【和菓子と巡る、京都さんぽ】

四季折々の顔を見せる名所を訪れたり、その季節ならではの和菓子を食べて職人さんたちの声を聞いてみたり……。ガイドブックでは知り得ない京都に出会う旅にでかけてみませんか。

 

あなたの知らない京都について、京都在住の和菓子ライフデザイナー、小倉夢桜さんに案内していただきましょう。

其の八 心を届ける和菓子屋「船屋秋月」

四季折々の風景を五感で巡る、きぬかけの路さんぽ。

喧騒から離れて高雄方面へ。

清滝川

 

初夏から真夏にかけては新緑に癒やされ、真夏には木陰で清流・清滝川のせせらぎをBGMに、涼をとって過ごします。

 

そして秋。

言わずと知れた京都屈指の紅葉の名所は、真っ赤に色づき訪れる者を非現実的な世界へと誘います。

 

四季折々の風景を五感で感じることができるこの場所に、京都市街地から福王子交差点を経由して北へ、車で約30分ほどで行くことができます。

 

その福王子交差点から東へ向かえば、仁和寺、龍安寺、金閣寺へと続く、きぬかけの路が通っており、一年を通じて多くの観光客で賑わいます。

きぬかけの路

 

福王子交差点は、小さな交差点ですが京都を観光するのには欠かすことができません。

福王子交差点

甘いもので、ひとやすみ。

そこから西へすぐのところで営んでいるのが和菓子屋「船屋秋月」。

二代目の気さくなご主人が営むお店です。

「船屋秋月」外観

「船屋秋月」店内

 

心を込めて厳選した素材を選び、心を込めて作るお菓子。

そして、心のこもったおもてなし。

“心を届ける和菓子屋”を心がけて今日まで営んできました。

そのお店の代表銘菓が「わらしべ長者」です。

わらしべ長者

 

第22回全国菓子大博覧会で名誉総裁賞を受賞しているお菓子です。

昔話のわらしべ長者のようにと願いを込めて名付けられた縁起物のお菓子です。

大納言小豆を薄く伸ばした餅粟生地で包み、きな粉をまぶした昔懐かしい素朴な味。

老若男女を問わず幅広く召し上がってもらえるお菓子です。

 

その他に北野天満宮近くにも支店があることから販売されている「北野梅林」というお菓子があります。

北野梅林

 

白餡を梅肉餡で包んだほんのりと甘酸っぱいお菓子。

特に女性に好まれる味ではないでしょうか。

 

そして、一年を通じて販売されている様々な四季折々の上生菓子。

その中から代表的なお菓子を紹介いたします。

梅の雪

 

1月に入ると北野天満宮では、早咲きの梅の蕾がちらほらとほころびはじめます。

境内に咲きはじめている寒紅梅に雪が降り積もった情景を表現しています。

大寒となり、さらに厳しくなった寒さを心地よく感じさせてくれると共に、この寒さの先に待っている春を感じることができるお菓子です。

椿餅

 

2月になると食べたくなるのがこちらのお菓子。

植物の葉で包んだお菓子といえば、桜餅やかしわ餅がありますが、椿餅もその一つです。

餡を道明寺で包んで椿の葉で挟んだお菓子です。

一般的には、あまり馴染みのないお菓子ですが、「椿餅」は日本最古の餅菓子といわれています。

 

源氏物語『第三十四帖・若菜上』の中で、「椿い餅、梨、柑子やうのものども、様々に筥の蓋どもにとりまぜつつあるを、若きひとびと、そぼれとり食ふ」と若い人々が蹴鞠のあとの宴で食べる場面が登場します。

 

その時代には砂糖はなく、甘葛(あまづら)というツタの汁を煮詰めたものでほんのりと甘味をつけていたようです。

椿の名の由来は、厚葉木(あつばき)または艶葉木(つやばき)からきたとされています。

名の由来にもなった葉を使ったお菓子は、葉を愛でるお菓子でもあります。

青梅

 

春先に香しい匂いで私たちに春を感じさせてくれた梅の花。

その花が散り、5月下旬から6月上旬にかけて梅の実が青々とたわわに実ります。

その様子を外郎で表現したお菓子です。

虫の声

 

本格的な夏が過ぎ、過ごしやすくなってきた秋。

虫たちも本格的な秋の訪れに喜んでいるかのように月夜の下で美しい音色を聞かせてくれます。

 

月に見立てた外郎に秋の草。

そして、秋の虫を小豆で表現したお菓子です。

愛でているだけで澄んだ虫の音が聞えてきそうな素敵なお菓子です。

 

京菓子らしい無駄がない意匠のお菓子は、どれも情緒豊かで心が癒やされます。

 

そんなお菓子を作っていらっしゃるご主人も「昔は必要以上に手をかけてましたわ。伝わるかなと言う不安の表れで、一つ二つ余計に手を入れてしまうんです。最近ようやく、無駄なもんを削ぎ落したシンプルなお菓子を自信もって創れるようになってきたと思います。まだまだ勉強ですけどね!」とおっしゃいます。

 

ご主人と話をしながら、素晴らしいお菓子は技だけではなく、歳を重ねてきて様々な経験をして、人として成長することによって作られるものだと感じました。

取材・写真・文:小倉夢桜-Yume-