【第3週のカレーとスパイス】こんな食べ方があるんだ! 錦糸町に変幻自在の豆使いが光るスパイス小料理店がオープン「ワインとスパイス小料理 Dal Mellow(ダルメロ)」

カレーというとまだまだワンプレートでかき込むように食べる、いわばファストフード的なものだと考えられることが多いです。昨今スパイス料理とお酒のペアリングのお店も出てきましたが、やはりまだまだ一般に浸透しているとまでは言えない状況。しかし、カレーやインド料理は立派なスローフードとして成立するんだということを再確認させてくれるお店が錦糸町にできました。その名も「ワインとスパイス小料理 Dal Mellow」。

シェフはCG制作など映像関係の仕事をしながら各地のカレーを食べ歩き、インドにも何度も足を運んで現地で料理を習ってきた方。今もその仕事を続けながら、新たに飲食店を開いた状況ということもあり、しばらくは予約制の土日夜、コース料理のみでスタート。古い理髪店を改装したお店は、その名残を感じさせる店頭の明かりと、店内には消毒殺菌器も活かしているのが、とても趣があります。

11月のコース(4,600円)は、6品のうち4品に豆の料理、つまりダルが入っているという意図的な構成。

「ダルプリウプマ」

「ダルプリウプマ」はインドの軽食のパニプリをアレンジしたもの。サクサクで円形のプリ(生地を油で揚げて円形にしたインド料理)にウプマ(セモリナ粉を使ったインド料理)とカチュンバル(野菜のスパイスあえ)を合わせ、そこにダルをかけながら食べるというスタイルはモダンインディアンにも通じるものです。

「焼き茄子と納豆のバルタ」

「焼き茄子と納豆のバルタ」は納豆をジャパニーズダルと考えて作られた一品。納豆特有のにおいはスパイスによって、ネバネバ感はナッツによってそれぞれ中和され、納豆のうまみをダイレクトに感じさせる料理になっているので、納豆が苦手な方でも食べられます。実際納豆が苦手な僕でもおいしいと感じました。

「エリンギ グリーンダルダル」

「エリンギ グリーンダルダル」は2種類のダルなのでダルダル。グリンピースを使ったダルと通常のダルを合わせ、グリルしたエリンギがのります。ギーでテンパリングしたカスリメティの香りが奥深さを加え、インド料理でありながらフレンチを食べているような感覚になります。

「鯖のポリチャットゥ」

「鯖のポリチャットゥ」は非常にオーセンティックな仕上がり。酸味と辛みがしっかりしたソースと鯖の相性が抜群なのですが、これにココナッツミルクとダルのソース、アッパムを合わせていただきます。

店名の通りDalでMellowな気持ちになれる料理のオンパレード。変幻自在のダル使いだと言えるでしょう。

「薩摩芋とミントのパチャディ」

豆を使っていない料理も「薩摩芋とミントのパチャディ」、そしてメインの「マンゴーライス、パンダナスチキン、栗と生姜のアチャール、バターミルクラッサムのワンプレート」があり、どちらもオーセンティックな料理をベースにしつつも、独自の工夫を加えた料理となっていて素晴らしいです。

「マンゴーライス、パンダナスチキン、栗と生姜のアチャール、バターミルクラッサムのワンプレート」

カレーもインド料理も大好きだからこそ、あえて店名にカレーやインド料理をつけずにスパイス小料理としたそうで、そんな思いを感じる料理の数々。

小さい頃におばあちゃんが作ってくれたカレーをきっかけにカレーを作り始めたというシェフ。飲食業自体はスタートしたばかりですが、インド料理を作り始めてからはもう40年以上になるというベテランであり、偉大なるアマチュアが遂にプロになったとも言えます。

シェフは「長いことスパイスやインド料理に触れ続け、創造的な仕事をしている中でも、だからこそよりプリミティブに物作りをしたいと考えるようになり、自分の料理をお客さんに提供したいという気持ちが抑えられなくなり、お店を開きました」と語ってくれました。

コースにはワインのペアリング(4,200円)をつけることが推奨されていますが、お酒が苦手な方にはノンアルコールのワインのハーフボトルなどもあり、お酒が飲めない方も歓迎とのこと。料理はあくまでワインとどう合わせるかを軸として考えているので、お酒やソフトドリンクの種類は限られますが、飲める人はワインのペアリングを、飲めない人はノンアルワインを合わせるのが良いでしょう。

ゆっくりとした時間の中で楽しむスパイス料理の数々。自然と他のお客さんとも会話が生まれるような空間となっていました。既にマニアの間では話題となっているお店なので予約が埋まっていることも多いのですが、SNSをチェックし、タイミングが合えば是非とも予約して行ってみてほしいお店です。

【第4週のカレーとスパイス】まずはランチの日替わりカレーからトライ! 八重洲の人気南インド料理店「ダクシン」が大手町に華麗なる移転「南インド料理ダクシン 大手町店」

地域再開発のために一時閉店していた八重洲の人気南インド料理店「ダクシン」が、「南インド料理ダクシン 大手町店」として大手町駅直結のファーストスクエアに移転、リニューアルオープンしました。ビルのレストラン街にあるのかと思いきや、ビルの谷間の一軒家的建物であり、2階建ての建物のすべてがダクシン。立地も内装も非常にゴージャスです。

ランチタイムに行ってみると、1階はセルフサービスでのカレーセット中心、2階はダクシンの本領発揮的な南インド料理中心という、フロアによって形式が違うのが面白いです。ちなみに店頭でお弁当の販売もしており、近隣で働く方にはその日の気分で色々と使い分けられそうなのも良いですね。

2階へ上り、メニューを見ると南インドの定食であるミールス(ダクシンではミールズと表記)も、日本米とインド米を選べる形。また、ナンとカレーのセットもあることから、南インド料理を食べ慣れている人も、食べたことがない人も一緒に楽しめるお店となっています。

「南インドミールズランチ」と「チキンティッカ」

「南インドミールズランチ」1,700円に「チキンティッカ」150円も加えて注文。プラスアルファのサイドメニューがあるのも選択肢が広がって良いです。

カレーは日替わり3種の中から2種をセレクト。辛口のペッパーエッグと、中辛のコリコランブ(南インドのチキンカレー)をセレクト。これにサンバルとラッサムというミールス定番のアイテムがつき、パンも選べる中からプーリ(揚げパン)をセレクトしました。

どれも総じて上品なテイスト。南インド料理にも色々ありますが、こちらのミールスは尖った部分は穏やかに、それでいて物足りなさを感じることもない着地点であり、先述したメニュー的にも味的にも南インド料理を食べ慣れている人と慣れていない人どちらにも満足できそうな絶妙さを感じました。そういう意味でも南インド料理初心者にとっての最初の扉としておすすめできるお店です。

チキンティッカもジューシーで最大公約数的おいしさ。チキンティッカは北インドの料理ですが、北インド料理のクオリティもしっかりしたものであることを感じられました。

お店の中から外の緑を感じる雰囲気も良し。昼は癒やされる雰囲気であり、夜も隠れ家感があって良さそう。

さまざまなニーズに対応できる南インド料理店。旧八重洲店のファンも納得できるクオリティですから心配なく行ってほしいお店ですし、大手町でも新規ファンを獲得していくことでしょう。

※価格はすべて税込です。

撮影:カレーおじさん

文:カレーおじさん、食べログマガジン編集部