〈「食」で社会貢献〉

2030年までの国際目標「SDGs」(=Sustainable Development Goals〈持続可能な開発目標〉の略)など、より良い世界を目指す取り組みに関心が高まっている昨今。何をすればいいのかわからない……という人は、まずお店選びから意識してみては? この連載では「食」を通じての社会貢献など、みんなが笑顔になれる取り組みをしているお店をご紹介。

今回訪れたのは、NYに11店舗を展開し、2023年6⽉、東京・神⽥錦町に⽇本1号店をオープンした「think coffee」。
表通りから少し入った場所にあり、都心にありながらゆったりとした時間を過ごせるテラス付きのカフェだ。

“誰もが心地よく”が最優先のカフェ

タイル張りのレトロな外観と、2階に掲げられたレインボーフラッグが目印

2006年にNYのグリニッジ・ビレッジで誕生した「think coffee」は、弁護⼠をしていたジェイソン・シャーさんが、ニューヨーク⼤学の近くに第1号店を開店。世界一多様なNYの人々に支持され、現在ではマンハッタンで10店舗、ブルックリンで1店舗を展開している。
「おいしいコーヒーが世界を良くする」をコンセプトに、パートナーシップを組んだコーヒー農園から調達した豆のみで入れるコーヒーをはじめ、産地や生産者にこだわったメニューを提供。他にも、地球に優しいカップやコンポストの活用など、サステナブル(持続可能性)を考慮した店作りで誰にとっても居心地のいい場所を提供している。

CEOの⽥瀬和夫さん

「私は以前国連に勤めていて15年ほどNYに住んでいたんですが、think coffeeはアジア人でも黒人でも、あるいはゲイでもレズビアンでも、どんな人でも歓迎されていると感じられる空間だったんです」
と話すのは、Think Coffee Japanの代表で、日本におけるSDGsの第一人者でもある⽥瀬和夫さん。
think coffeeのDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン=どんな⼈でも歓迎され、居場所を⾒つけられる)が実現された空間に惚れ込み、ぜひ⽇本でも作りたいとシャーさんに声をかけ、⽇本1号店を東京・神⽥にオープンすることとなった。
「単にいろんな人がいていいということじゃなく、一人ひとりがちゃんと受け入れられている感じ。英語で言うと“インクルージョン”がとても重要で、私は好きだったんです。ですから、日本のthink coffeeでも環境に優しい取り組みをいろいろとやっていますが、一番の商品はインクルージョンだと思っています」

黒板のメニューボードや壁のアートなど、NYのカフェを思わせる雰囲気

テラス席もある1階と2階の2フロアからなる店内は、NY風のスタイリッシュな空間。全体にスペースを広めにとってあり、解放的でくつろげる雰囲気となっている。

さらに、誰もが心地よく過ごせて好きなだけいていいという評判がSNSや口コミで拡大。公園や観光スポット近くでもないオフィス街の裏通り沿いの立地にもかかわらず、ベビーカーを押すママやペット連れの人、外国人グループなど、多様な人々がひっきりなしに訪れ、思い思いにくつろぐ姿が印象的だ。休日は満席になることも多いという。

カラフルなアートには取引しているコーヒー豆の生産地と、取り組んでいる社会貢献プロジェクトがデザインされている

壁に飾られたアートに目を向けると「CLEAN WATER PROJECT」などの文字が。
think coffeeでは、単に適正な価格でコーヒー豆を購入するだけでなく、農園や地域ごとに社会貢献プロジェクトを実施。具体的には、家を建てる支援(ニカラグアの生産者に安全な住居を提供)、きれいな水の供給(エチオピアの農村に浄水設備を設置)、労働者の生活向上支援(コロンビアのコーヒー生産者により良い労働条件を提供)などだ。また、有機農法や森林再生のサポートを行い、環境負荷を減らす取り組みも実施している。
カフェを利用する人たちも、こうしたアートから自然と気付きを得られる。

コーヒー豆は京都産の焙煎機で独自に焙煎。その隣には、使用した水の98%を循環し排水を減らす、人にも地球にも優しい手洗いスタンドも
テラスから吹き抜けになっている2階はソファ席もあり、広々とした居心地のいい空間