「ここにしかない食体験」はどうやってつくられたのか

2016年からスタートし、3回目を迎えるDREAM DUSK。全国の「予約の取れない店」のシェフ5名が一堂に会するという、文字通り夢のようなイベントとして初回から注目を集め、発売するや否や即ソールドアウトした伝説をもつ。回を増すごとにパワーアップするこのイベントが今年も開催決定し、参加シェフらが発表された。

その強力な布陣に加え、今年は4月14日(土)、15日(日)の2日間、ランチ・ディナーとさらに規模が拡大され、いやが上にも期待が高まる。

そこで、このイベントをゼロから立ち上げ、総合プロデュースをする本田直之さんに話を聞いた。

 

 

――このイベントをはじめたきっかけはなんだったのですか?

 

本田(以下、H) もともと僕は福岡が好きで、知り合いも多かったというのもあるんですけど、「ザ・ルイガンズ.」という素晴らしいホテルがあって、そこのゼネラルマネージャーの水口丈史さんと「何かをやりたいね」という話になったんです。福岡は食の豊かな街なんで、そこに日本や海外で活躍しているトップシェフを呼んで食のイベントをやったら面白いよねっていうことで始まりました。今、食や食体験を求めてる人たちって「そこにしかない」ものがあれば、どこまでも来る。だから、ここでしかありえない食体験を作りたいなと。

 

――最初からかなりの反響だったとか。

 

H 初めての2016年は100席のディナーのみ。それでも「無謀だ」と言われました。福岡だと高くてもディナー15,000円くらい。「そんな高い値段で集まるわけがない」、と。けれど蓋を開けたら即完売。慌てて30席追加することになったくらい。2回目は130席を用意したんですが、それもあっという間に売り切れてキャンセル待ちっていう状態になったんですよ。予想を裏切られたのはそれだけじゃなくて、参加者は7~8割が東京や大阪などからの方だったんです。福岡や近隣の九州の方が多いかと思っていたので驚きました。交通費と宿泊代払って、食費払ってという結構な出費なんですが、これだけの人が来るのかと。

 

――イベントを目的にわざわざ足を運ぶわけですね。

 

H そう、福岡が魅力的な街だっていうのも大きいですね。だから2泊する方も多くて。1日目は福岡の街を回ってからDREAM DUSKに参加して、次の日に福岡の美味しいお店に行くっていうパターンですね。

 

――イベントそのものの魅力は、やはり超人気店の料理を、ジャンルの垣根を越えて楽しめることですよね。その発想はどうやって?

 

H とにかく「ここにしかない」ってことをやりたかった。僕自身、フレンチや中華、イタリアンに鮨も焼肉も好きだし、幅広いジャンルを1つのコースにできたら面白いだろうな、と。鮨は絶対。そしてフレンチかなにかのヨーロッパ系の料理、それに肉料理。それらをコースで食べて、ひとつの世界観を体験してもらったら面白いだろうなと考えたんです。

 

――シェフたちとはどんな風に意見交換するんですか?

 

H メニューの構成をまず考える。僕自身が「こういうの食べたいな」という。それから僕がシェフと1対1で説明して、話し合って詰めていきます。だから僕が知ってる店じゃないとできない。食べてないとわからないですもんね。過去2年も、今年も全部僕が好きで通い続けたお店ばかり。「こういう風に食べられたらいいな」っていう理想のイメージがあってそれを具現化するという作業ですね。簡単に言うと“はしご”してるみたいな感覚かな(笑)。普通こんなことできないじゃないですか。それをみんなに驚いてもらいたいし、共有したいですね。

 

――今回は、土日2日間とかなりパワーアップされますね。

 

H 要望が多いので思い切りました。 今回は初めてランチをするんです。アウトドアのBBQスタイルで。「ザ・ルイガンズ.」はロケーションが素晴らしいので、開放感のあるなかでリラックスした雰囲気での食事にしたいなと思っています。そのときはシェフとも交流してもらいたいなと思っています。ディナーとはまた違った楽しみがあると思います。週末にしているのは、日曜日休みのお店が多いので、シェフが店を休まなくていいようにという想いもあるんです。今回は土曜もあるので少し負担をかけてしまうんですけど、平日は避けようと。

 

――シェフたちはどんな反応ですか?

 

H 最初は「どんなことになるんだろう?」とみんな不安なところもあったみたいですけど、初回の成功で、今はみんな「やりたい!」って言ってくれます。このイベント自体が、シェフの地位をもっともっと高めたいというか、シェフを応援することを目的のひとつにしています。なので、こうしたことをきっかけに、さらにその存在が知られるようになるといいな、と。それにシェフだけではなく、ドリンクディレクター、蔵元、生産者など参加者全員、すごいレベルの人ばかり。今年もどんなことになるのか僕自身もワクワクしています。

 

 

◆今年のDREAM DUSKの参加者たちはこちら

すし処 ひさ田 久田 和男氏

岡山の地のものだけを使った鮨。「週3日しか営業しない鮨店。岡山までわざわざ行かないと食べられないけどその価値はあります」

 

マルゴット エ バッチャーレ 加山 賢太氏

「彼は、『かんだ』と『カンテサンス』という和洋の名店で修行した逸材。トリュフにばかりフォーカスされがちなんですが、料理そのものが素晴らしいのでそれを知ってもらいたいです」

 

よろにく 桑原Vanne秀幸氏

「いわずと知れた日本トップクラスの焼肉・肉割烹。肉料理はこのイベントのコースには必須なんです」

 

元 Sola 吉武 広樹氏

開店からわずか1年あまりでフランスミシュランの1つ星を獲得。JAL国際線ファースト・ビジネスクラスの料理も担当。「パリの店をクローズし、いよいよ福岡に店を出すんです。絶妙なタイミングでの参加です」

 

été 庄司 夏子氏

「1日1組のみの完全プライベートレストラン。そしていまや幻と言えるほど手に入らない彼女のデザートを楽しめる、またとない機会です」

 

ドリンクディレクター:TIRPSE 大橋 ナオタカ氏

「僕が日本で絶大な信頼を置いているソムリエの一人。ワインはもちろん、日本酒を含むすべてのお酒、そしてお茶までの知識やセンスも素晴らしく、今回のペアリングは彼の真価を存分に知っていただける機会になると思います」

 

・日本酒:新政酒造 佐藤 祐輔氏

幅広い層に人気の日本酒業界を牽引する酒蔵。「日本酒とのペアリングを楽しんでもらうのも初回から続く趣向。今回は一番人気のこの蔵元を楽しんでいただきます」

・ハーブ:梶谷農園 梶谷 譲氏

「トップレストランがこぞって使う、日本を代表するのハーブ農園。ここのハーブは本当にすごいです。ちょっと驚きのハーブ。コースにもふんだんに取り入れる予定です」

 

◆DREAM DUSK vol.3
4月14日(土)ディナー  130席
4月15日(日)ランチ 150席、ディナー 130席
ディナー 35,000円(税・サービス料別、ドリンクペアリング込み)、ランチ10,000円(税・サービス料別、ドリンク別)

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