おしゃれフードトレンドを追え! Vol.20

飲み会後の深夜、彼女たちが“蕎麦で締める”理由

夜型が多いファッション業界人が

ヘルシー志向に目覚めたら

 

ファッション業界人の夜は長い。ファッション誌編集者は、締め切り前は終電後遅くまで、飲み会は22時スタート、レセプションパーティが終わるのも23時過ぎ。こんな時間に開いている“締め用”のご飯屋さんといったら、ラーメン店しかない。私も若い頃は西麻布の朝まで営業のラーメン屋に仲間と行ったものだ。しかし30代半ばも過ぎると深夜のラーメンなんてもってのほか! 脂肪に糖質、そして塩分が翌日のコンディションを確実に悪化させるので正直キツい。若い頃は深夜のラーメンが当たり前だった編集者も、30代後半から40代になるとグルテンフリーを好み、酸化油が脂肪がと大騒ぎ。そんな彼女たちが今、深夜にラーメンを食する訳がないのだ。そんななか、最近周囲のおしゃれ編集者たちが通っているのが蕎麦屋。しかも、朝3時や4時という超深夜まで営業している蕎麦居酒屋が重宝がられている。

 

何かのイベント帰りに蕎麦屋に寄る、というのが定番コースだが、「パーティ帰りになぜまたご飯?」と思われる方も多いはず。ファッション業界のレセプションパーティでは「お腹いっぱい食べるのはNG」という暗黙のルールがあり、せいぜいシャンパンと軽いフィンガーフードを2~3個に留めておくのが正しい楽しみ方。立食パーティで豪華食材を狙って終始テーブルに張り付いていたら「あの人ずっと食べてない!?」と後ろ指をさされるか、「えっ、あの人誰?」と部外者扱いされるか。いずれにしてもとても恥ずかしいのだ。というわけでパーティ後にはお酒が入り酔っていても、お腹はペコペコ。すぐに蕎麦屋に駆け込んでツルツル麺を食べたい気分。ついでにゆったり焼酎でも飲んで喋ってゆっくりしたいというわけだ。

 

一般的に、蕎麦は昼時に食べるイメージだろう。有名店は夕方早い時間帯に店を閉めるし、さっと食べて潔く帰る江戸っ子的スピード感が求められる。ダラダラ話しながら長々と食べていたらきっと大将か女将さんに煙たがられる。ところが超深夜対応の店は、ゆっくり数時間いても大丈夫。蕎麦はもちろん美味しいが、お酒とつまみ(板わさ、出汁巻、蕎麦味噌など)も夜更けの体に優しい。

深夜に食べてもギルトフリー!夜中に行きたい“締め蕎麦”はここ

1. 落ち着いた大人の空間で食べる自家製粉麺:青山 川上庵

出典:LupinLupinさん

深夜蕎麦といったらまずはおしゃれ系の人たちが集まる青山エリアにぴったりの、シックでモダンな佇まいの川上庵。表参道から南青山方面の裏通りにあり、奥まった小道の隠れ家感がよい。朝4:30まで営業!という業界人対応なのもよい。店内奥にはバーカウンター、アンティーク風の家具と、無機質なコンクリート床や間接照明の組み合わせが和モダンでスタイリッシュ。石臼で自家製粉した粗挽き二八蕎麦で細身に切られた麵と辛めのつゆとの相性もいい。信州の地酒やワインを楽しむのも大人の特権だ。軽井沢生まれ、という背景もちょっとオシャレだ。

2. 名物はカレーうどんだが深夜は蕎麦を!:しまだ

出典:ナミアゲハさん

出典:glpease615さん

 

若いおしゃれ男女が表参道界隈のパーティ帰りに寄るところといったら、しまだ。かつて近くにあったファッション業界御用達クラブ「ル バロン ド パリ」でのイベント帰りには、顔なじみがみんな通っていたうどん・蕎麦の店だ。2階のお座敷は大人数でも座れて、大衆居酒屋的な雰囲気に心和む。名物のカレーうどんが絶品だが、深夜には蕎麦をオススメしたい。人気の逸品、小鯵の南蛮漬けをオーダーするのも忘れずに。おばあちゃんの家か田舎の居酒屋で飲んでいる気分になれるのに、実はいつもの表参道という安心感が何度もリピートしてしまう理由だ。深夜1:45までオープン!

3. 個室でとことんゆったり、季節メニューも人気:松玄 恵比寿店

深夜0時までと早めの閉店だが、外せないのが恵比寿の松玄 恵比寿店。個室が豊富なのでお忍びにも、内緒話にもうってつけだ。季節限定メニューもあり、定期的に通いたくなる。

4.「深夜にへぎそば」なら中目黒へ:へぎそば 匠 中目黒店

写真:お店から

 

コシの強いツルッツル麺が無性に食べたくなった時にはへぎそば 匠へ。へぎそばとは新潟・魚沼地方発祥の、布海苔をつなぎに使用した蕎麦のこと。弾力がありコシの強い麺が特徴でその食感はなめらか。茹で上げた蕎麦は一口大に丸めて盛り付けられるので、一口だけシェアして食べることができるのも女子にはうれしい。こちらはラストオーダーが3:30で4:00閉店。

 

夜遅くにお腹が空いた時、「あそこなら開いてるよ!」と本格的な蕎麦屋を紹介できるのって随分大人っぽいしカッコいい。ヘルシーな“締め蕎麦”で翌日は体軽い。20代の頃は男子といっしょに深夜にラーメンをすすっていたが、年齢を重ねたことで自らの体や食べ物への意識も大きく変わった。そんな女子たちに愛される深夜メシ(お酒のお供)が、“締め蕎麦”なのだ。