盛りだくさんの定食など創意工夫を重ねたメニューを提供

「もったいない定食」2,530円。メインの魚は、アジやサバなど、入荷状況に応じて数種から選ぶことができる。写真は+200円の地魚フライ

メニューの一番人気は、メインの魚料理と野菜の副菜7種、小鉢に、炊き込みご飯とお味噌汁、ドリンクという盛りだくさんな日替わり定食「もったいない定食」に、デザートの「三浦プリン」をつけた「もったいない満喫セット」2,890円。

この日のメニューは、佐島でとれたサバのカレーフライと、副菜はスズキのハーブマリネ、フレッシュミントを使用したキャロットラペ、レンコンの海苔きんぴら、そら豆の塩ゆで、素揚げしたさつまいもの塩バター和え、放牧豚のコロッケ、キャベツとオーガニックパクチーのナムル。やりいかの煮付けの小鉢に、放牧豚とひじきの炊き込みご飯といろいろきのこの味噌汁。見た目も華やかで、どれも丁寧に作られたことがわかる料理が並ぶ。

野菜の副菜7種

料理はすべて化学調味料不使用。海とできるだけ変わらない塩を造るために「天地返し」という技法で作られた山口県・油谷島産の「100ZEN海の塩」など、自然の恵みを生かした調味料を使用。素材本来の味を生かしつつ、体に優しく満足感の高い味わいとなっている。
また、メニューにはそれぞれ独自に定めたフードロス削減率が表示されており「もったいない定食」「もったいない満喫セット」はフードロス削減率70〜90%!

「三浦プリン」単品550円

「三浦プリン」は、放牧牛のミルクと平飼い卵、きび糖に、塩こうじをブレンド。濃厚な硬めプリンに、ほろ苦いカラメルソースを合わせている。
写真のプレーンとともに、夏は枝豆、秋はカボチャ、冬はさつまいもといちごなど、季節ごとの規格外・余剰の野菜や果物を使ったフレーバーも用意されている。

「日替わりカレー」1,980円のフードロス削減率は40〜60%。写真はチキンカレー。入荷状況により放牧豚を使用することも

もったいない定食と同じ7種の副菜に、カレーを組み合わせた「日替わりカレー」も、規格外食材を上手に生かした逸品。
チキンカレーには、卵を産まなくなった「親鳥」の肉を使用。通常、若鶏に比べて肉質が硬いため一般の市場には流通しないが、6時間かけてじっくり煮込むことで、やわらかく旨みたっぷりに。辛さは控えめながら7種のスパイスによる奥深さもあり、味わいは本格派だ。

「フルーツソーダ」660円

季節ごとの果物を使ったフルーツソーダも、幅広い世代に人気。この日の果物はいちご。近隣のいちご農家で、いちご狩りの季節が終わり処分されてしまう小さく形が不揃いのいちごや、熟れすぎたいちごをシロップにしてソーダ割りに。ソーダの爽やかな刺激とともに、いちごの甘酸っぱい風味が口いっぱいに広がる。

海辺の雰囲気を感じられる空間で贅沢ランチを

店内は柱や梁に古民家の趣を残しつつ、吹き抜けの天井など開放感があってくつろげる雰囲気

全20席ある現在の場所に移転してからは、子ども連れのファミリーや団体客も訪れるようになり、食材の仕入れ量もアップしているという。
副菜を残さず食べられたらガチャポンを回してご褒美がもらえるという、食育を意識したお子様向けメニューも好評だ。

すぐ近くの北下浦漁港で余っていた漁具の「ブイ」を再利用したライトもいい雰囲気
2階のテラス席からは、金田湾が見える
店内の一角では料理に使用している「100ZEN海の塩」のほか、未利用魚を活用した出汁醤油なども販売
これまで喫茶店「御自愛喫茶」として営業していた2階も一体となり、6月からは全席で食事・喫茶利用が可能に

生産者、お店、消費者の誰もが無理することなく、フードロス削減のサイクルを実現させている「もったいない食堂」。今後についても、そのスタイルは変えないと西村さん。
「取引する生産者さんの範囲が最近では車で30分圏内まで広がっていますが、今後店舗を増やすなどは考えていません。それよりも今できることをより良くしていけたら。環境問題についても、そんなに躍起になって考えることはないと思っているんです。うちの店も毎日といわず2、3カ月に一度、三浦まで足をのばして、三浦の食材で作った料理を食べるちょっとした贅沢ランチとして利用していただければいいのかなと。それだけで、生産者さんに直接エネルギーとして届きますから」

義務感ではなく、時々おいしいランチを堪能するだけ。それが誰かの力になる。そんな選択なら、誰でも気軽に続けていけそうだ。

※価格はすべて税込

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文:當間優子、食べログマガジン編集部 撮影:ジェイムス・オザワ