〈これが推し麺!〉

ラーメン、そば、うどん、焼きそば、パスタ、ビーフン、冷麺など、日本人は麺類が大好き! そんな麺類の中から、食通が「これぞ!」というお気に入りの“推し麺”をご紹介。そのこだわりの材料や作り方、深い味わいの秘密に迫る。

今回訪れたのは、連載「今週のカレーとスパイス」でおなじみ、カレー偏愛家のカレーおじさん\(^o^)/がおすすめする「大地のうどん 東京馬場店」だ。「食べログ うどん TOKYO 百名店」にも選ばれたことがある、人気博多うどん店が作り出すカレーうどんをご紹介する。

教えてくれる人

カレーおじさん\(^o^)/

2006年から毎日カレーを食べ続けているカレーアディクト。世界各地約7,000店舗でさまざまなカレーを食べ歩く。年間平均カレー食数は1,000以上、生涯通算カレー食数は優に20,000を超える。フジテレビ系「スパイストラベラー」、TBS「マツコの知らない世界」などメディア出演の他、小学館「Oggi」などでカレー記事を連載。レトルトカレーの監修も手掛けるなど、さまざまな形でカレー情報を発信している。

打ちたて、ゆでたての熟成うどんが自慢の「大地のうどん」

高田馬場駅から早稲田通りを下落合方面へ歩いて7分ほどの路地裏にある「大地のうどん 東京馬場店」

2005年8月、福岡市西区上山門で創業し、現在は福岡を中心に8店舗を展開する「大地のうどん」。「大地のうどん 博多駅ちかてん」で約10年うどん作りを学んだ阿部修さんが、総大将に交渉して県外出店を果たしたのが2016年オープンの「大地のうどん 東京馬場店」だ。

店主の阿部修さん

「豊前裏打会」(北九州市のうどん店「津田屋官兵衛」の店主を中心とした、麺グループ)に加盟する「大地のうどん」は、打ちたて・ゆでたて・揚げたての3つの信条を持つ。注文を受けてから製麺し、麺をゆで、天ぷら類を揚げる。

麺の材料は、全国各地の小麦を日々オリジナルで配合しているという「大地のうどん」全店共通の小麦と、塩、水のみ。うどんダネは、約30℃の熟成庫や冷蔵庫、常温など温度帯を使い分け、適宜こねなおすなど状態を見ながら、約72時間かけて熟成させていくのが特徴だ。東京出店当初は福岡とは異なる水質に悩まされたという阿部さんだったが、気温や湿度に応じて水の温度を変えて使うなど工夫することで完成度を高めた。

製麺する際にはワキシーコーンスターチを打ち粉として使用

製麺する際も、細かな心配りがある。加水率50%と水分含有量が高いうどんダネのため、麺の切りおきができないということもあり、注文を受けてから製麺を行う。また、熟成の度合いによって適切な太さに製麺していくため、日々麺の太さも微妙に異なるのだ。

ゆで加減は毎回手で触って確認するのが「大地のうどん」流。麺のゆで時間も季節によって異なるというが、大体1人前200gを約6分半熱湯でゆでている。麺はゆで上がったらざるにあげ、しっかりと水で打ち粉のぬめりを落として完成だ。

 

カレーおじさん\(^o^)/

うどんの食感が他にないもので驚きます。福岡に本店を持つお店なので福岡うどんらしくやわらかいのですが、ただやわらかいだけではなくもちもち感がとてつもなくて癖になります。

ベースとなるうどんだしは、羅臼昆布、カツオ節、サバ節、イワシ節を使い毎朝炊いている

直径20cm以上の特大ごぼう天がのった名物「ごぼう天うどん」

「ごぼちゃんうどん」680円

名物の「ごぼう天うどん」(東京馬場店では最近「ごぼちゃんうどん」に改名)では、麺のゆであがり時間に合わせて直径20cm以上の特大ごぼう天を揚げていく。

福岡の業者から仕入れるごぼうを斜めに薄くスライスし、そのスライスしたごぼうに天かすが出づらい「大地のうどん」特製の天ぷら粉をつけ、15〜20枚を重なるように組み合わせながら170〜180℃の油で約3分かけて揚げる。

箸上げすると透き通って見える独特の麺は、熟成の証だ。福岡うどんというとやわ麺のイメージがあるが「大地のうどん」の麺は吸い付くような質感でだしがよく染み込んでいて、やわらかいもののモチモチと適度にコシがあり、トゥルッとした心地よい喉越しが楽しめる。揚げたてのごぼう天もサクサクと香ばしく、サツマイモのような甘さだ。天ぷらをだしに浸して食べ、そのだしに揚げ油が染み出し、そのだしを麺が吸ってさらにおいしくなっていく。

食べるほどにうまみが広がる。トッピングで満足度倍増「カレーうどん」

「カレーうどん」810円
 

カレーおじさん\(^o^)/

カレーうどんに肉トッピングがおすすめです。カレーうどんだけではなく、肉も是非一緒に加えてください。最初に行った時から僕はこればかり食べています。食べれば食べるほどおいしさがより深く理解できるようになり、何度食べても飽きないので定期的に通っています。

トッピングの「肉」230円

カレーうどん用のルーは鍋に水と昆布、スライスした玉ねぎを入れてだしをとったら昆布を取り除き「大地のうどん」オリジナルのカレー粉を入れて作り上げる。ゆでたてのうどんをどんぶりに盛ったら、肉うどんにも使われている牛肉をひとかけ、そして季節によって変わる野菜の天ぷらをのせ、カレールーを回しかけ、最後に温泉卵と小口切りしたネギをトッピングしたら完成だ。取材時のカレーうどんには、カボチャ、ナス、ニンジン、エノキの揚げたて天ぷらが入っていた。

 

カレーおじさん\(^o^)/

カレーのみならず揚げたての天ぷらや温玉もたっぷりと入っており、食べ応えも十分ですが、そこにやはり肉を! 福岡らしくごぼう天トッピングもおすすめです。円形に揚げられたごぼうは見た目にも楽しく、量もあってお腹いっぱいになるのでたくさん食べたい日にはこれを付けます。

カレーおじさん\(^o^)/の場合は、さらに肉とごぼう天をトッピングする。やわらかくするためごぼうや玉ねぎと一緒に醤油、酒、みりん、砂糖で煮込んだ牛肉は、すき焼きのような甘塩っぱい味わいで食欲をそそる。

カレールーは玉ねぎ由来のナチュラルなとろみがあり、麺によく絡む。オリジナルのカレー粉を使ったルーは、親しみやすい味わいながらも味わい続ける中で複雑さも感じられる。サクサク食感でホクホクとしたうまみのごぼう天に、牛肉、野菜の天ぷら、それらのうまみがカレールーにも溶け出していき、食べ進めるごとにうまさが増していく。

日々の気温や湿度に気を配りながら72時間かけてうどんダネを作り上げるなど、たゆまぬ努力の上に成り立つ熟成うどん。シンプルにおだしとごぼう天でいただくのもいいが、オリジナルのカレーと共にいただくことで、より「大地のうどん」の味わい深さを感じられるはずだ。

※価格はすべて税込

撮影:佐藤潮

文:中森りほ、食べログマガジン編集部