TOKYO トレンドスイーツVol.1:イースター・スイーツ

「スイーツ百名店 TOKYO 2018」の中から毎月一度、お菓子の歴史研究家である猫井登先生に、今のトレンドを反映したお菓子を解説&紹介していただくこの連載。第1回となる今回は、ここ数年の間でじわじわと日本に浸透しつつある“イースター”に関連した「イースター・スイーツ」を紹介します。

 

編集(以下、編):そもそも、イースターって何ですか?

 

猫井先生(以下、猫):イースターというのは、キリストの復活を祝う「復活祭」のことですね。キリスト教最大のお祭りなのですが、「春分の次の満月後の最初の日曜日」と定められているので、毎年日程が変化します。クリスマスのように一定の日ではないので、分かりにくく、日本ではあまり取り上げて来られませんでしたが、最近はかなり浸透してきました。

 

:今年はいつですか?

 

:4月1日です。

 

:エイプリルフールと被っちゃった! イースターにはどんなスイーツが出回るのでしょうか?

 

:「卵」や「ウサギ」「小魚」の形のチョコレートが多く見られますね。卵は生命や復活、ウサギや小魚は、多産、繁栄を象徴しているんですね。

 

:それぞれに意味があるんですね。

 

:よく意味が分からないものもありますけどね。欧米では、なぜかウサギが卵をかごに入れて持って来て、みんなに配るものと信じられているんです(笑)。

 

:ニワトリではなく、ウサギがですか?

 

:一説には、草むらからウサギが飛び出してきて、そこに卵が残されていたから、子供がそう信じてしまったといわれていますが。

 

:へえ〜! ほかには、どんなお菓子があるんですか?

 

:珍しいところでは、「子羊」の形をしたお菓子も登場しますね。

 

:子羊?? なにか由来があるんですか?

 

:元々は、ユダヤ教の「過ぎ越しの祭」に由来するお菓子ですが、イエスが人間の業を背負って、まさに生贄の子羊になったからと理解しておけばよいでしょう。

 

:イースターには、色々な変わったお菓子が登場して楽しそうですね。

 

:それでは、百名店中の「イースター・スイーツ」を紹介しよう!

もはや芸術。美し過ぎるチョコレートはギフトにもピッタリ「ピエール・エルメ・パリ」

 

パティスリー界のピカソとも称され、常に斬新で芸術的なスイーツを発表し続けるピエール・エルメ・パリからは、伝統を重んじつつも、スタイリッシュにデザインされた卵やうさぎのチョコレートが登場する。上から「ウフ マンディヤン ノワール」6,480円(Mサイズ)、「ウフ ダンテル オレ」4,320円(Mサイズ)、「ラパン ア ラ オット オレ」(左下)、「ラパン ア ラ オット ノワール」(右下)各4,320円。

 

「ウフ」とは、卵のこと。「マンディヤン」の由来となっている「マンディアン」は、本来ドライフルーツやナッツをのせた円盤状のチョコレートのこと。ここでは卵形のチョコレートにオレンジピール、ショウガのコンフィ、ヘーゼルナッツ、アーモンド、ピスタチオが散りばめられている。「ダンテル」は、レースのこと。繊細なレース模様の卵形チョコレートとなっている。最後は、「バスケットを背負ったウサギ」。今にも跳びはねそうな姿は生命の躍動を表現している。

食べるのがもったいない!老舗ブランドが作り出すキュートな魚たち「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」

 

 

高級チョコレートの先駆けとなったパリの老舗ブランドからは、茶目っ気たっぷりの5匹の魚たちのチョコレート「ポワッソン ドゥ パック(イースターの魚)」各4,698円がお目見え!

 

写真左から順に、「パネ(フライ)」、「スィ(ノコギリエイ)」、「クルーン(クマノミ)」、「シャ(ナマズ)」、「ルージュ(金魚)」。

 

「パネ(フライ)」ヒレがフライ返し! パネはフライという意味だから!? ミルクチョコレート、細かく刻んだクレープ・ダンテル入りのヘーゼルナッツプラリネ。

 

「スィ(ノコギリエイ)」文字通りのノコギリデザイン。ダークチョコレート、アーモンドのミルクプラリネ。

 

「クルーン(クマノミ)」色づけしたホワイトチョコレート、アーモンドのミルクプラリネ。

 

「シャ(ナマズ)」ヒレに注目! 肉球になっています。ナマズは英語でキャットフィッシュだから!? ミルクチョコレート、ローストしてキャラメリゼしたココナッツ入りのアーモンドのミルクプラリネ。

 

「ルージュ(金魚)」赤く色をつけたホワイトチョコレート、細かく砕いてキャラメリゼしたビスキュイ入りアーモンドとヘーゼルナッツのダークプラリネ。

今年の羊は桜の香り!毎年異なるテイストのイースタースイーツが味わえる「パティスリー ユウ ササゲ」

伝統的なフランス菓子に新しい解釈を加え、日本のフランス菓子界を牽引する捧シェフ。フランスのアルザス地方で、イースターの時期に見られる羊型のお菓子「アニョーパスカル(イースターの子羊)」1,400円にも、毎年さまざまなバリエーションを産みだし続ける。アニョーパスカルは、伝統的にはビスキュイ生地(スポンジ)で作られるが、日本ではアーモンドパウダーを入れたパンドジェーヌ風の生地で作られることが多い。今回は、捧シェフの独創性に富む2種類のアニョーを紹介しよう。

 

「ショコラベルガモット」(写真上)チョコチップ入りのショコラ生地にベルガモットオイルで香り付けし、粉糖をかけて仕上げられている。

 

「桜」(写真中央)こちらは、なんと桜の季節に合わせて、和のテイストを取り入れた、桜葉の塩漬け入りの生地。桜のグラスアロー(糖衣)で仕上げられている。販売期間はともに3月下旬から4月上旬まで。

 

文:猫井登