目次
食欲が落ちる暑〜い夏でも、つるつるっと啜りたくなるのがそうめん。そうめんの原料は小麦粉、食塩、水で、うどんやひやむぎと同じだが、練った生地を帯状に切って作るうどんやひやむぎに対して、手延べそうめんは生地を細く長く引き延ばして作る。
おいしいそうめんを広めたい!という店主の熱い思いから生まれたそうめん専門店には、創作そうめんが勢ぞろい。そばやうどん、ラーメンに比べて、そうめんは麺自体の主張が強すぎない分、意外にも合わせる具材を選ばないという。今日の気分はさっぱり系? それともガッツリ系?
そうめん専門店の先駆け。 徳島産の半田そうめんを使ったメニューは400種以上!
東中野「阿波や壱兆」
2018年7月でオープン9周年を迎えた「阿波や壱兆」。徳島出身の女将、田中嘉織(かおり)さんが、実家近くの名産品である半田そうめんを使って、多彩な創作そうめんを出している。半田そうめんは、ひやむぎくらいの太さがあるが、製法はれっきとした手延べそうめん。田中さんいわく、「徳島県美馬郡つるぎ町半田という、とても狭い地区で作られています。300年の歴史があって、40軒弱の製麺所があるんですよ」
気軽にのれんをくぐれる居酒屋風の店。11:00〜14:00は禁煙タイム。東中野駅から1分もかからない好立地。
この半田そうめん、田中さんの実家がある県南では、ぶっかけで食べることが多い。東京のつけめんに憧れていた田中さんだったが、上京してから「実家のそうめんのほうがおいしい」と再認識。「阿波や壱兆」では、干ししいたけやかつおぶしでとるお母様のレシピのだしに、徳島産の薄口醤油を合わせたつゆを使っている。「夏も冬もぶっかけ。おつゆごとゴクゴク飲むと生き返ります」と笑う。
「阿波や壱兆」のメニューは420〜430種類。日・週・季節などによって替わり、毎日通っても違うそうめんに出合える。ブログで紹介してきた創作そうめんは800種類以上あり、田中さんは昨年『一年中そうめん』というレシピ本も出した。店は24時間営業(8月1日より、11時〜翌9時に変更)。さまざまな時間帯に訪れる常連客で、小さな店のカウンターはいつも賑わっている。
徳島名産のすだちと半田そうめんの絶妙なハーモニー
「すだちそうめん」880円(温・冷、ハーフ680円) ※写真は冷
徳島名産のすだちを使ったそうめんを、と考案した一品。すだちを薄くスライスすることで、皮の苦みや種の食感が気にならず、まるごとそうめんと一緒に食べられる。「すだちは皮も種もアンチエイジングにいいらしいですよ(笑)」と田中さん。すだちはハウスもの、露地もの、貯蔵ものと一年中手に入るため、通年のメニューになっている。
冷たいものを飲みすぎてしまう夏こそ、胃にやさしい温めんを
「辛味噌壱兆温めん」900円(温のみ、ハーフ700円)
甘辛く煮た豚バラ肉、青ネギ、もやしをのせた温かいそうめんに、自家製の辛味噌と柚子のすりおろしを混ぜて食べる「辛味噌壱兆温めん」。定番メニューの「阿波や壱兆温めん」に、田中さんをはじめ激辛党の女子スタッフたちが、コチュジャンやラー油を足して食べていたことからメニューに登場した。辛みが増してもしょっぱくならないように、辛味噌の塩分は抑えめ。辛さは辛味噌を溶く量で調節を。
仕事帰りは一品料理をつまみに飲んで、締めにそうめんが正解
「天ぷら」350円、「生柚子はちみつサワー」600円
徳島で言うところの「天ぷら」は、白身魚のすり身を揚げたもの。食感がもちもちしてやわらかく、辛子醤油がよく合う。徳島ではお好み焼きや焼きそばにも天ぷらを入れるのだとか。おすすめの一杯は「生柚子はちみつサワー」で、柚子はちみつは田中さんのお母様のお手製。「手搾りの柚子とはちみつをブレンドして送ってもらっています。柚子の甘皮部分を微妙に調整して搾るので、エグみや苦みがないんですよ」
代官山の和食店が手がけるそうめん専門店。小豆島のそうめんを使った創作料理をシックな空間で楽しんで
恵比寿「そそそ」
店内はモノトーンを基調にしたシックな雰囲気。代官山の和食レストラン「楚々」のオーナーが、小豆島のそうめん「島の光」のおいしさに感銘を受け、姉妹店として2018年1月に「そそそ」をオープンした。「楚々」のそうめん店なのでこの名を付けたという。「島の光」は手延べ、天日干しで手間をかけて作られ、同じ小豆島産のごま油を練り込むのが特徴。店長の伊藤雅之さんは、「ごま油を使うと粉っぽさが抜けて、喉ごしがよくなるんです」と説明する。
1階はカウンター、2階はゆったりしたテーブル席。恵比寿駅から徒歩3分のロケーションも便利。
女性オーナーが手がける店らしく、メニューに並ぶ創作そうめんはカラフルで盛り付けも美しい。サラダ系、ねばとろ系、豚肉のソーキがのった沖縄風など、写真を眺めながら迷う時間も楽しい。大葉ジェノベーゼそうめん、季節替わりそうめんなど、「楚々」で人気があるメニューの一部も引き継がれている。また、全メニューがプラス250円でグルテンフリーめん(「島の光」ではない)へ変更可能だ。
メレンゲ状の卵白が他にはない食感!「ふわふわ釜玉そうめん」
「ふわふわ釜玉そうめん」650円
温かいそうめんに、泡立てた卵白、卵黄、かつおぶし、青ネギがのった店の看板メニュー。添えられただし醤油をまわしかけてよく混ぜると、メレンゲ状の卵白がそうめんに絡んで、ふんわりしたやさしい口当たりを楽しめる。だし醤油は同じ小豆島の金両醤油製。「旨みが強く、醤油くささがない、おいしいだし醤油です」と伊藤さん。
そうめんを使った一品料理とサワーで、ちょっと一杯
「納豆高菜そうめん春巻き」650円、「クラマトサワー」600円
「そそそ」には、そうめんを使った一品料理も揃っている。「納豆高菜そうめん春巻き」は文字通り、納豆、高菜、そうめんを包んだ揚げ春巻き。あっさりした食感のそうめんに、納豆の粘りや高菜のコクがよく合い、お酒のつまみにぴったりだ。ハマグリエキスと調味料が入ったトマトジュースをサワーで割った「クラマトサワー」をお供に楽しみたい。
そうめんを使った一品料理は、ほかに「パリパリそうめんサラダ」800円、「肉みそそうめんレタス包み」650円など。また、小豆島をイメージした「オリーブ入りコロッケ」750円も伊藤さんのおすすめ。
東京都渋谷区恵比寿西1-4-1
03-6416-9284
平日:ランチ11:30〜15:00、ディナー17:00〜24:00(L.O23:00)
金土祝前日:ランチ11:30~15:00、ディナー17:00〜翌4:00
不定休
※全席禁煙
熟成させた「揖保乃糸」の、独特の粘り・コシ・食感に感激!
「そうめん屋はやし」
兵庫県の高級そうめんといえばおなじみの「揖保乃糸」。スーパーなどに並ぶ「揖保乃糸」は赤帯で、その年に作ったものが販売されているが、「そうめん屋はやし」で使うのはひね物(古物)と呼ばれる熟成麺。店長の西島正和さんは、「揖保乃糸を1年以上寝かせると、グルテンの旨みが際立ち、粘りやコシが出て食感がよくなります」と話す。
「揖保乃糸」には品質によっていくつかのランクがあり、店では一部のメニューに黒帯も使用。黒帯は赤帯よりも格段に細い麺で、限られた職人しか作れない希少品だ。京都の料亭などでも使われている麺だそうで、店では黒帯のなかでもさらに価値の高いひね物を使っている。
ランチタイムには小丼のメニューもある。寝かせ玄米、明太高菜丼、ネギトロ丼など、お腹具合に合わせてオーダーを。
「そうめん屋はやし」のオーナーは兵庫県ゆかりの人。故郷が誇る「揖保乃糸」を外食として世界に広めたいとの思いから、大井町に店を開いて3年になる。メニューを考案している西島さんいわく、「そうめんは主張しすぎない麺だから、うどんやそばより創作がしやすい。どんな具材とも合います。オリーブオイルと塩だけでもおいしいですよ。上質のそうめんを、いろいろな風味のつゆで味わっていただきたいですね」。
3種のシンプルなめんつゆで、黒帯のひね物を心ゆくまで味わう
「だしつけそうめん 3種のめんつゆ 黒帯」1,000円
赤帯と比べるとその細さが段違いの黒帯。手延べで手間暇かけて作られる「揖保乃糸」のなかでも、黒帯の繊細な喉ごし、熟成させたひね物の旨みを存分に楽しめる一品だ。めんつゆは、かつおぶしや干ししいたけでとっただしに醤油とみりんを加えた基本のつゆ、煎りごまを丁寧にすり鉢ですってだしで割った香り高いつゆ、だしを白醤油とみりんで割った塩つゆの3種が添えられ、最後まで飽きずに味わえる。
途中でラー油を加えて味の変化を楽しむ「豆乳ぶっかけ」
「温玉豆乳ぶっかけ」750円
豆乳ベースのめんつゆのコク、温泉玉子のとろみが、コシのあるひね物のそうめんによく絡んで、食べごたえのある一皿に。途中でラー油をまわしかけて味を変え、後半はピリッとした辛さを楽しむのもいい。「揖保乃糸」赤帯のひね物を使用。「温玉豆乳チーズぶっかけ」850円、「温玉豆乳納豆ぶっかけ」850円のアレンジもあり、いずれも女性に人気があるそう。
「日本酒とそうめんを楽しんでほしい」と各地の銘酒を揃えている。
※表示金額はすべて税別
取材・文:根本聡子(Sawa-Sawa)
写真:海老名進