「日々、シャリが小型化する」のはなぜ……?

では握りに参りましょう。鮨与志のシャリはマイルドな赤酢。江戸前とは違い、砂糖を加え上品な酸味と甘みの感じられる味に仕上げています。米は粒が立ち、口の中でほろっとほぐれる程よい接合度。

金目鯛550円。つけ台は陶芸作家に特注したもの。鮨与志の器はどれも芸術性があって見るのも楽しい

「白身魚に力を入れています」というのも関西ならではですね。本日の金目鯛は静岡産で、おろし醤油をのせています。よくある“炙り”にしないのは、脂が多くないので白身の弾力そのものを楽しめるように。

シャリがかなり小さめなのでネタの素材感と生命感をまるごと味わえます。

 

猫田さん

前からシャリこんなにちっちゃかったっけな?と思いましたら「シャリがどんどん小型化してます。『他の料理もいっぱい食べたいからちっさくして!』とお客さんの要望が多くて(笑)」とのことです。

おお、次はもしや、アレですか。アワビの肝ソース掛け! この料理は最近見かけるようになりましたが、お店によって味や仕立てが違うので腕の見せどころ的メニューだなと思います。肝の鮮度にも依存しますしねえ。

アワビの殻かと思ったら陶器でした。そのように見立てて作ったのでしょうか。アワビの肝ソース掛け660円

お店に入った時から良い香りをふりまいてセイロで蒸されていたのは、アワビ様だったのですね。だいたい1時間半ほどかけてじっくり蒸すのだとか。

肝だけをすり鉢ですってなめらかなペースト状にし、アワビを蒸した出汁や醤油などを合わせて作った肝ソース。お店によっては生クリームを入れるところもありますが、こちらは肝が新鮮なのでシンプルに。

こちらもシャリを添え、ソースを絡めてリゾット仕立てで味わえます。この肝ソースリゾットをいつか茶碗一杯食べてみたいと夢見ているんですが、アワビ1つから肝も1つしか取れないのでなかなか難しいですよね。それ以前に痛風になるぞって話ですね。

中トロ770円。シャリがマグロ布団に覆われているって感じですね!

分厚すぎてシャリが見えない中トロ握り。青森の小泊産だそうです。ほどよくピンクがかった中トロ、美しすぎるのでしばらく眺めていることにします。

いや、寿司は握りたてをすぐ食べるのがマナーですのでエイッといただきます。まさに脂がとろけるようで、「トロって飲めるな」と思いました。鉄臭さもなく、熟成したしっとり感も最高です。

 

猫田さん

あ、ちなみに価格は全て仕入れによって変わりますので参考までに。一品のポーションも、他の料理との兼ね合いによって加減してくれます!

固定観念に縛られず、常に臨機応変に進化させたい

吉田さん、さすが洋食経験もあり、和の域を超えすぎない料理のアレンジが実に絶妙です。前回は、オイスターソースが香る中華風メバル蒸し、ゴマ油を忍ばせたポン酢で食す鱧せいろなどをいただきました。

「修業先と同じレシピは一つもありません。固定観念に縛られず、料理もシャリも常に変化させていきたい」とのこと。アクアパッツァ風に魚を蒸したり、トリッパなど肉料理を出したりすることもあるそうです。

「最近、店の前にコース料金表を置くようになりました。外国の方も増えたので」とのこと。おまかせ5,500円~と明朗会計です!

しかし本当に吉田さん、「話題を振るのがうまいな」といつも感心します。私のようなコミュ障が一人で行っても「大阪はもう慣れましたか?」などと前に話したことを覚えていてくれたり(多分記憶力がいい)、「最近このバルに行ったらおいしくて……」なんて他のお店情報を教えてくれたり。

電話番号が公開されていないので直接行くしかないのですが、席が空いていれば一見さんもウェルカム。平日ならスッと入れることもありますよ!

 

猫田さん

「たまに一人で行って軽く飲んでつまむ、行きつけの寿司店があればなあ」って人にもってこいです。誰かを連れて行っても「ええ店知ってるやろ」ってドヤ顔できそう。

※価格は税込。

撮影:ハリー中西
文:猫田しげる