齋藤親方直伝の握り!

目の前で山葵をすりおろす

山葵をすりおろす音が聞こえると握りが始まる合図。「今までは鋼を使っていたのですが、より細かくおろせる鮫皮にしました」と滝本さん。山葵も本店と同じ静岡県梅ケ島の杉山農園のものです。

所作も美しい

米は本店と同じ「あきたこまち」を使用。滝本さんが理想とするのは甘みがあり粒が立っている酢飯。空気を含みふわっとさせ、寿司ダネとの一体感を持たせます。

春子鯛

滝本さんこだわりのつけ台は、握りが映えるようにとロイヤルブルーにブラックをあしらった色。厚みのあるどっしりとした形に高台をつけた特注品です。そこにのせる握りの美しいこと! 春が旬の春子鯛は肉厚でくにゅっとした食感。酢飯がほんのり温かく春子鯛のうまみを引き立たせます。

サヨリ

本店では“かんぬきサイズ”と呼ばれる30cmくらいのサヨリを好みますが、滝本さんはあえて小さいものを選び、2枚重ねして“肉厚”の食感に仕立てています。

鯵もかなり肉厚でとろとろの食感です。脂ののりも十分で、青魚はクセがあり苦手という人もこの鯵を食べたら好きになるかもしれません。それほどクセがなく甘みすら感じるのです。

スミイカ

スミイカはサクサクとした歯切れの良さが魅力ですが、切り込みを入れることで口の中でほどけてとろけます。酢飯と馴染むと上品な甘みが余韻として残るのです。切り込み、握り方、滝本さんの高い技術が表れた一貫です。

車海老

「うちの海老は少し小さめです。大きいのを半生で提供する店が多いけれど、私は熱々が好きなので小さめにしています」と言います。小ぶりな車海老は湯気が立つゆで加減で酢飯もほんのりとした温かさ。

最上級の天然鮪を最高においしくする!

迷いなくスーッと包丁を入れる

焼き物を提供したあたりから鮪の切りつけが始まります。仕入れは日本一と評される鮪の仲卸「やま幸」から。まな板の上に赤身、中トロ、大トロと並べられる様にうっとりします。

赤身漬け

鮪は赤身漬けから。3分ほど煮切りに漬け、表面だけがコーティングされた赤身は香りがとても豊か。口にすればもっちりとした食感に頬が緩みます。

美しいものはおいしい!

なんと美しい中トロなのでしょうか。このフォルムを見ればトゥルンとした食感が想像できます。どんなに上質な食材でも切りつけが良くなければおいしさは半減しますが、滝本さんの切りつけは舌触りがシルクのようになめらかでとろけるのです。

大トロ

サシが入った艶やかな大トロは切り込みを入れて酢飯との一体感を味わいます。中トロよりもやわらかさと味わいが増す大トロは、鮪好きには欠かせません。こうやって3種類の鮪を食べ比べると、それぞれの個性を最大限に活かしているのがわかります。

予約開始後30分ですべての席が埋まる快挙!

写真左から「能登復興支援酒」「IWAI」「しずく」「火いら寿」「龍」

こちらの日本酒は福井県が誇る「黒龍」のみの扱いという「鮨 さいとう」グループ唯一の店です。小さい酒蔵を設け、若手が機械を頼らず人の手だけで造っている「能登復興支援酒」や、永平寺町下浄法寺にある複合施設「ESHIKOTO」で造られたスパークリング「IWAI」など、日本酒ファンならずとも目を見張るような限定酒までそろいます。

口に入れるとほろりとくずれる握り方

齋藤さんの「どの仕事にも意味がある」という言葉に感銘を受けたと言う滝本さん。若い時は膨大な仕事を“こなす”ことで精一杯でしたが、今はこの言葉を胸に、何が最良なのか、どうすべきかを考え、腕を磨いているのだそう。滝本さんにしかできない工夫を凝らしたつまみと握りは本店とは違った魅力にあふれています。オープン時は予約受け付けから30分で全席が埋まってしまうという快挙を成し遂げた「鮨 さいとう 麻布台」。早くも2カ月先まで予約でいっぱいですが、キャンセル席なども出るそうなのでまずは電話(080-4871-6048)を!

※価格は税込


文:高橋綾子、食べログマガジン編集部 撮影:溝口智彦