「The Tabelog Award 2024」 受賞店インタビュー

「おいしいを、讃えよう。」をキャッチコピーに、食べログユーザーによる評価をもとにした独自の年間レストランアワード「The Tabelog Award 2024」。対象期間にきわめて高い評価を獲得したお店がノミネートされ、ユーザーによる投票にて「Gold」「Silver」「Bronze」の各賞、部門賞として「Best New Entry」「Best Regional Restaurants」「Chefs’ Gold」が決定した。

受賞店数は456店舗、その割合は日本の飲食店の中のわずか0.05%ほどという狭き門。そんなトップオブトップの飲食店の料理人たちは今、何を考えているのか?

Gold受賞「鮨 三心」石渕 佳隆氏

大阪・谷町六丁目駅から徒歩5分ほどの場所にある寿司屋「鮨 三心」。2021から3年連続で「Bronze」を受賞し、今年初めて「Gold」を受賞した。今回の受賞で、店主の石渕 佳隆氏は、家族や周囲のスタッフだけでなく、生産者や仲介者の方々が喜んでくれることがうれしいと語る。

そんな石渕氏が目標とし、大切にしていることは「食事だけでなく、一生の思い出になるような一日にしてあげたい」というお客さんへの強い思い。そんな彼が語る「鮨 三心」に込めた思いとは?

写真:店舗から

食事という特別な空間に、高い金額を支払ってくれた方が「一生の思い出になるような一日」を過ごしてもらうために、器やサービス、スタッフ間の話す一言一言さえも意識されているそう。

石渕氏は「一般的に寿司屋は金額のハードルが高い」と考えており、常日頃スタッフと話し合うことで、新しいことができるようにアイデアを出し合っている。

そんな石渕氏が開いた「三心」は、若い頃に料理の本で知った、僧が説いた料理人の心得からきているそうだ。

店名「三心」に込められた思い

写真:店舗から

日本に禅の思想を確立したと言われる「道元禅師」。図書館で見つけた料理の本に、彼の説いた料理の心得が載っていて、そこから店名は「三心」にすると決めていたそう。

一つ目の心得は「喜心」という喜ぶ心。料理を作れる健康な体を持ち、その環境があること、そして、作る資源があること、食べていただける方がいることに感謝をするというもの。

二つ目の心得は「老心」。老婆心や、親心というものであり、食材や調理器具を自分の子を思うように大切にすること。

そして、最後の心得は「大心」。毎日料理をしていると、さまざまなことが起こるが、そういうことも含めて一つの景色。小さなことにとらわれず、大きな心で料理をするというもの。その三つの心を常に心に置いて料理をするというのが、道元禅師が説いた料理の心得なのだそう。

この言葉に出会ってから、店を開くときは「三心」にすると決めていたそうだ。

印象に残る料理を作るために大切なのは?

写真;店舗から

「寿司屋は季節によってネタが変わるので、全貫をスペシャリテにしたいぐらい。全てのメニューに思い入れがあるし、どの一貫を出しても『三心の寿司だな』と思っていただけるような一貫にしたい」と、石渕氏は語る。

他店と同じ具材の寿司でも、「他の店とは違う」と思ってもらえるような、三心にしか仕上げられない一貫にしたいと考えているそうだ。

地元に根付いたレストランを目指す

写真:店舗から

壁にぶつかりながら新しいことをするのは、とても勉強になるのだそう。食材、調味料、熱源など、あるもので何かしなくてはいけないという環境はとても勉強になる。そのため、自身の引き出しを増やすために石渕氏自ら海外へ出向き、実際に経験をすることで学びを得ているそうだ。

海外から来ている弟子がいるので、自身が海外に行くことで三心が世界に知られるようになったら、彼らの力にもなれるだろうと考えている。

全ては「自分が出す一貫をもっとおいしくし、来ていただいた方に満足して帰っていただけるような店にしていきたい」という石渕氏の熱い思いからだ。

詳しくは動画で

インタビュー動画では石渕氏が、料理に対する思いや、将来の展望などを語る。素晴らしい料理がどのようにできているのか、そのヒントが詰まっている。

■その他の受賞シェフインタビュー
https://award.tabelog.com/interview

■The Tabelog Award 2024
https://award.tabelog.com/

文:食べログマガジン編集部