10位:ちょうどいい、がうれしい「ハーフコース」

「太いち」 撮影:佐藤潮

人気店になればなるほど、どんなジャンルでもおまかせコース1本のお店が多くなります。そして、人気とともにお値段も上がり、その値段に見合うよう、お料理の量も増えていく、という循環がここ数年の流れでした。

悲しいことに、歳とともに食べられる量が減っていくのが最近の悩みだったのですが、今年に入って少なめのコースの後、食べたい人はアラカルトから追加するお店が増えてきました!

6月に「いち太」から店名を新たにスタートした日本料理の外苑前「太いち」。以前は10品ほど出していたコースの料理を5品に絞り、代わりにアラカルトが増えました。アラカルトの一番人気は隠し味に豆腐を入れてふんわりとした「ハンバーグ」。

「白金 芯」 写真:お店から

同じく6月には「創和堂」の料理長が独立して話題になった「白金 芯」が白金高輪にオープン。「季節のお任せ5品」をいただいた後はアラカルトタイム。5品でも十分満足できるボリュームですが、お腹に余裕があれば、、好きに選べるアラカルトメニューも400円から用意されています。

「P-MATTO」 写真:お店から

7月にはあの「ダルマット」が、「P-MATTO(プリマット)」と名前も新たにリニューアルオープンしました。リニューアルに際し、シェフおまかせのおつまみ(フィンガーフード等6品程度)で構成される「フレキシーコース」6,600円の後に別途アラカルトで前菜、パスタ、メインの中からオーダーするスタイルに変わりました。アラカルトでは「ダルマット」のスペシャリテだった「桃の冷製パスタ」も1,650円でオーダー可能です。

ちなみに、ハーフコース+アラカルトのお店が増えるのは本当にありがたいのですが、どのお店もアラカルトが魅力的過ぎて、結果、コースより食べ過ぎてしまう悩みが加わりました。

9位:予約争奪戦「ちいかわグルメ」

withupdesignworx
「ちいかわラーメン 豚」   出典:withupdesignworxさん

昨年から池袋の「ちいかわレストラン」は人気でしたが、今年になってちいかわグルメが加速。

8月オープンの渋谷「ちいかわラーメン 豚」は3月オープンの名古屋店に続く2店舗目。抽選になかなか当たらないという声がSNSに溢れる人気っぷり。

「ちいかわベーカリー」 ©nagano / chiikawa committee

10月に原宿にオープンした「ちいかわベーカリー」は食べログマガジンでも取材しましたが、とにかくかわいい! それぞれのキャラクターのパンがかわいいのはもちろん、併設のショップで売っているさまざまな限定グッズがたまらなく愛おしくって、課金が止まりません! こちらも予約は争奪戦です。

「ちいかわレストラン」 ©nagano / chiikawa committee

11月には名古屋、大阪で「ちいかわレストラン」が期間限定オープン。しばらくちいかわグルメに翻弄される日々は続きそうです。

8位:異ジャンル参入「グルメ系とんかつ」

「とんかつ ここまでやるか。」 撮影:佐藤潮

店舗数はそこまで多くありませんが、これから増えてきそうな注目ジャンルとして「グルメ系とんかつ」をランクイン。訪日外国人の好きな料理ジャンルで「とんかつ」が人気になっているのもあり、今後も高級とんかつは増えそうな勢いです。

3月には予約困難イタリアンの「malca」シェフの北野司氏プロデュース「とんかつ ここまでやるか。」が外苑前にオープン。食べログマガジンでも取材しましたが、ソースを温かくするなど、独自のこだわりが光ります。

「とんかつ じゅんちゃん」 写真:お店から

高級日本料理の「くろぎ」黒木純氏が監修したのはランチ限定営業のとんかつ専門店「とんかつ じゅんちゃん」。9月に外苑前にオープンすると、フーディの間でたちまち話題に。卵黄が入ったカレーで味変できるのも好評です。

「Fry家」 撮影:佐藤潮

昨年11月に紹介した高田馬場「Fry家」もユニークです。プロデュースしたのは伝説の料理人・斎藤元志郎氏。「旬香亭」「ポンチ軒」「フリッツ」など洋食や揚げ物の名店を世に送り出してきた名人による、揚げ物愛にあふれたとんかつは必食です!

7位:「イタリアン」はやっぱりアラカルトで

「TACUBO 白金台」 撮影:八木竜馬

イタリアン界のトピックと言えば「TACUBO 白金台」のオープン。代官山店はコースですが、こちらはアラカルト! 好きなものを好きに食べられるとあって、11月のオープン以来グルメな大人たちから大絶賛。海外のようなドラマティックな店内は、デートの成功率を高める事間違いなしです。

「tens.」 撮影:松園多聞

同じく11月にTACUBO出身の「malca」北野シェフがオープンした「tens. 」もアラカルトのお店。深夜2時までの営業なので、残業の後に「malca」の名物パスタ「キャビアの冷製カッペリーニ」と泡で英気を養うのもおすすめ。外苑前の駅からすぐという立地も使い勝手が抜群です。どちらも既に年内の予約は埋まり気味で、オープン早々大ブレイク!

「impronte」 撮影:外山温子

今年掲載したイタリアンでは阿佐谷「impronte」、恵比寿「Uno Staio」、神楽坂「scaglia」、外苑前「Rossi」、代々木上原「Mokita」、渋谷「ess.」などもアラカルトOK。極上の肉料理が楽しめる日本橋「ムレーナ」も遅い時間はアラカルトでの提供を検討しているとか。

コースのお店が増えたからこそ、自由に食べられるアラカルトは、年を重ねて少食になった世代にも、モリモリ食べたい世代にもウケています。

6位:巨匠が輝く「高級中国料理」

「Ginza 脇屋」 撮影:大谷次郎

中国料理界のトピックはレジェンドシェフたちの活躍ではないでしょうか。「Ginza 脇屋」はあのアイアンシェフ、脇屋友詞氏が昨年12月に料理人歴50年を迎えて新たに始動したお店。8席全てがカウンターのシェフズテーブルで、脇屋シェフの料理を目の前で見ることができるとあって「料理の鉄人」を見ていた世代としては感激です。

「KOBAYASHI」 撮影:松園多聞

8月に六本木にオープンした「KOBAYASHI」は「御田町 桃の木」の小林武志氏が独立から約20年の時を経て、とうとう自身の名を冠した店。シグネチャーディッシュの一つである「干し貝柱の炒飯」は熟練の料理人にしか作れない、シンプルでありながら深い味わいで悶絶しました。

「虎景軒」 撮影:佐藤潮

「ジャヌ東京」直営のコンテンポラリーチャイニーズ「虎景軒」は中国料理「JASMINEグループ」の総料理長を務めた山口祐介氏が中国から帰国してシェフに就任したとあって、中国料理ラバーから熱視線を集めたお店。各地方の料理がずらりと並び、食べ慣れた食通でも「こんな料理があったのか!」と驚かされます。

5位:素材が命の「シンプルクレープ」

お肉モンスター
「繁邦」   出典:お肉モンスターさん

バターとお砂糖やシロップだけのシンプルなクレープが今年の「It Sweets」。2月にオープンした恵比寿の「繁邦」はオープン早々「クレープがおいしい!」と行列店に。10月オープンの「BLOOM.by SWELL COFFEE ROASTERS」でも「繁邦」プロデュースのクレープがいただけます。

「moderato on the green」 撮影:大谷次郎

6月に用賀にオープンした「moderato on the green」は料理研究家の植松良枝さんプロデュースとあってセンス抜群! 生地を焼く時には無塩バター、焼き上げてからのせるのは有塩バター、とバターを使い分けていたり、随所にこだわりが光ります。

さきぷれっそ
「ØC tokyo」   出典:さきぷれっそさん

笹塚に4月にオープンした「ØC tokyo」はコペンハーゲン仕込みのクレープを提供するクレープカフェ。12月20日には2号店が吉祥寺にオープンします。

じつは流行中! 生地を味わう、シンプルなクレープ10選』の記事も大ヒット!

4位:「ドーナツ」人気衰えず

「we♡donut 自由が丘」 写真:お店から

2023の10位、2022の1位で取り上げた「ドーナツ」の勢いがまだまだ止まりません。今年は「生ドーナツ」と呼ばれる中にクリームが入ったドーナツがSNSで大人気。

手で割ると中からクリームが出てくるドーナツ、何個も重なったドーナツ、油で揚げているドーナツなど、生ドーナツ関連の動画をSNSでよく見かけました。

「POTERI BAKERY -TOKYO-」 写真:お店から

10月にはパティシエが本気で作る生ドーナツ専門店「POTERI BAKERY TOKYO」が三軒茶屋にオープンしました。

「STANDARD DONUTS」 写真:お店から

関西の生ドーナツ熱も高く、神戸「.donut factory」、大阪「STANDARD DONUTS」などがオープン。「we♡donut 自由が丘」や中目黒「BONTEMPS」も大阪が先でした。

また、今年も「AMAM DACOTAN」系列の快進撃が止まりません。都内では「dacō お茶の水」「dacō 中目黒」「dacō? 駒沢」「dacō? 神楽坂」の4店舗がオープン。

「LOCO」 撮影:ジェイムス・オザワ

一方で素朴で昔ながらのシンプル系やグレーズをかけたアメリカンドーナツもジワジワきています。食べログマガジンではハワイがルーツのケーキドーナツ「LOCO」をドーナツ探求家の溝呂木一美さんにご紹介いただきました。横須賀の「TOPOFF DONUTS」、田原町の「ドーナツ もり 蔵前店」なども今年オープンです。

2024年もこのお菓子が熱い! 注目の「ドーナツ」5選』『ドーナツ探求家が厳選! 大阪で注目のドーナツ店8選』『ドーナツ探求家が厳選! 東京で行きたい最新ドーナツ店アドレス10選』などまとめ記事でも多くのドーナツ店を紹介しました。

3位:ヘルシーで映える「韓国グリークヨーグルト」

「Bowls #」 写真:お店から

出店の多さを感じたのが「韓国グリークヨーグルト」。甘い系だけではなく、生ハムやアボカドをトッピングした食事系もあるため、ダイエッターにも人気。

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「Greek day Omotesando」   出典:manamin_1234さん

食べログマガジンでも「Bowls #」「Greek day Omotesando」などを紹介しました。今年食べログに登録された店舗だけでもなんと50店舗以上も。12位の「アサイーボウル」と「グリークヨーグルト」の両方を提供するお店が多いようです。

2位:「寿司」東京へ

カフェモカ男
「あら輝 」   出典:カフェモカ男さん

地方でそのエリアならではのお寿司を食べに行くのも楽しいのですが、「東京で勝負をしたい!」という寿司職人は多いようです。2014年に人気絶頂の中、イギリス・ロンドンに渡ったレジェンド寿司職人、荒木水都弘氏が今年4月に帰国。赤坂に「あら輝」をオープンし、寿司好きを喜ばせました。

hiro0827
「鮨 一幸」   出典:hiro0827さん

寿司界隈での話題をさらったのが8月に札幌から銀座に移転した「鮨 一幸」。銀座のど真ん中ながらウエイティングルームもあり、豪華な造りも話題です。人気は鰻上りで、12月時点で食べログの点数は4.21をマークしています。

「鮨 陸」 撮影:八木竜馬

日本橋蛎殻町 すぎた」の弟子の独立で注目を集めた広尾の「鮨 陸」はタイのバンコクから凱旋帰国。修業先の技を取り入れながらも独自の進化をした寿司は、今後ますます評判になりそう。食べログマガジンでもオープンに合わせ記事を掲載し、寿司好きから反響がありました。

「鮨 ゆうき」 撮影:溝口智彦

横浜にあった「常盤鮨」の林ノ内勇樹氏が広尾に出店した「鮨 ゆうき」は、寿司を食べ込んだ寿司通からの評価が高いお店。キリッとお酢の利いた江戸前のお寿司が好きな人にはたまりません。外苑前「たけもと」は北九州の小倉から東京へ。紹介制のためややハードルは高いですが、数貫提供後はお好みで追加できるスタイルが魅力です。

1位:「PIZZA」は日本で進化する

「CRAZY PIZZA TORANOMON」 撮影:片桐圭

とにかく今年はピザをよく食べました。麻布台ヒルズの「リストピッツァ バイ ナポリスタカ」「Pizza 4P’s」、虎ノ門ヒルズの「CRAZY PIZZA TORANOMON」などWヒルズでもピザが元気。ベトナムから逆輸入の「Pizza 4P’s」は瞬く間に予約困難店になりました。「CRAZY PIZZA」は通販もスタートして、家でもあの味が食べられると好評です。

祐天寺マン
「400℃ PIZZA TOKYO」   出典:祐天寺マンさん

一番の話題は、食べログのピザ部門で全国1位の岡山「400℃ PIZZA」が神楽坂に「400℃ PIZZA TOKYO」をオープンしたことではないでしょうか。他にも二人の世界チャンピオンが手がける赤坂「PIZZERIA MANCINI TOKYO」、食通から評判の参宮橋「SAM wood fired」、「ラチュレ」が手がけた渋谷「Ciel Pizza」などピザの話題が続きました。

「SAM wood fired」 撮影:柿崎真子

ホテルピザの存在感も増した今年。3月には「マンダリン オリエンタル 東京」内にある8席限定の「ザ ピッツァバー ON 38TH」が2年連続で『50 Top Pizza Asia – Pacific 2024』でランキング1位に選ばれました。秋葉原「NOHGA HOTEL AKIHABARA TOKYO」の「PIZZERIA & BAR NOHGA」もインバウンド客からの人気が高く連日賑わっています。

「PIGNETO」 写真:お店から

9月には「フォーシーズンズホテル東京大手町」の「PIGNETO」がカジュアルなピザコースをスタート。イタリア・ナポリ出身のシェフ、アレッサンドロ・ ルカ・デ・レオ氏のこだわりがつまったピザはコルニチョーネ(縁)に空気がたっぷり含まれ絶品でした。ラグジュアリーな空間でお腹いっぱい食べられるディナーが12,000円(税・サービス料込)とあって大人気です。

「尾山台 山田」 撮影:溝口智彦

また、個人的に衝撃を受けたのは「尾山台 山田」のコーススタイルのピザ。塩味の利いた生地は驚きのおいしさで、少人数でも焼きたてを多種類食べられるのがありがたいです。同じくコーススタイルの北千住「TOMMY PIZZA」も近々行ってみたいリストに入りました。

Hottest spot 2024

こんな店が近所に欲しい「阿佐谷」&世界で最もクールな街の一つに選ばれた「学芸大学」

阿佐谷

「炭火焼肉 三宝苑 阿佐ヶ谷店」
「炭火焼肉 三宝苑 阿佐ヶ谷店」   写真:お店から

今年も1エリアに絞れず、2エリアです。おいしくてちょうど良い価格帯のお店が多かった印象なのが「阿佐谷」。6月にオープンしたのはとにかくコスパが良くて「こんなお店が近所に欲しい!」と心から思ったイタリアン「impronte」、人気町焼肉の2号店「炭火焼肉 三宝苑 阿佐ヶ谷店」。

「anocado restaurante+」 撮影:長尾真志

7月オープンで既に食べログ3.6を超えているラーメン「無冠 阿佐ヶ谷」、国際大会で絶賛された“優勝パエリア”が食べられる「anocado」、最新ジェラートの記事で登場した「ジェラテリア シンチェリータ」など良いお店が揃い踏み。

学芸大学

「SiESOL」

グローバルメディア「タイムアウト」で2024年「世界で最もクールな街」ランキングに日本で唯一選出された「学芸大学」。1月にオープンしたのは自然派ワイン連載で紹介した地中海料理の「SiESOL」。4月にはカレーマニアのカレーおじさん \(^o^)/が薦めるカレー店「表面張力」、5月には北イタリア料理の郷土料理にフォーカスしたトラットリア「Grolla」がオープン。

「ガストロノミア」 撮影:片桐 圭

7月には国内外のコンクールでさまざまな賞を受賞した遠藤泰介氏のパティスリー「Taisuke Endo」、「チニャーレ」系列の気軽な呑み処「ガストロノミア」、10月には5位の「シンプルクレープ」でも紹介した「BLOOM.by SWELL COFFEE ROASTERS」、焼肉連載で紹介した町焼肉「だいごろう」がオープンしました。

2025は“おいしい年”になりますように!

1月1日の令和6年能登半島地震という大きな衝撃でスタートした2024年。食べログマガジンでは被災地のシェフにお話を伺い、チャリティイベントを取材するなどしてきましたが、1年が経とうとしている今でも能登半島の状況はかなり大変だと聞きます。私たちにできることはごくわずかですが、寄付をしたり、北陸を訪れたり、食品やお酒を購入したり、引き続き心を寄せていければと思います。

そして2025年は、日本列島でたくさんのおいしい笑顔が溢れる年になることを祈っています。


※価格は全て税込

文:山本麻里絵(食べログマガジン編集長)

食べログマガジンで紹介したお店を動画で配信中!
https://www.instagram.com/tabelog/