソンス」で腕を磨き、外苑前「An Di」の立ち上げから料理長を務めた内藤千博シェフだ。「もともと東南アジアの料理やエネルギッシュな空気感が好きで、もし自分でやるのなら日本を含むアジア各地の料理をゆるやかにミックスさせたレストランを、という思いがずっとありました」と話す。

アラカルトをメインに、友人同士で賑やかにシェアできる大皿料理や締めのフォーにカオマンガイなど、伝統的な東南アジアの料理に日本の食材や調理法を取り入れるのもテーマのひとつ。フランス料理やモダン・べトナミーズで知見を深めた内藤シェフのアイディアが盛りこまれた料理は、大胆さと緻密さのバランス感に富んでおり、20種前後が並ぶアラカルトメニューを眺めながら“選ぶ”楽しさに夢中になる。

