【和菓子と巡る、京都さんぽ】
四季折々の顔を見せる名所を訪れたり、その季節ならではの和菓子を食べて職人さんたちの声を聞いてみたり……。ガイドブックでは知り得ない京都に出会う旅にでかけてみませんか。
あなたの知らない京都について、京都在住の和菓子ライフデザイナー、小倉夢桜さんに案内していただきましょう。
其の四 並々ならぬ餡への思い入れ「長生堂」
紅枝垂桜を眺める、北大路さんぽ。
京都駅より市営地下鉄に乗り、国際会館方面へ約15分ほどで北大路駅に到着します。駅の上には商業ビル、バスターミナルがあり、この界隈に暮らす人々にとっては欠かせない重要なエリアとなっています。
また、東西に全線4車線の幹線道路北大路通があります。今では、昼夜問わず多くの乗用車やバスが往来しますが、1978年までは路面電車が走っていた道路です。
その北大路通を東へ徒歩5分、賀茂川にかかる北大路橋に到着します。
北大路橋から見る風景は視界を遮るものがなく、北山を真正面に望むことができます。
賀茂川堤防沿いには、染井吉野や里桜などの桜が植えられており、桜シーズンには多くの人々が散歩をしながらお花見を楽しみます。
中でも北大路橋と北山大橋間の東岸の「半木の道(なからぎのみち)」と呼ばれる散策道。
数多くの遅咲きの紅枝垂桜が植えられており、京都の数ある桜の名所の一つとなっています。
その半木の道の東側には、京都府立植物園の広大な敷地が広がります。
京都府立植物園の南門より入場する方が目にされるお店が、1919年に創業した和菓子店「長生堂」です。
甘いもので、ひとやすみ。
「甘菓子は心と粉で好かれ味」をモットーにして営まれています。
店内には、数多くの商品が並び、モットーの通り素材に対する思い入れや、真心を感じるお店です。
創業当時から約70年間、四条大宮で営まれて現在の場所に移ったのが30年前。
四条大宮で営まれていた時のお客様は、お得意様ばかりだったそうですが、現在の場所に移ってからは、植物園が近いこともあり観光客の割合が増えたそうです。
その為、できるだけ分かりやすい商品づくりを心掛けていると語ってくださったのは、約10年程前にお店を受け継いだご主人です。
お店を受け継いだ当時、餡作りを再度見直し、試行錯誤を繰り返した後、ようやく今の餡にたどり着いたそうです。
とは言っても、「餡の原料である小豆は、その年の天候などによって全く異なっているので、感覚だけが頼りです。和菓子屋にとって餡は命、毎回が真剣勝負です」と、先ほどまでの笑顔が消え、真剣な表情で語るご主人。並々ならぬ餡に対する思い入れを感じた瞬間でした。
その餡を使用したお菓子たち。季節の微妙な移ろいを反映した上生菓子が店頭に並びます。
その中からいくつかご紹介させていただきます。
菓銘「宴」
桜シーズンに合わせて作られた高級白小豆をふんだんに使用して桜を表現したきんとん製のお菓子です。
菓銘「清涼」
夏の暑い時期に食べやすいようにとキウイフルーツを入れたお菓子です。
甘さの中にキウイの酸味が相まってとても爽やかな口あたりとなります。
菓銘「こぼれ萩」
初秋の頃、京都の社寺では萩の花が咲き乱れます。
こぼれんばかりに咲く萩の様子を表現した葛製のお菓子です。
菓銘「栗きんとん」
秋の味覚、栗をふんだんに使用した栗きんとん製のお菓子です。
菓銘「冬支度」
京都の冬の味覚を代表する千枚漬け。
聖護院かぶらをモチーフにした上用饅頭です。
店内には、ゆったりとくつろげる茶房「長寿庵」が設けられています。
こちらでも店頭に並んでいる四季折々の上生菓子をお召し上がりいただけます。
休日をのんびりと過ごしたいと思った時に訪れてみてはいかがでしょうか。