若手に伝えたい、身を切る努力の大切さ

本田:今後、こういうふうにしてみたいということはあるの。

沼尾:まずはこの店をしっかり盛り上げたいですね。今の自分があるのは親方のおかげなので、恩返しをしたいと思っています。売り上げをマイナスからプラスにできるようにしたい。自分にとっては、今が一番の山だと思っています。この山を乗り越えたら、多分、怖いものないんじゃないかな。

本田:一番課題なのがスタッフを育てることだね。これまではあまりやってこなかったでしょ。

沼尾:もちろん、そこが大事だと思っています。いつもどうやったら育つんだろうって考えています。僕らは勝手に育ったじゃないですか。だから、育てるにはどうやればいいんだろうかと。僕だけじゃなく、親方や各店舗の店長、皆が思っているんじゃないでしょうか。無理やりやらせても成長しない。結局、自分で動かないと駄目なんだと思います。自分たちがやってきたんだから、お前もできるだろうみたいなのは、今は通用しません。できて当たり前で、そこからもっと究めて、技術を高めていかないといけないのに、そういう意識が低いのかもしれません。

本田:今の社会の流れでさ、8時間以上働いちゃいけないみたいなのがあるじゃない。それでうまくやるとしたら、どうやればいいんだろう。

沼尾:難しいですね。僕は人よりうまくなりたくて、勝手に休みの日も働いたりしていたんですが、今の若い人たちを見てると、決まった時間でしか働かないスタイルが多い。今、法律で休憩は休憩だから、ちゃんと休憩させなきゃいけないとなっています。だから休憩時間に電話番はさせられないんです。電話対応はできないといけないと思うんですけど、今は、昔とは感覚が少し違うかもしれないです。それでも、そういう若い人たちをうまく使わないといけない時代になってきた。

本田:そういう若手を育てるのも新しいチャレンジだよね。

沼尾:本当に大変です。逆に、若い人たちを見ていると、このままでいて怖くないのかなと思うこともあります。何人か、ちゃんと考えて修業しているなという若手もいます。彼らはたいてい親が寿司店をやっていて、僕と同じで料理が身近にある環境で育ってきています。そういう人は強いなとは思います。

本田:これから頑張る若い人たちにアドバイスはある?

沼尾:もっと焦った方がいいよと伝えたいですね。人生はあっという間だから。若いうちにもっと無理した方がいいと思うんです。一人前になりたいなら、しっかり身を削った方がいい。どこかで誰よりも努力しないといけない。そして、そういった努力は陰でやった方がいいと思います。アピールするためではなくて。

本田:自分のために努力することが大切。大事に育ててあげられるといいね。この店でちゃんと数字を出せるようになったら、どんな感じでやりたいの。

沼尾:30歳になったので、もっとしっかりバシバシやらないといけないと思っています。本当に20代、あっという間だったんで。30代もモタモタしてたら、すぐ40になってしまう。将来の希望としては、弟と一緒にやりたいなと漠然と思っています。弟と仲がいいんですよ。

本田:これからも楽しみにしてます。

沼尾:がんばります。やるだけなんで。

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取材:本田直之、食べログマガジン
写真:長尾真志
文:小田中雅子