全国から集めた最高の食材で最高峰のスイーツに仕上げる

「亀岡 七谷鴨の卵のプリン 上賀茂 賀茂茄子のアイスクリーム」

こちらは「七谷鴨」の卵で作ったプリンと「賀茂茄子」のアイスクリームです。京都・上賀茂産の賀茂茄子は炭で1時間かけて真っ黒になるまで焼き、中のやわらかな部分でピューレを作り、生クリーム、砂糖などを合わせてアイスクリームにしています。香ばしい香りとほんのりとした甘さが感動的!

食感が見事!

京都亀岡市の養鶏農場「弥栄」が豊かな自然の中で厳選した飼料とミネラル水で健康的に長期肥育した鴨の卵は鶏の卵と比べて3倍ほどの大きさがあり、濃厚な味わい。なめらかでクリーミー、上顎にくっつくようなまったりとした独特の食感に仕上がっています。カラメルは透明感があり心地よい苦みも感じます。ペアリングには88時間かけて焙煎した「八八金萱(はちはちきんせん)」を。

扱うのはトップグレードの台湾茶のみ

ティーペアリングは基本的に、1)味わい、2)香り、3)加熱によって起こるメイラード反応を考慮して決めていますが、実は後味が大切と横田さん。これは口中で咀嚼している間にドリンクの必要がないように味をつけ、極限まで食材の良さを感じさせる「蒼」の哲学と同様、「蒼菓」でもお茶は最後に飲むものと考え、後味の余韻を合わせるようにしているそう。

「古山果樹園 桃“昂紀” 大石早生“プラム”のソルベ」

こちらは福島県にある「古山果樹園」の極早生品種「昂紀(こうき)」をフレッシュなものとコンポートで楽しませる一皿。桃の皮で出汁を取ったクラッシュゼリーとプラムのソルベをのせて食感と味わいを変化させています。

酸味はプラムのソルベで

「古山果樹園」は科学と理論で高糖度の桃を作るパイオニア的存在。糖度40.5度の桃はギネス記録を保持しています。本日の桃も果実は硬めながら糖度はなんと20度。桃の甘みをプラムの酸味が中和しながら引き立てます。ペアリングは「微酸金萱(びさんきんせん)」。茶葉は「八八金萱」と同じですが発酵感がより強く、桃の香りの余韻に合わせています。

「宮崎 マンゴー“時の雫” 焼きたてのミルフィーユ パイナップルのソルベ」

こちらはメインとなるパイ生地を使った一品。本日は宮崎県の木村幸司さんが作った糖度21度以上の超熟マンゴー「時の雫」を挟んでいます。国内でもトップクラスのマンゴーはジューシーでねっとりとして甘美。これだけの糖度ながらも後味は意外にすっきりとしています。パイナップルのソルベはとってもエアリー。この食感に仕上げるのは濱村さんの得意とするところ。

食感、味わい、香り、最高のパイ生地

パイ生地は濱村さんのスペシャリテ。ナイフを入れるとパリパリ、サクサクと良い音が立ち、熱々のまま口に放り込むとバターのいい香りと風味に酔いしれます。ペアリングには新芽だけを集めた最上級の白茶「微酸イラム白」をセレクト。レモン水のような軽い酸が後味をすっきりさせます。

「沖縄カカオ果肉から抽出したジュレ 白神山地の軟水とカカオのガナッシュ」

こちらは沖縄県産のフレッシュなカカオをジュレとガナッシュに仕立てた一皿。ガナッシュは生クリームとチョコレートを溶かし合わせるのがセオリーですが、濱村さんはカカオを水だけで乳化させることで、純粋なカカオの味わいを作り出しています。

乳製品ゼロ、丸ごとカカオな一皿

カカオの果肉を抽出して作ったジュレ、本来は廃棄してしまうカカオニブの外皮であるカカオハスクを加えることでカカオの香りが口中いっぱいに広がります。さぞかし甘みが強調されているかと思いきや爽やかな甘さ。水だけで作るとこうなるのかと、その意外性に驚きます。ペアリングしたのは「日華玉露」。福岡・八女の食べられる土から生まれた玉露を台湾で焙煎した超一級品の茶葉のうまみと甘みが、カカオの風味をさらに引き上げます。

「抹茶のオペラ」

こちらは土産用に販売する佐賀の嬉野茶を使った「オペラ」です。茶葉を粉にしたり、水出しして煮詰めてシロップにしたり、香りを移したウォッカがこのケーキの中に詰まっています。「ホワイトチョコレートを使っているのでどうしても甘さが強くなる。それを抹茶の苦みでバランスを取っています」と峯村さん。そのバランスが絶妙で、もう一口、もう一口と止まらなくなるのです。

また食べたい!と思わせるデザート

「実はモテると思ってパティシエの道に進みました」と笑って話す濱村さん

26歳までフランス料理人として活躍していた濱村さんですが、半年ほどパティシエの職に就いた時に自分には菓子作りが合っていると転職。「オーボンヴュータン」の門を叩きます。3年目からスーシェフパティシエを務め、2011年にレストランデセールを学びたいと渡仏し「ステラマリス」で修業。帰国後は「ロアラブッシュ」「インフィニートヒロ」「オマージュ」と錚々たる店で腕を振るってきました。

食材ありきです!

なぜレストランではなくアシェットデセールの店にしたのかと問うと「近年、若いパティシエが脚光を浴びている一方でベテランの実力者が埋もれてしまっています。昔はクローズドキッチンでパティシエがお客様と話す機会が少なかったというのが理由の一つ。実力のあるベテランの存在が認知されたら良いなと思って」と峯村さん。少し前からデザートの店をやりたいという思いが濱村さんと出会ったことで実現しました。

メニューは月ごとに変わる

濱村さんの皿は派手ではないけれど食べると複雑な味わいが重なり合い食材の味を最大限に引き出します。“また食べたい”と思わせるデザートとはこういうものなのだと確信できます。今後もまだ知られていない逸材を集めて最高のデザートを作っていきたいと濱村さん。今、百合根とピスタチオでルセットを考えているそうなのでこちらもきっと深い満足感を与えてくれる皿になるに違いありません。営業日の情報と予約は飲食店予約サービスの「OMAKASE」で。

※価格は税込


文:高橋綾子、食べログマガジン編集部 撮影:松園多聞