【森脇慶子のココに注目】「ホルモン船 ホールちゃん」

2025年10月29日、「kaiwaii akasaka」内にリニューアルオープンした「ホルモン船 ホールちゃん」

新大久保で18年。コリアタウンの外れにありながら、数多の食通や芸能人たちに親しまれてきた韓国肉料理の名店「ホルモン船 ホールちゃん」。ホルモンをはじめ「ハラミの叩き」や「牛頬肉のポッサム」等々、その時々に仕入れた肉の部位で変わるさまざまな肉料理をコースで提供するこの人気店が移転。昨年10月29日、赤坂の新たなフードスポット「kaiwaii akasaka」にリニューアルオープンした。(ちなみに新大久保の旧店は「藁火焼き肉 くん炭」と店名を変え、ケジャンも含めたコースのみ・完全予約制の店として営業中)

お店で味わえる料理は、店主の出身地である韓国・釜山がテーマとなっている

「この店のテーマは、生まれ故郷の釜山の味。おでんやサンナッチ(手長ダコの踊り食い)などを、釜山の屋台の雰囲気で楽しんでほしいです」とご主人の鄭 寿福さん。

カウンターの天井を見上げると生マッコリ用のやかんが並んでいる

また、もう一つのおすすめは「カッパ肉」。カッパ肉とは、牛の前腹の皮と脂の間にあるスジのような赤身の筋肉層で、牛半頭を吊るした時、この部位が雨合羽のように見えることからその名があるとか。1頭から3kg未満しか取れない希少部位で、鄭さんによれば「韓国ではスグレ肉と言って、牛肉が高価だった昔は庶民の貴重なタンパク源となっていたんです」とのこと。

よく煮込んでクッパにして食べることが多かったそうで、ここでは、このカッパ肉を鍋やポッサムにアレンジ、オリジナルな味を楽しませてくれる。

「カッパ肉のポッサム」1,400円(注文は2人前から)

ポッサムといっても、いわゆるサンチュで包んで食べるタイプではなく、ここでは、玉ねぎやもやし、ほうれん草と共に蒸し焼きにしたカッパ肉を、野菜と共にピリ辛の甘酢タレにつけていただくというスタイル。だが、実はこのカッパ肉に技ありで、ただ下ゆでするだけでなく、一度藁焼きにしてから弱火で約2時間もゆでているのだ。

香ばしさと独特の食感が食欲をそそり、つい生マッコリに手がのびてしてまう

藁で炙ることで薫香がつき、そのまま煮込むよりもうまみのインパクトが格段に増幅。適度な歯応えとゼラチン質ならではのややもっちりした食感とが口中で相互するおいしさは独特。噛み締めるほどに肉肉しさが滲み出て、思わず生マッコリに手がのびること間違いなしだ。

「生マッコリ センタック」2,400円

生マッコリも、もちろん釜山産。加熱処理をしていないため、酵母と乳酸菌が生きたまま含まれたこのマッコリは、なんといってもフレッシュで爽やかな味が特徴だ。やかんやハンアリ(マッコリ壺)に入れて提供するスタイルも興をそそる。

「名物釜山おでん」1人前1,200円(写真は2人前)

おでんはだしにもこだわりを持ち、聞けば、牛骨とイリコのだしをベースにワタリガニや貝類などの海鮮類からとっただしを足し、さらには昆布と野菜でとっただしも加えるほどの手間のかけよう。さまざまなうまみが織りなす滋味深い味わいは、確かにだしだけでもゴクゴクと飲み干したくなるほど。ある意味、これがおでんの主役と言ってもいいかもしれない。

そのままでもグイグイいける飲みやすさだが、鄭さんおすすめの飲み方は日本酒の“だし割り”。「おでんのだしで割って飲むと、よりうまいですよ」とのこと。それもだしに徹底すればこそだろう。

気になるおでんのタネはお店のおまかせとなっている

肝心の具材の方は、韓国版さつま揚げのようなオムクをはじめ、大根、卵、カレトック(韓国のお餅)など。心なしかオムクはピリッと辛みがあるが、おでんの味全体に辛みは無し。だしがよく染みた具材の数々はほっとするおいしさだ。やかんと鍋をミックスしたような釜山のおでん鍋も愛嬌があって可愛い。

「肉チヂミ」1,800円

その他「肉チヂミ」1,800円こと「牛肉のジョン」(卵の付け焼き)や「骨付き豚カルビ」780円(2本)、「レバテキ」1,500円、「チャンジャ塩辛」580円等々、お酒の進むメニューが並ぶ。

「カンジャンセウ丼」2,800円

〆には「カンジャンセウ丼」をぜひ。カンジャンセウは、おなじみカンジャンケジャンのエビ版で、これをいくらや雲丹と共にご飯にのせた丼だ。

カンジャンセウ丼にはウニやイクラものり、海鮮好きなら大満足の〆の一品だ

醤油と白だしをベースに砂糖や7種類の漢方薬、柑橘類をたっぷり加えた「ホールちゃん」オリジナルのタレに2〜3日漬け込んだ生エビは、ぷりぷりの身と品のいい甘みのタレとの相性も上々。そこにウニの甘みやイクラの濃厚なうまみが合わさって、深みのある味わいを醸し出している。ちなみに、エビの仕込みの加減もあるためこちらは要予約。前もって一報入れておくと良いだろう。

お店は店主とマダムの笑顔に癒やされるアットホームな雰囲気

お店ではマダムがチマチョゴリ姿でサービス。料理上手なマダムの手料理と共に楽しみたい。

※価格はすべて税込

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https://www.instagram.com/tabelog/

文:森脇慶子、食べログマガジン編集部

撮影:外山温子