教えてくれる人

大木淳夫

「東京最高のレストラン」編集長 
1965年東京生まれ。ぴあ株式会社入社後、日本初のプロによる唯一の実名評価本「東京最高のレストラン」編集長を2001年の創刊より務めている。その他の編集作品に「キャリア不要の時代 僕が飲食店で成功を続ける理由」(堀江貴文)、「新時代の江戸前鮨がわかる本」(早川光)、「にっぽん氷の図鑑」(原田泉)、「東京とんかつ会議」(山本益博、マッキー牧元、河田剛)、「一食入魂」(小山薫堂)、「いまどき真っ当な料理店」(田中康夫)など。 
好きなジャンルは寿司とフレンチ。現在は、食べログ「グルメ著名人」としても活動中。2018年1月に発足した「日本ガストロノミー協会」理事も務める。最新刊「東京最高のレストラン2023」。

話題の虎ノ門ヒルズ ステーションタワー「T-MARKET」のおすすめ店

10月最大の話題は、なんといっても6日開業の虎ノ門ヒルズ ステーションタワーでしょう。多くの人気店が集結していますが、まだ全てのレストランがオープンしたわけではありません。今後、11月24日、2024年1月16日と3回に分けて順次開業の予定です。

最も身近に利用できるのは、虎ノ門ヒルズ駅改札からすぐの地下2階、T-MARKETです。現在14店舗がオープンしていて、各店の席以外にも140席のパブリックテーブルが用意されています。こちらに座るとさまざまな店のメニューをモバイルオーダーできる仕組みで、客側としてはうれしいですが、お店は自店の客+最大140人を相手にしなくてはならないから大変です。そんなわけで実力があるレストランが集いました。

グルメ界の風雲児が手がけるビストロ

ちぇぷ
「アタ・カーブドッチ」   出典:ちぇぷさん

まずおすすめはビストロ「アタ・カーブドッチ」。グルメ界の風雲児・掛川哲司オーナーシェフのお店です。カーブドッチは新潟にある有名なワイナリーで、シェフのお母様と弟さんを中心に素晴らしいワインを造っています。

「アタ・カーブドッチ」 写真:大木淳夫

その、なかなか手に入らないワインと共に「アタ」の名物であるマグロのうなじや、オマール海老のマカロニグラタンなどを楽しめるのですからたまりません。山椒が香る、ふわふわの煮穴子とスクランブルエッグもおいしかった。

電気窯で焼きあげるオリジナルピザ

「CRAZY PIZZA TORANOMON」ピザコーンとシラスのハーフ&ハーフ 写真:大木淳夫

そして「CRAZY PIZZA TORANOMON」。「東京最高のレストラン2023」で注目店として紹介した神楽坂「CRAZY PIZZA at SQUARE」の姉妹店です。神楽坂同様、電気窯で焼きあげるオリジナルの全粒粉生地のピザは、具だくさんだけど軽く、いくらでも食べてしまいます。こちらでは、焼きを神楽坂より強くして満腹感を高めているとのことで、名物の「ピザコーン」と気になった「シラス」をハーフ&ハーフにして堪能しました。ピザ生地に煮込み料理をバーッとかけた「ぶっかけピザ」も、ぜひ食べていただきたい逸品です。

馬喰横山の大人気ベーカリー

くちる
「BEAVER BREAD BROTHERS」   出典:くちるさん

さらに馬喰横山の大人気ベーカリーも「BEAVER BREAD BROTHERS」として登場。溢れんばかりの魅惑的な総菜パン、菓子パンは見るだけで幸せな気持ちに。本店同様、昼は早くも行列となっています。カウンター越しに職人さんたちのパンづくりを眺めることもでき、イートインスペースも。11月末からは夜のバーがオープン予定とのことで、こちらも楽しみですね。

T-MARKETでは今後、各店の名物料理で構成するディナーシェアコース料理も限定でスタート。虎ノ門横丁とはまた別の、新たなコミュニティスペースが生まれるでしょうか。ちなみに私が訪れたオープンから2週間後の金曜夜は、全体が熱気に包まれていました。

北海道の気鋭若手シェフと神保町の楽しみなビストロ

札幌の注目店シェフが東京へ

「amorphous」 写真:大木淳夫

オープンは8月15日だったもののなかなか予約が取れず、ようやくうかがえたのが赤坂「amorphous(アモルファス)」です。札幌「beija Flor(ベイジャフロール)」で大きな注目を浴びていた佐藤幸大シェフが、わずか9カ月で店を閉め東京へ。カウンターのみの独創的な料理で佐藤劇場を展開しています。

「amorphous」 写真:大木淳夫

目の前の調理を拝見していると、最初は何がどうなるんだろうと不安交じりで、え、それとそれを合わせるの? わ、そんなに盛り続けるの?と思うのですが、これが見事に着地。一品ごとに爆発するシェフの発想にどんどん引き込まれていきます。コースのみですが、内容はほぼ毎回変わるそうで「もっともっといろいろな料理を創りたいんです」と話すシェフのうれしそうな顔が、これからのさらなる進化にも期待を抱かせてくれました。

タパスメニューも豊富なビストロ

「BISTRO ELUSIVE」北寄貝の炙り キャロットムース スパイスのジュ 写真:大木淳夫

10月10日には、神保町に「BISTRO ELUSIVE(ビストロ イルシーブ)」がオープンしました。カウンター6席、テーブル4席のビストロで、オーナーシェフは元「アロッサ 銀座」の岡野孝明さん。同じグループ出身の気の利くソムリエとのふたり体制です。オープン翌日にうかがった時点では前菜7種、メイン6種、グラスワイン3種というメニューでしたが、どれも高レベル。「北寄貝の炙り キャロットムース スパイスのジュ」はモロヘイヤソースの辛みをアクセントに、食感も素晴らしく夢中になる一皿でした。前菜はひとりならハーフにしてくれるなど、対応も柔軟です。15時から17時半までは魅力的なタパスメニューとともに軽く一杯も。いいお店になりそうです。